結成16年以上の漫才師たちによる新たなお笑い賞レース『THE SECOND~漫才トーナメント~』。5月に放送される「グランプリファイナル」出場に向けて、人気芸人たちが激しいバトルを繰り広げ、お笑いファンを中心に盛り上がりを見せている。
「実は、わたくし、先月の給料がついに家賃を下回りました」
こう語ったのは、お笑いトリオ・四千頭身の後藤拓実(26)。これは3月21日に放送された昼の情報バラエティ番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)内での「芸能人 春のご報告記者会見」というカミングアウト企画で打ち明けたもの。
後藤は続けて「お仕事がなくなってしまいました」とし、理由について問われると「そうですね、なんでしょう。需要がなくなったんじゃないですかね」と説明。さらに、家賃31万円のマンションでの恋人との同棲を解消し、実家に戻ったことも告白していた。
2018年の『M-1グランプリ』で、霜降り明星が歴代最年少での優勝を果たして以降、お笑い界に巻き起こった「第七世代」ブーム。メディアには毎日のように、霜降り明星をはじめEXIT、宮下草薙といった若手芸人たちが登場し、テレビでも「第七世代」を売りにする企画が連発された。
しかし、それから数年経ち「第7世代」という言葉を見かける機会が減り、昨年3月には『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「第七世代、その後…」という企画も放送された。そして、苦境に立たされているのは後藤だけではなかった。
2019年の『M-1』で、ボケを全肯定するというこれまでにないノリツッコミで決勝初進出ながら3位に入ったぺこぱ。“人を傷つけない笑い”の旗手として、引っ張りだことなった彼らだが、3月に『ぺこぱボジティブNEWS』(テレビ朝日系)と『ぺこぱのオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)という2つのレギュラー番組が立て続けに終了する。
果たして、「第七世代」芸人はこれから淘汰されてしまうのか? そこで、お笑い評論家のラリー遠田氏に話を聞いた。
まず、ラリー氏は「第七世代」ブームについて「2~3年前に終わっている」とした上で、四千頭身についてこう分析する。(以下、カッコ内はラリー氏の発言)
「四千頭身は第七世代の中でも、一番年下くらいで、とにかく若い。ブレイクした時は本当に二十歳ちょっと過ぎだったので、第七世代の新しい若手が出てきたというフレッシュなイメージを一手に背負っていて、勢いも凄かったと思います。センターの後藤さんがボソボソと呟くといった芸人なのに声を張らないといったキャラが若者っぽく、“今までの世代とは違うぞ”という形で目立っていました。なので、その反動が今になってきてるところが大きいのではないでしょうか」
ぺこぱについては、“人を傷つけない笑い”の代表格といったイメージの功罪があるようだ。
「ぺこぱは早い段階から『優しいお笑いをやってるつもりはないんです』といったことはずっと最初から言っていました。なので全然狙ったわけじゃなく、たまたま世の中にそう思われてしまったところがあり、その良い面も悪い面もあると思います」
宮下草薙のボケ担当で“超ネガティブキャラ”の草薙航基(31)も露出減を指摘されており、後藤、ぺこぱといったキャラをアピールポイントにする芸人たちが苦戦するなか、“じゃない方芸人”たちは安定しているという。
「ブームが終わると、表面的なキャラではなくコンビそのものや個々人にスポットが当たり、そこから別の面が注目される場合もあります。たとえば、宮下草薙の宮下さんは、最近ではおもちゃ・ゲームマニアの部分をフィーチャーされたりしていますよね。四千等身の石橋さんもサッカー、料理、筋トレなどの趣味を生かした仕事をしていたります」
そして、誰もが認める“実績”も明暗をわける要素になっているようだ。
「第七世代と一口に言っても、実力や実績は芸人ごとに差があります。
ブームが去ったことで世代括りでのメディア露出が激減し、岐路に立たされる第七世代の芸人たち。ラリー氏は「第七世代」をこう総括する。
「野球の“松坂世代”、将棋の“羽生世代”も同じなんですが、世代というものが注目される理由は、たまたま同じ世代にすごい人が何人かいたからなんです。第七世代も初めから世代として注目されていたわけではなく、霜降り明星やハナコといったスターが何組か同時に出てきたからこそ、世代そのものが脚光を浴びるようになったのです」
栄枯盛衰の激しい芸能界。「第七世代」の次は「第八世代」と思う人も多いかもしれないが、今後は世代よりも“属性”に注目が集まるラリー氏は見る。
「たとえば、最近ではラランドや真空ジェシカといった大学のお笑いサークル出身の芸人が増えていますし、地下のライブに出ている“地下芸人”も注目されたりしていますよね。そうした個々人の属性で括られることはこれからもあると思います。今年の『R-1』でもこたけ正義感という現役弁護士の芸人が出ていましたし、そういう人はいつの時代にも注目されやすいのではないでしょうか」
最後に今後のお笑い界のトレンドについて、ラリー氏は“優しさ”をあげる。
「ダウンタウンの浜田さんは、今も“暴君キャラ”なところはありますが、いつも笑っているし、裏では優しいんだろうな、というイメージがあるからこそ、それが成立しているわけです。そういう下地がない人がいきなり横暴に振る舞っても、嫌われてしまうだけでしょう。WBC・侍ジャパンの栗山監督、サッカー日本代表の森保監督のように、選手の個性を生かしてニコニコ笑って見守っているようなリーダー像が、今の時代には合っているのだと思います。
それはお笑いでも一緒です。有吉さんが『有吉の壁』(日本テレビ系)などでいろんな芸人のネタを見て、マルやバツを出していくわけですが、あれも冷たいようで優しいんですよね。どんなにくだらないネタに対しても全力で乗っかってイジっていきますし。お笑い界でMCとしてこれから出てくるのも、そういう“優しいリーダータイプ”の人だと思います」