お笑いありミュージカルあり下ネタありといった、あらゆるエンターテインメントを詰め込んだ劇団「WAHAHA本舗」が今年40周年を迎える。

同劇団は40周年を記念して「WAHAHA本舗40歳記念全体公演『シン・シンワハハ 40』」を開催。

9月28日から10月6日まで東京「シアターサンモール」で公演を行ったあと、宮城、青森、兵庫、岡山、広島、高知、愛媛、熊本、福岡、長野、愛知、群馬、富山、新潟、大阪を駆け巡る。

今回は久本雅美さん、梅垣義明さん、WAHAHA本舗の座長であるポカスカジャン・大久保ノブオさん、同劇団の主宰・演出家の喰始さんに記念公演の意気込みや劇団設立当初のお話をインタビューマン山下が聞きました。

■当初、マチャミは美少女役だった!

――1984年に開催された第1回公演はどんな内容でしたか?

久本:当時は今と違ってストーリー性があったんですよ。

喰:超能力者がいっぱいいる農村が舞台で、久本はその村の美少女の役。

――美少女?ではちゃんとしたお芝居で下ネタとかは当時はなかったということですか?

久本:下ネタはある。

――あるんですね(笑)。スタート時から……。

喰:あるんだけど周りがやってて久本にはやらせなかったの。僕は久本をワハハの原田知世だと思ってたから。

――ちょっと待ってください!(笑)

大久保:そこ食いつく!(笑)

梅垣:止めたい気持ちになるね。

久本:最初の頃はかわいい役が多かったのよ。

喰:でも5か6回目のときにストーリーは無しで忘年会的なバラエティショーをやりたいとなって。

それでやったら当たって、そっから先はそっちに変わっちゃたの。

――具体的にはどんなショーをやってたんですか?

梅垣:久本と柴田(理恵)の着ぐるみの衣装のデザインが女性器だったネタがありましたね(笑)。

――女性器を擬人化したネタということですか。

久本:そうそう。だから好き嫌いが激しい劇団だったのよ(笑)。でもね、みんなワハハは下ネタばっかりやっている集団だと思っているけど、そうじゃない。

例えば裸スーツ(裸に見える全身タイツ)の衣装はどっから見ても裸に見えるんだけども、その裸スーツを着てル・バルのかっこいい音楽で男女が踊るとか、ちゃんとアイデアがあるんです。ただ単に下品な言葉を〇〇!って叫んでるわけじゃないんですよ。ここが大事なの。

――かっこいい曲を流してギャップの笑いを生み出しているんですね。

久本:他にも真っ裸で殺陣をやっていく『裸侍』。裸だけどどんな立ち回りをしても局部は絶対に見せないというところでみんなが大笑いする訳ですよ。

■「股間を向けた相手がおじだった」

――緊張と緩和が笑いを生むんですね。ワハハは変った公演もやってましたよね。

久本:「浅草花やしき」を貸し切った公演をやりました。

喰:綱渡りをやるときバランスをとるために長い棒を持ってるじゃないですか。それを梅垣がジェットコースターのレールの上をバランスの悪い棒を持たされて歩くというのをやったりしました(笑)。

――今だったらできないかもしれませんね(笑)。

喰:後は「SMお神輿」というのをやりました。男性陣が「ワッショイ、ワッショイ」って神輿を担いで、その上にSM嬢の衣装を着た久本と柴田が乗って「お前ら!」ってムチでバシバシやって園内を練り歩くというのとか。

――ディズニーランドでいうエレクトリカルパレードみたいなことですね(笑)。若手時代に失敗した経験はありましたか?

久本:「スーパーカスガール」というキャラですね。ババシャツとステテコの上に両方の胸におちょこ、股間にはひょっとこのお面を付けて客席に降りて行って『ひょっとこ取って!』って言って。お客さんがお面を取ったら股間に風車が付いてるの。

それをお客さんにフー!って吹かせるんです。

それを大阪公演の時に「ひょっとこ取って!」ってお客さんに言ったら、それが久本家の長男のおっちゃんやったんですよ。ヤバ――!と思って、急遽向きを変えて違う人にやりました(笑)。

――下ネタを身内に見られるのは恥ずかしいですよね。

久本:公演が終わった後にウチの母が「せっかくおっちゃんが見に来てくれたんやから、電話してお礼を言いなさいよ」って。

それで電話して「おっちゃん今日はありがとうな。どうやった?」「よう女であんだけ頑張ってたな」「ありがとう。おっちゃんまた見に来てな」「いや、もう二度と行かん」って(笑)。

――おじさんも恥ずかしかったみたいですね(笑)。

久本:後は女囚漫才というネタがあって。そのネタは笑いを取ったら刑が軽くなるという設定で女囚の私たちは看守に向かって毎日ネタをやらないといけないの。

私もいろんなことを考えてたんやけどネタに詰まってて。

それで思い切って服を脱いで乳首を両手でつまんで「コーヒー豆!」ってやったんですよ。そしたらお客さんがシーーン!ってなって。しかもその客席にウチの母親と弟の嫁が見に来てたんですよ(笑)」

――うわー!最悪ですね。

久本:公演後に母親と弟の嫁が楽屋挨拶に来て私が「ありがとうね」って言ってる時に喰さんが来たんですよ。それで私は普段はこんな下ネタをやってないことにしたくて「こんなんやったの初めてですよね?」って言ったら喰さんが「こんなん毎日やってますよ」って。そしたら弟の嫁が涙目になって「お姉さん、女を捨ててよう頑張ってはる」って(笑)。

■「今もネタを考え続けている」

――そういった恥ずかしさは吹っ切れて行くもんなんですか?

久本:吹っ切れましたよ。それはしゃあない。

喰:その時代はね。女性が笑いを取るのに照れたり女を出したらダメだったんですよ。男はその時代からすでに笑いのためにケツ出したりしてましたが女性ではいなかったんです。その先陣を切ったのが久本。

――そういった久本さんの下ネタを周りの男性劇団員はどう見てたんですか?

梅垣:ひょっとこやコーヒー豆のネタを話で聞くと下品に聞こえるかもしれないけど、やっぱり演じ切ってるというのがあるから下品に思わないんですよね。

久本雅美という女性がやっているわけではなくて舞台に上がるとまた違うキャラクターに見えるから面白いですよ。

――最後に「シン・シンワハハ 40」の見どころを教えてください。

喰:全部新作です。今回は久本の七変化じゃないけど短いキャラクターネタをかなり多くちりばめたいなと。

――それは久本さんが新ネタを考えないといけないということですよね

久本:はい。毎回ですよ。

――大御所になった今でもネタを考えているんですね。

久本:今だに考えてるよ。でもね、それが自分の宝になるんです。トークネタだったらバラエティ番組でも生かせるし、でも下ネタのときはいっさい生かせられないんですけどね(笑)。

(取材・文:インタビューマン山下)

編集部おすすめ