小池百合子都知事(72)が6日のプロ野球・ヤクルト×阪神戦の始球式で左膝を負傷した。

「マウンドで投球した際、踏み出した左足が滑り、左膝が内側に曲がってしまったようです。

都は翌日、都知事が膝関節剥離骨折で全治2カ月と公表、都知事はリモート勤務中心の公務となりそうです」(全国紙記者)

小池都知事を襲った「膝関節剥離骨折」とはどんなケガなのか。

東京・お茶の水セルクリニック院長で整形外科医の寺尾友宏先生に聞いた。

「都の発表ではどこの靱帯の負傷かわかりませんが、映像から判断すると左膝内側側副靱帯ではないかと思います。膝関節のケガは大腿骨と脛骨をつなぐ靱帯が伸びたり、断裂してしまう場合と、靱帯の付着部の骨がはがれてしまう場合とがありますが、都知事は剥離骨折ですので、骨がはがれた状態と思われます」

骨が“はがれる”とは、なんとも痛そうだが……。

「膝の靱帯が付いている骨の部分が、骨ごとはがれた状態ですので、都知事は相当痛かったろうと想像します。しかしご自身で最後まで、頑張って歩かれていましたね」(寺尾先生、以下同)

ところが膝の剥離骨折や靱帯のケガが「寝たきりリスクにつながる」というから人ごとではない。

「膝の関節の故障が原因で膝関節が変形するケースは多々あります。ケガをきっかけに関節部分が変形し、どんどん進んでいけば、変形性膝関節症になりやすいんです」

変形性膝関節症とは、膝の軟骨がすり減って関節の働きが低下し、炎症や痛みが出ている状態のこと。

2005年の東大医学部研究グループが行った50歳以上対象の疫学調査では、日本の変形性膝関節症の推定患者数は約2400万人で、男性約840万人に対して女性は約1560万人と報告されている(文響社『ひざ痛 変形性膝関節症』2020年より)

「関節は自己修復しにくいという特徴があります。関節が痛くなれば外に出なくなる、すると筋力が低下し、活動レベルが下がり、糖尿病などの内科疾患につながる。

つまり膝の骨折や靱帯損傷が、変形性膝関節症に発展、寝たきりへの第一歩になってしまいます。要介護の入口は関節疾患だともいえるんです」

■骨粗しょう症患者は60代女性の5人に1人

さらに女性は加齢とともに骨密度が下がっていく……。

「女性はホルモンバランスの関係で、特に閉経後は骨密度が下がっていきます。骨密度が下がると、それ自体で痛いので、活動レベルも下がってしまいます」

骨密度が減ることで骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気が骨粗しょう症だ。

骨粗鬆症財団のデータによると、骨粗しょう症患者数は推計1280万人、うち女性は980万人。60代女性の5人に1人が患っているとされる。人口推計によると2023年の60代女性の人口が約750万人なので、約150万人が該当することになる。

「骨密度が低下することで、転倒によって骨折しやすい箇所は、膝、足首、股関節、背骨、肩、手首などと広範囲。日常生活の中での転倒には、特に気を付けるべきです」

寺尾先生は、私たちの身の回りで、転んだりしやすい危険箇所を挙げて解説してくれた。

「まず、滑りやすい浴室での転倒は多いです。あと階段での転倒。

年を取ってくると、ふつうに歩いているつもりでも、足が上がっていない場合が多く、『大丈夫』と思っているところでもつまずきます」

部屋の中でも、新聞紙や座布団、布団などが床や畳の上に置かれていれば、それにつまずいたり、足を滑らせることもある。

「玄関で上がるときも、急いで足を上げて爪先がぶつかってケガをするケースがあります」

一歩外に出れば、危険は増すばかりだ。

「マンホールの金属の蓋は、濡れていると滑ります。

横断歩道の白い部分も滑ります。とくに雨上がりなど、濡れているときですね。

また、レンガ敷きの歩道なども危ない。歩くときは実際、足は1~2cm程度しか上がっていませんので、段差が1cm程度でも引っかかって転倒する場合があります」

では骨折、骨粗しょう症の予防法は?

「まず、日ごろから少しでも動くことです。大型スーパーなどは冷房が効いていて涼しく、買い物しているうちに歩けますし、バリアフリーの空間が多いというメリットもあります」

■少しでも歩く習慣を! 「その場足踏み」も効果大

年齢が上がるほど体のバランス力をキープすることが大事だそう。

「バランスを崩しやすい人は、足を擦って歩くようになっています。すると当然、何かにつまずいたり、転びやすくなる。

バランス力のアップには、家の中で『その場足踏み』が効果的です。どこかにつかまりながら、その場で足踏みをする。負荷が上がることで筋力も骨も強くなります」

骨に刺激を与えるという意味では「10回だけでも効果がある」と寺尾先生。

「1分間できれば、心肺機能もそれだけ高まります。大事なのは、続けることですので、毎日でも続けられる時間や回数でやりましょう」

食事の面では、カルシウム、ビタミンDを取ること。

サプリメントでもいいという。

いま膝に不安がある人は、最寄りの整形外科などをたずね「かかりつけ医」を持つことも、心身の安心につながる。

思わぬケガから寝たきりにならないために、日ごろから運動と食事には気をつけよう。

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