「何もかも高すぎる……」

4月は物価高騰を嘆く声が噴出した。特に食品は4,225品目が平均16%の値上げを実施。

4,000品目を超えるのは実に1年半ぶりだという(帝国データバンク)。

そんななかイオンは4月9日、自社のプライベートブランド(PB)である「トップバリュ」75品目の値下げに踏み切った。サラダ油やポークウインナー、冷凍から揚げといった身近な食品が中心だ。

「セブン-イレブンの低価格を追求するPB『セブン・ザ・プライス』にも3月31日、新商品が20品目追加されました。近年はPBに力を入れ、安さとおいしさに磨きをかける会社が増えています」

そう話すのはPBに詳しい家事アドバイザーでAll About節約ガイドの矢野きくのさん。

「節約のため普段使いのものは迷わずPBから選ぶ」と言う。

国内外のスーパーを3万店以上巡ったスーパー専門家のスギアカツキさんも熱くPBを語る。

「PBといえば“安かろう、まずかろう”は昔の話です。安さはもちろん、おいしさや自社らしさを追求した付加価値の高いPBが増えています」(スギアカツキさん)

だが、原料も燃料も人件費も高騰するなか、PBはどうして低価格を維持し、そのうえ値下げまでできるのだろう。

「理由は大きく3つあります。まず1つは、流通費のカットです」(矢野さん)

PBは販売会社が直接、製造会社に発注するため、卸業者や仲介業者などを通さない。その分の流通コストが不要になるのだ。

「宣伝広告にお金をかけないことも要因です」(スギアカツキさん)

PBのロゴが目立つようにパッケージデザインはシンプルに定番化し、CMなども少ないという。

「PBは販売会社が発注した数量をすべて買い取るのが基本です。製造会社としては、作ったのに売れない“売れ残り”を心配しなくてよいため、安心して低価格を設定できるのです」(矢野さん)

■各販売会社の特徴を知り安いだけじゃないPBを

確かに低価格がウリのPBだが、いまや安さだけでは他社と勝負できないそうだ。

「これまでPBといえば安い定番品が中心でしたが、最近はトレンド感のあるもの、新しい流行を生み出そうと冒険的なものなども増えてきました。

販売会社ごとの特徴を知って、安いだけじゃないおいしいPBを生活に取り入れてほしいです」(スギアカツキさん)

そこで、矢野さんとスギアカツキさんに、コスパや味を厳選したおすすめPBを教えてもらった。

「PBといえばまずはイオンでしょう。なかでもレトルトの『タスマニアビーフカレー』はイチオシです。ゴロゴロの肉感をぜひ味わってほしいです」(矢野さん)

「イオンのギリシャヨーグルトは、大手メーカーのナショナルブランド(NB)商品と比べても、味にまったくそん色なく、そして安い。SNSでも話題でした」(スギアカツキさん)

また、イオンは食物アレルギーを起こす可能性の高い卵や乳などの特定原材料を含まない「おこめでつくったスパゲッティ風」などを販売している。

「アレルギー対応食のPBがあるのはイオンだけ。PBだからこその低価格もありがたいところです」(スギアカツキさん)

安心感のある商品の多いイオンと比べて「個性的なPB商品が多いのは西友」(スギアカツキさん)。

PB「みなさまのお墨付き」は消費者の支持率80%以上のものだけを商品化しているそう。

ハズレがなさそうだが……。

「特にエスニック系のレトルト食品がおいしいです。『マッサマンカレー』やご飯にかける『ガパオ』がおすすめ」(スギアカツキさん)

そして、PBといえば忘れてはいけないのが業務スーパーだ。販売するのはオリジナル商品、PBがほとんどだ。

「冷凍野菜などは大容量が安いので大人気ですが、冷凍スイーツにも定評があります。

なかでも『ぷち大福』に果物を挟んだ簡単手作り『フルーツ大福』がSNSでバズっていました。

業務スーパーはマニアが多く、PBを使ったレシピなどを公開しています。『買ったはいいが、どう使えばいいかわからない』ときはネット検索するとヒントが見つかりますよ」(スギアカツキさん)

PBはスーパーの垣根を越え、コンビニでも勢力を伸ばしている。

「セブン-イレブンには、価格重視の『セブン・ザ・プライス』と、おいしさを追求した『セブンプレミアム』に注目してください。

特にセブンプレミアムは有名店とのコラボ商品が多く、『蒙古タンメン中本』のカップ麺はロングヒット商品です」(矢野さん)

イオンは「全責任をイオンが負う」として製造会社を伏せているが、ほかのPBは商品裏面に製造会社が記載されている。

蒙古タンメン中本のカップ麺は、カップヌードルなどでおなじみの日清食品が製造会社だ。裏面を見れば、安心できるだろう。

また、ローソンはこれまで20以上のPBが乱立していたが、3月27日に順次「3つ星ローソン」にPBを集約すると発表。ロゴをそろえ、わかりやすく手に取ってもらいたいのだろう。PBの重要度が上がっている証拠だ。

■地元スーパーにも独自の魅力的なPBがたくさん

「ユニークなPBが多いのはドン・キホーテです。

大容量のミックスナッツが以前から人気でしたが、いまでは紅生姜をはじめ、燻製、黒胡椒、ハーブソルト、和からし風などバリエーションが豊富。手に取りやすいお手ごろ価格が心憎いですね」(スギアカツキさん)

最近はドラッグストアにも食品のPBがある。

「『matsukiyo』のティーバッグのお茶シリーズをストックしています。個包装ではないのでゴミも少なく自宅使いにぴったり。

ウエルシアの『大きなから揚げ』もわが家の常備菜。食べ応えのある大きさとカリカリ食感にハマります」(矢野さん)

いっぽう、地方にある店舗数がやや少なめのスーパーも、全国展開の大手スーパーに追いつけ追い越せとPBの開発に余念がない。

「首都圏と関西圏に店舗を構えるライフは、『ビオラル』というPBで「有機下茹で野菜」を販売しています。

下ゆでされた大根やじゃがいもを買えば、あとは味付けだけ。

PBとしては比較的高めですが、有機野菜にこだわるなど品質重視で、時短がかなうと人気が出ています」(スギアカツキさん)

魅力たっぷりのPBがたくさんあるが、NBはどうだろう?

「NBは特別感が魅力です。

安さ重視ならPB、特別な日にはNBなど上手に使い分けるといいと思います」(矢野さん)

物価高騰はまだまだ続くだろう。PBをフル活用して、おいしい節約ライフを楽しもう。

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