最近「リースバック」をめぐるトラブルが増加しています。

リースバックとは、自宅を売却したうえで賃貸契約を結び同じ家に住み続けるというものです。

国民生活センターに寄せられたリースバックに関する相談は、2019年度の24件から2024年度には239件と、わずか5年で10倍に増加しています。しかも契約者の約7割は70代以上の高齢者といいます。

トラブルの多くは“押し買い”のように、営業員が来て自宅の買い取りを持ち掛けることから始まります。わが家にも時々「この家を〇千万円で買いたい人がいます」など高額買取をにおわせるチラシが入りますが、そうしたものがきっかけになる人もいるでしょう。

営業員は自宅の売却資金で老後が豊かになる、売却すれば固定資産税が不要、住宅ローンが残っていてもなくなり老後資金の不安が解消する、家賃を払えば住み慣れた家に住み続けられるなどとメリットを強調しますが、実は重大なデメリットが3つあります。

1つめは“買いたたき”です。国土交通省による実態調査でも、リースバックでの買取価格は「周辺物件の6?7割」とする業者が52%いました(2024年12月~2025年1月実施)。通常3千万円の物件が1千800万円で買われると、固定資産税や住宅ローンがなくなっても、損失のほうが大きいでしょう。

■「定期借家契約」を結ぶと契約期間が終われば退去に

2つめは賃貸契約です。利用者は「死ぬまで住み続けられる」と思う人が多いようですが、先の調査では「定期借家契約を結ぶ」業者が48%でした。定期借家契約は原則契約更新ができません。つまり、2~3年の契約期間が終わったら退去しなければなりません。

また、定期借家契約でなくても、更新のタイミングや途中で持ち主が変わるなどで家賃が上がることも。年金暮らしで家賃が上がると住み続けるのは難しいでしょう。こうした契約内容をよく理解せずに決断するケースも多いようです。

3つめは「クーリングオフ」です。クーリングオフとは、訪問販売や電話勧誘での契約では契約の日から8日以内なら無条件で契約を解除できる制度ですが、リースバックは対象外。いったん契約すると、解除するのは困難です。

若いころより判断能力が落ちた高齢者を急がせて、子どもらに相談する時間を与えず契約に追い込むケースも見受けられます。しかもクーリングオフができないことを「説明していない」業者が22%、「質問されたら説明する」業者が22%もいます。

現在リースバックを扱う業者は約10%とまだ少数ですが「今後扱いたい」業者が25%もいます。

リースバックはますます増えていくでしょう。“終活”の一環などと勧める業者もいるようですが、「自宅の売却益をしっかり受け取れて、良心的な家賃で自宅に住み続けられる」なんて“おいしい話”はありません。加えて、結論をせかす業者は、疑ってみるのが賢明です。

くれぐれもご用心を。

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