※この記事ではドラマ本編の内容に触れています。
“アンパンマン”を生み出したやなせたかしさん(享年94)と妻・暢さんをモデルに、激動の時代を生き抜いた夫婦の半生を描く連続テレビ小説『あんぱん』(NHK)。
放送開始から2カ月半が経ち、現在は中国福建省に上陸した主人公の幼なじみ・柳井嵩(北村匠海)の軍隊生活を中心に物語が進んでいる。
占領地の民心を懐柔する宣撫班勤務が命じられ、紙芝居を作成しては現地住民に読み聞かせを行う日々を過ごしていた嵩。しかし6月18日の放送回では、敵の攻撃によって駐屯地への補給路が断たれてしまい、ついに食糧が底をつくという展開に。嵩が所属する部隊の食事は朝晩2回となり、薄い粥からカンパンが4つに、そして2つへと減っていく。
そうしたなか、重点警備で行動をともにしていた兵隊・今野康太(櫻井健人)が民家に押し入り、住民から食糧を奪おうとする。その後も、仲間の兵隊・田川岩男(濱尾ノリタカ)が懐いていた中国人の少年から銃撃を受け……という怒涛の展開が描かれた。
いっぽう本放送回では、嵩の幼なじみでヒロイン・のぶ(今田美桜)も登場。軍のカンパンを作っていた「朝田パン」を営む実家では、材料がなくなり休業に。教師として働くのぶも、生徒たちと一緒に農家の手伝いに出ていたことが伝えられた。
6月11日の放送回を最後に、出演シーンが途絶えていたのぶ。そんなヒロインの久しぶりの登場に、Xでは《そういえば、のぶ、今日が、今週、初登場でしたかね?》《のぶ久しぶりーーーー!》と反響が続々。なかには、橋本環奈(26)がヒロインを演じた前作『おむすび』でも、ヒロイン不在の期間があったことを思い返す声もあった。
2作続けて“ヒロイン不在”が注目を集めることとなったが、背景にある“事情”が異なるという。
「『おむすび』は原作のないオリジナル作品で、橋本さんはNHKからのオファーによってヒロインに抜擢されました。ただ、超売れっ子だったことから、撮影スケジュールは橋本さんに合わせるように組まれたといいます。
昨年3月下旬のクランクイン後には舞台『千と千尋の神隠し』のロンドン公演、映画『キングダム』の撮影が入っていたため、トータルで約50日も朝ドラの撮影を不在にしていたそうです。代わりに仲里依紗さん(35)演じる姉役がクローズアップされるなど、スピンオフのような展開が描かれました。しかし視聴者の反応は芳しくなく、ストーリー展開や演出に批判の声が上がってしまいました」(芸能関係者)
しかし『あんぱん』での“ヒロイン不在”は、そうした演者側の都合ではないようだ。
「『あんぱん』ではモデルとなったやなせさんの実体験をもとに、ストーリーが進んでいます。戦中、戦後に空腹や深刻な食糧難を経験したやなせさんは、“飢えている人に食べ物を差し出すことは絶対的な正義”という考えを著書などでも説いていました。国や立場が異なっても、腹を空かせている人に食べ物を差し出せる人こそが“ヒーロー”であると。終生、その考えに変わりはありませんでした。
現在のドラマでは嵩の従軍シーンが中心となっていますが、のちに描かれる“アンパンマン”誕生には欠かせない重要な要素なのです。ヒロインの登場シーンが減ってしまうのは、物語の構成上やむを得ないのでしょう。
週を追うごとに注目度が高まっている『あんぱん』。嵩とのぶが再会する日まで、視聴者は手に汗を握ることになりそうだ。