「『キッズ・ウォー』の出演オファーをいただいたとき『まずは脚本を見せてください』とお願いしたんです。たしか桜の季節だったと思います。
こう振り返るのは、川野太郎さん(65)だ。プロデューサーからは、共演する子供たちは“最強の子役を選んだ”と聞かされていた。
「主人公・茜を演じたのは井上真央ちゃん。オーディションで『ざけんなよ!』と教壇を蹴散らす演技を求められたところ、いちばん迫力があって、一発で茜に決まったそうです。撮影に付きっきりだった真央ちゃんのお母さんが『台本はほとんど開かないで、スキャナーみたいに覚えてしまう』と話していたくらい、天才子役でした」
ほかの子供たちも“最強”だったという。
「何かといえば、茜にくってかかる里香(宮崎真汐)は、憎まれ役です。ドラマがヒットしてくると視聴者も茜の味方が多くなったので、思春期の里香にはさまざまな思いもあったはずですが、嫌な顔をせず、完璧に憎まれ役を演じきりました」
子供たちはほとんどNGも出さなかったという。
「本番ギリギリまでみんなでゲラゲラ笑っているのに、『はい、本番』という掛け声とともに、本当のきょうだいのように本気でケンカをするんです。見事な切り替えに、末恐ろしさを感じました(笑)」
“家族”の時間をすごすため、母親役の生稲晃子と相談し、子供たちを連れて、よく焼き肉店に連れて行ったという。
「生稲さんなどもみんな役名で呼びあって、本当の家族のような感覚に。作品もシリーズ5まで続いたので、久しぶりに会う新シリーズのスタート時なんか、子供たちが声変わりしたり、身長が伸びたりしていてね。
リアルな家族の様子が、ドラマの人気に火をつけたのだが、当時、まだ幼かった川野さんの子供は複雑な思いだったようだ。
「撮影が終わって東京の自宅で息子と一緒にオンエアを見ようとすると、自分のパパがよその子供のパパになっている姿は見たくないみたいで、嫌がりました。ちょっと寂しい思いをさせたのかもしれませんね」
『キッズ・ウォー』(CBC/TBS系、1999~2003年)
元ヤンキーでバツイチの春子(生稲晃子)と大介(川野太郎)が再婚。茜(井上真央)をはじめ5人の子供たちを中心に、世の不正や教育の問題を描く。13時30分から放送される昼ドラマとしては異例のヒットを記録し、主題歌を歌ったZONEも一躍人気者に。
【PROFILE】
かわの・たろう
1960年生まれ、山口県出身。1985年、NHK連続テレビ小説『澪つくし』でデビュー。ドラマ、映画に数多く出演するかたわら、料理番組や情報番組でも活躍する。