「この度は、私の発言により三田市ならびに三田市民の皆さま、関係者の皆さまに大変ご不快な思いをさせてしまったこと、また、多大なるご迷惑をおかけしてしまったことに心から深くお詫び申し上げます」
7月9日午後3時から行われた記者会見の冒頭で、こう謝罪したのは新潟県・上越市の中川幹太市長(50)。兵庫県・三田市の米を「まずい」と発言し、7日に三田市の田村克也市長(59)から「ふるさと三田を侮辱する倫理観に欠けるもの」などとして抗議状が送付されていた。
上越市役所の広報対話課によれば、中川市長が三田市の米を「まずい」と発言したのは1度ではなかったという。本誌は8日に、担当者より詳しいシチュエーションを聞いていた。
「まず7月1日に、地域活性化企業人制度で新たに着任したふるさと納税専門官への委嘱状の交付式が、市役所庁舎で行われました。委嘱状を交付した後の懇談会で、市長が上越市のふるさと納税の話に触れる場面がありました。上越市のお酒に関する話をするなかで、市長自身が若い頃に酒米・山田錦の産地である兵庫県・三田市に住んでいたことに触れ、山田錦で作られるお酒が『美味しい』ということを専門官に伝えた際に、『でも、米まずいんですけどね』と発言しました」(担当者)
次に同様の発言をしたのは、その2日後だったという。
「7月3日に、市内の専門学校の生徒を対象とした特別授業が公共施設で開かれ、専門学校から依頼を受けて市長が講話をする機会がありました。市長は冒頭で、上越市に住んでいる生徒たちに“地元にあるいいものに皆さんも目を向けてほしい”という趣旨の話をしたのですが、1日と同じように酒米・山田錦の産地である三田市に住んでいたことに言及しました。“三田市で作られる山田錦が灘や伏見で美味しいお酒になっている”と話した後に、続けて『(米は)あんまり美味しくない』と発言したということです」(同前)
なお、中川市長の発言の意図については、「現在の米のことではなく、30年以上前に自身が三田市に居住していた際に食べていた米の感想として発言してしまった」とのこと。
田村市長から送付された抗議状に対して、今後どのように対応するかについて尋ねると、中川市長のコメントとして次の回答が文書で寄せられた。
「一部報道があったお米に関する私の発言につきまして、三田市様並びに三田市民の皆様に多大なるご迷惑をおかけし、また、ご不快な思いを抱かせてしまったことにつきまして、心から深くお詫び申し上げます。三田市様からの『抗議状』に対しましては、誠意をもって対応してまいります」
また、同日には上越市役所のホームページに「市長の不適切発言に対するお詫び」と題して、田村市長に宛てた950文字近いボリュームの謝罪文も公表された。
冒頭の記者会見では、発言の経緯について本誌が同市広報対話課の担当者から聞いた内容と同じ説明をしていた中川市長。
なお、三田市の米の話を持ち出したのは、“上越市の米が美味しい”と伝えるためだったという。今後の対応については、「三田市産を含む兵庫県産米の評価の回復、三田市ならびに関係者の皆さまの信頼の回復に向け、誠心誠意尽くしてまいる所存であります」と表明していたが……。
中川市長は’21年11月に新市長として就任し、先月には任期満了に伴う上越市長選(10月19日告示・同月26日投開票)への立候補を表明したばかり。2期目を目指すなかでの不適切発言となったが、中川市長をめぐっては過去にもたびたび発言が批判を集めていた。
一例をあげると、’23年7月に行われた新潟経済同友会との懇談会で、私立高校2校の名前をあげて「県内では県立、公立よりもレベルが下にある」と発言。報道陣の取材でも発言の根拠について「偏差値が低い」と述べるなどし、謝罪に追い込まれることに。
さらに昨年6月にも、新潟県上越市議会での新工場誘致をめぐる答弁で「従業員の多くは工場勤務で高校卒業レベル」と発言。市議会で辞職勧告決議を受けるも、「子どもや若者らすべての市民がずっと住み続けたいと思う街をつくるために全身全霊を捧げる」と続投を表明していた。
それだけに、今回新たに問題視された不適切発言は、首長としての信頼に大きく影響を及ぼしそうだ。
上越市役所の広報対話課によれば、7月9日正午現在で市に寄せられた苦情は93件とのこと。その内容は「市長に対する批判」「市長発言により米の評価が貶められたとするお怒りの声」「三田市への謝罪、発言の訂正・撤回を求める声」だけでなく、「市長職を辞するべきとのご意見」もあったという。
記者会見では謝罪を優先させることから「先のことについて考えは至っていない」と語っていたが、どのように進退を決するだろうか。