5月の就任以来、農相として積極的にSNSで発信している小泉進次郎氏(44)だが、野党への“揶揄”が波紋を呼んでいる。
7月3日、小泉氏はXで、参院選公示日初日に各党党首が訴えた主張を報じたNHKの記事を引用し、立憲民主党・野田佳彦代表(68)の発言部分のスクリーンショットを添付した上で、こう綴った。
《農林水産予算を10倍???23兆円にするってことですよね…。やっぱり野党は無責任》
スクリーンショットに貼られた記事では、野田氏が宮崎県国富町で行った演説のなかで「物価高から、あなたを守り抜く。最も大きな要因となっているのはコメの値上がりだ。コメ離れも心配だが、作っている人たちが離農をするような状況になったら日本の食料安全保障を確保することはできない。もっと農業人口が増えるようにするための予算を10倍にしたい。食料品にかかる消費税は8%から0%にしようと思う。財源はしっかりと提示しており責任ある減税を果たしていきたい」と発言したことが要約として紹介されていた。
’25年度の農林水産関係予算は2兆2706億円、四捨五入すれば2.3兆円となり、単純に10倍すれば、確かに23兆円だがーー。
小泉氏がスクリーンショットで紹介した記事のなかで野田氏は「”もっと農業人口が増えるようにするために”予算を10倍にしたい」と発言しており、農林水産予算全体ではなく、就農対策のための予算としての発言であることがわかる。
同記事のなかで紹介されていた、演説の原文でも野田氏は「新規就農にもっと力を入れて、もっと農業人口が増えるように、われわれは予算を10倍にしたいと思っています」と発言しており、新規就農対策のための予算についてであり、農林水産予算全体について発言しているわけではないことがうかがえる。
23兆円といえば、’25年の一般会計の総額が約115兆円で、その5分の1程度に相当する。
小泉氏のXでの指摘だけを見れば、野田氏が農林水産予算を23兆円にすると訴えているように見えるが、実際の発言を見ればニュアンスが異なることは一目瞭然だ。
《23兆にするわけないじゃない、小泉さんそれわかってるでしょ? 大臣がこんな浅はかにミスリードを誘うなんて、それこそ有権者を馬鹿にしてる》
《完全な誤読です。大臣が無責任な行為をされては困ります。誹謗中傷なのできちんと野田代表に謝罪して下さいね》
《意図的な誤読なら邪悪(かつ例によって薄っぺらい)。意図的でないのなら大人なのに読解力なさすぎなので義務教育レベルの国語から学び直すべき》
そこで、小泉進次郎事務所に、問題の投稿について《訂正や削除の予定はあるか》と質問したところ、こう回答。
《野田佳彦代表は以下のように「10倍」と触れた後に、農林水産予算全体の話につなげています。予算については、少なすぎると自民党を批判していますが、本予算が近年で最低なのは野田佳彦首相による予算編成で2.1兆円がファクトです。
仮に、新規就農予算を10倍という意味だとしたら財源も示していないので実現可能性は不明です》
そして、参考として野田氏の発言をこう紹介。
《かつて農業者の戸別所得補償制度を、われわれが政権を預かっているときに実現をしたことがありました。これを評価する人はあちこちにいらっしゃいますね。もう1回復活してくれと。私どもは今回、それを単に復活するのではなくて、むしろバージョンアップして、食料確保と農地維持のための直接支払い制度を導入することを決断させていただきました。
例えば農地、田んぼの場合だったら10アールあたり2万3000円。畑だったら10アールあたり1万5000円、そしてさらには中山間地やあるいは多面的な機能を持っているようなところには加算をしていく。こうした、いわゆる略称で「食農支払制度」というものを導入しようと思っています。どんな状況でも農地が維持されて、そして農地が維持されることによって農業者も減らない。そこがまず農政改革の、抜本改革の基本じゃありませんか、皆さん。ぜひそれを作らせていただきたいと思うんです。》
しかし、自ら指摘した《23兆円にするってことですよね…》については特に言及することはなく、野田氏の首相時代の同予算が近年で最低だったと説明するにとどまった。
野田氏への指摘に対しての“説明責任”についてはどう考えているのだろうか――。