「昨年3月“医療過疎”などの背景から、がん検診受診率が10%以下の北海道岩内町において、5年以上肺がん検査を受けていない60歳以上の100人を対象に、がんリスクが判定できる検査キットを無料配布しました。

北海道大学などと協力し追跡査したころ、肺がんに関してハイリスク者が5人おり、追加検査を受けた3人のうち1人が『ステージ0』(がん細胞が粘膜内にとどまっていて、リンパ節に転移していない状態)の肺がんだと判明。

すでに手術を終え、今は元気に過ごされています」

7月6日に報じられた実証実験の結果を解説するのは、バイオAIベンチャー「クライフ」広報の松本尚樹さんだ。

この実験で使用された検査キットは、同社の「マイシグナル・スキャン」。尿を調べることでがんリスクを判定する。なぜ、検尿でがんを発見できるのだろうか。

「体内には、細胞が排出するマイクロRNAという物質が2千種類以上存在します。当検査キットは、がん細胞が活動することによって発生する特定のマイクロRNAを尿から検出・測定できるため、早期がんの発見に役立てることができます」(松本さん、以下同)

尿から早期がんを発見する検査キットはこれまでも存在していたが、部位までは特定できなかった。

「部位ごとにマイクロRNAの組み合わせに特徴があるので、当検査キットでは部位別のがんリスクが評価されるのです」

乳がん・大腸がん・胃がん・肺がん・膵臓がん・食道がん・卵巣がんの7種のがんを判定できていたが、7日にリリースされた新たなキットは、腎臓がん・前立腺がん・膀胱がんの3種を加えた男女計10種のがんを判定できるという。

「説明書どおりに尿を取り配送すると、約1カ月後に検査結果報告書が届きます」

リスクはマイクロRNAスコアと生活習慣等のスコアを総合評価し、がん種別に低・中・高に分類されて報告される。

「がんがある人に陽性と判定する感度、がんがない人に陰性と判定する特異度は90%前後。なかでも特定検診がなく、早期で見つけるのが困難といわれる膵臓がんの感度・特異度は92.9%です」

価格は1回6万9千300円(割引あり)と、安くはないが――。

「国立がん研究センターがん情報サービスによると、早期発見できた場合のがん全体の5年生存率は92・4%。さらに早期発見によって医療費や収入減を抑えられます。

発見可能な早期がんの期間は、半年?2年程度といわれているため、当キットの検査間隔は半年?1年を推奨しています。手軽で痛みを伴わない検査なので、少しでも早期発見に役立てればと思っております」

日本のがん検診受診率は平均4割。がん対策の一つの選択肢として、検討してみてはいかがだろう。

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