今まさに旬を迎えている夏野菜に異変が起きている。
トマトやなす、きゅうりなどを栽培している柴崎農園(群馬県高崎市)の小林郁子さんが語る。
■異常猛暑で野菜が溶けている! 8月価格倍増へ
「6月に入ってからまだ梅雨が明けていないのに、連日35度近い日が続き、トマトはきちんと実がならず、なったとしても割れたり溶けてしまったり……。なすやきゅうりも、葉が焼けたり、傷ついたりして収量も低下。さらにいえば、この猛暑のなか働いている私たちが参ってしまい、作業効率ががくんと落ちています」
農林水産省は、これからの夏野菜価格の見通しについて、気温の乱高下や曇天の影響で平年に比べ高値で推移する見込みだと発表している。実際に、全国の市場の価格は、きゅうりとトマトが平年比約3割高、なすは約6割高。夏野菜は平年と比べても20?90%も価格が上昇していることがあきらかに。
■猛暑だけでなくゲリラ豪雨も懸念
野菜農家をサポートする埼玉県のJA職員が語る。
「夏野菜の最高限界温度(生存限界)は35度とされており、いくら高温に強いなすでも、実をつけても木が早く枯れてしまい栽培時期が短くなっています。また暑くなると害虫が活発になり防除作業も増えます。記録的な高温が続くなか屋外で野菜を育てる露地栽培は壊滅状態。今でさえ夏野菜全般が品薄のなか、8~9月も猛暑が続く予報があり、台風による被害も想定されます。昨年から今年にかけてキャベツが200%以上と高騰しましたが、夏野菜もキャベツ同様に平年と比べて2倍ほどの高値で推移することも考えられます」
コメに続いて、夏野菜にも押し寄せる値上げの波。なんとかならないのだろうか?
「猛暑に加えてゲリラ豪雨などによる農作物への被害もあり、夏野菜は思わぬ値上げも。
とは、料理研究家で食品保存アドバイザーの島本美由紀さん。
■切断面がないことで保存期間が長持ち
「野菜を冷凍するなら丸ごとがおすすめ。カットすると、切り口が乾燥するため保存期間は1カ月ほどですが、丸ごとなら3カ月ほど。冷凍方法は簡単で、水気を切った野菜を冷凍専用の厚手の保存袋に入れて冷凍室に入れるだけです」
食品の保存に詳しい島本さんのアイデアが詰まった夏野菜の冷凍保存術を紹介しよう。
【トマト】
「トマトは丸ごと冷凍することでうま味が増し、トマトソースも甘く仕上がります。冷凍したトマトは水にさらすと皮がつるんとむけます。冷凍室から出して室温で5分程度おくと、包丁でサクサク切れます。そうめんつゆにカットしたトマトを入れても美味。凍ったまますりおろせば、デザートのトマトシャーベットになりますし、冷ややっこにのせれば暑い時期にぴったり」(島本さん、以下同)
【なす】
「丸ごと冷凍で3カ月保存可能。室温で5分ほどおくとカットしやすくなります。生のなすを炒めるときは油をたくさん使いますが、凍らすことで組織が壊れて軟らかくなるため、少量の油でOK!」
【ピーマン】
「丸ごと冷凍したものを室温で5分ほどおけばカットも可能。ピーマンのワタやタネにはピラジンという血液をサラサラにする成分が緑色の実より10倍も豊富に含まれているので捨てずに。
【オクラ】
「冷凍しても食感が変わりません。そのまま洗って、水気を取って冷凍保存袋に。凍らすことで産毛がパラパラと取れるので、塩もみ(板ずり)する必要がありません。室温に1?2分おけばすんなり切れます」
【きゅうり】
「丸ごと冷凍する場合は、くっつかないように1本ずつラップに包んで。保存期間は1カ月になりますが、スライスした冷凍保存もおすすめ。自然解凍後に水気を切れば、シャキシャキ食感で、酢の物やポテトサラダに使えます」
【とうもろこし】
「とうもろこしは収穫した直後から甘味と栄養素が落ちていきます。朝採れのとうもろこしを買ってもすぐに食べない場合は、ヒゲを取り、1本ずつラップに包んで、丸ごと冷凍保存しましょう」
【ゴーヤ】
「皮も硬くワタもあるため、丸ごと冷凍には不向き。中のワタを取り、薄切りにして冷凍しましょう。冷凍したことで苦味が増すように感じられたら、カットしてから水にさらし、水分を拭き取ってから冷凍するといいでしょう。保存期間は1カ月です」
【みょうが】
「そのまま冷凍保存袋に入れて、使う分だけ出しましょう。常温に2~3分おけばカットできます。冷凍しても香りはそのまま。
野菜を冷凍保存する利点はわかったが、解凍した後、野菜そのものの味が変わってしまうのではと思っている人も少なくない。
「基本的には冷凍保存に向かない野菜はありません。冷凍することで野菜の細胞壁が壊れるため食感が変わることも。それをメリットとして考えて、ちょっとした工夫をするのがポイントです。細胞壁が壊れることで火が通りやすくなり、この時季にキッチンに立つ時間を減らすこともできます。また、うま味成分が溶け出たりして、おいしく調理できますよ」
こう語るのは、料理研究家で冷凍の達人でもある「ゆーママ」こと松本ゆうみさん。
■冷凍することで、味が染み込みやすくなる
「旬を迎えたなすは、常温や冷蔵で保存すると、すぐにしわしわになったり、種が黒くなってえぐみが強くなったりします。また生の状態で調理すると、中まで味が染み込むには時間がかかり、油を使わないとトロトロに仕上がらないなど難しいと思っている人も多い。
冷凍保存すればアクが強くならないばかりか、ほどよく水分が抜けてなすの味が濃くなるし、染み込みやすくなったり、少量の油でもトロトロに仕上がります」
そんな松本さんが、冷凍夏野菜を使ったレシピを4品、紹介してくれた。
「生でも加熱してもおいしいトマトですが、冷凍することで、冷蔵保存だと水分とともに失われる水溶性ビタミンの流出もゆるやかになるという利点も。角切りなどカットして保存すれば、料理のバリエーションが広がり、切る手間も省かれるので、それも手です。
オクラも生のままでも冷凍できますが、下ゆで冷凍をすれば、鮮やかな緑色をキープできるうえ、保存袋ごと流水解凍するとすぐに食べられるので、暑い時季には最適です。昨今、種ごと食べるのが勧められているピーマンは、クタクタに煮ることで、丸ごと食べられるように。栄養素を余すところなく取ることができます」
夏野菜を冷凍するメリットはほかにもあると、松本さんは続ける。
「水分の多い生のきゅうりは、塩もみをして水分を取ってから酢の物に使う人が多いかと思います。きゅうりを冷凍すれば、水分が適度に抜けて、パリパリとした食感もしっかり残ります。塩分を気にしている人にはおすすめです。
さらに、夏野菜を冷凍室にぎっしり収納することで節電効果も期待できます。凍った野菜が密着することで、お互いを冷やし省エネにも。もしスペースが空いていたら保冷剤や冷凍可能なペットボトルを詰めておきましょう。
冷凍保存を取りいれると、暮らしが驚くほどラクにまわるように。特売で大量にまとめ買いした野菜も冷凍すれば、無駄なく使い切れますよ」
高騰が予想される夏野菜は、いまのうちに冷凍庫にパンパンにつめて猛暑の夏を乗り切ろう!