フジテレビの元女性アナウンサー(以下、Aさん)とのトラブルをめぐり、今年1月23日に芸能界を去った元タレントの中居正広氏(52)。3月31日には同局が設置していた第三者委員会が公表した調査報告書のなかで、WHO(世界保健機関)の定義に基づきAさんに対する「業務の延長線上の性暴力」を認定していたが、一連の問題は別の企業の“教材”としても用いられていたようだ。

その企業とは、JR東日本グループの人材サービス会社「JR東日本パーソネルサービス」(以下、JEPS)。人材派遣や、教育、研修サービスを提供している。

JEPSは今年5月28日、法人会員向けのサービス「Personnel Info Web」内で、同社総務部の人権啓発担当の名義で、《人権情報NOW「中居・フジ問題」について考察してみましょう》と題した記事を掲載。中居氏のトラブルに端を発し、フジテレビが第三者員会を設置し、経営陣を刷新したものの、《現在も沈静化には程遠い状況です》と現状を指摘し、以下のような見解を示した。

《筆者は、第三者委員会による調査の結果、本件が中居氏による深刻な人権侵害(性暴力)と認定されたことに加え、フジの企業としての人権問題対応や危機管理の点で稀にみる「失敗事案」と認識しています》

続けて、一連の問題から“他山の石として学ぶべき点”をピックアップ。それは、中居氏とAさんのトラブルと、事態を把握した後のフジテレビ側の対応だ。

「第三者委による調査報告書では、中居氏とAさんのトラブルは’23年6月に発生したとされており、詳細は守秘義務の範囲のため明らかにされていませんが、中居氏がフジテレビにとって有力な取引先であるいっぽう、Aさんが入社数年目という立場に差があることなどから、《業務の延長線上の性暴力》が認定されていました。なお、中居氏サイドは今年5月に入ってから、本人への聞き取りの結果、“性暴力”という日本語から一般的に想起される暴力的・強制的な性行為はなかったとし、第三者委に対して認定過程における証拠の開示などを求めています。

さらに、トラブルを把握し、Aさんのケアを最優先とすると決めながらも、中居氏の番組出演を継続させた港浩一元社長(73)ら上層部を第三者委は厳しく批判。また、Aさんが入院中、フジ元編成幹部のB氏が、中居氏から頼まれた“見舞金”を病院に運搬するなどしたことが、Aさん対する”二次加害行為”にあたると認定されていました」(スポーツ紙記者)

JEPSは、中居氏サイドが第三者委員会による「性暴力」認定に反論している点について、以下のように指摘。

《第三者委員会により公表されたトラブルの前後に関する諸々の調査結果からも中居氏による卑劣な行為は明白であり、筆者としては断罪されて然るべきと考えます》

続けて、フジテレビ側の対応もこう批判した。

《本件の一義的責任は当然中居氏にありますが、フジの「得意先を過度に優先する姿勢」にも一因があるように思います。

フジにとって、中居氏のように「視聴率=カネ(広告宣伝収入)」をコンスタントに獲得できる有力出演者はまさに上得意先とはいえ、そうした関係性が常日頃から中居氏のわがままや増長を許した結果、今回の悪質な人権侵害行為につながってしまったように思います》

《本人の意向を十分に確認せず加害者である中居氏の番組起用を継続したことや、Aさんの上司に当るB氏が中居氏サイドに立って行動したことは、まさにAさんに対する二次加害行為に該当する愚行といえます。こうしたケースにおいては、被害者の人権擁護を最優先に対応する必要性を端的に示しているという意味で、われわれも「他山の石」とすべきと考えます》

人材教育や研修を担うJEPSとして、一連の問題を重くとらえていたことが伺える内容だが、記事が一部の人の目に留まり、7月下旬からXでスクリーンショットが拡散されると、以下のような声が上がった。

《なにこれ?ひどすぎる。筆者(人権啓発担当)の個人的主張を、社員向け機関紙なのかなんか知らんけど、ホームページに掲載してた?誹謗中傷を一般人なのに実名で?》
《人材派遣の会社が全然中立公平じゃない人権侵害をしてるそんな会社信用できない》
《人権侵害団体、精神的被害を受けたと、ファンが損害賠償請求すれば1人10,000円でも莫大な金額》
《抗議文送りました。皆さんもこちらへ。#中居正広 #中居正広さんの人権救済を求めます #JR東日本 #人権侵害》

中居氏サイドが反論するなか、コラムのなかで“卑劣な行為は明白”と断罪したことに違和感を覚えた中居氏のファンが多かったようだ。こうした声が影響したのか、JEPSは7月25日に公式HP上で《この度、弊社の「人権情報NOW(2025年5月号)において、一部行き過ぎた表現があったことをお詫び申し上げます》と謝罪。ところが、以降も批判のこえはやまず、JEPSは29日にこんな声明を発表した。

《このたび、弊社が5月28日に会員向け「Personnel Info Web」に掲載した記事「人権情報NOW「中居・フジ問題」について考察してみましょう」において、人権を取扱っている内容にも関わらず、事実の確認を十分に行うことなく、一方に偏った断定的な主張を行った公平性に欠ける不適切な内容及び表現があり、関係者の皆様および読者の皆様にご迷惑とご不快の念を与えることになりましたこと、深くお詫び申し上げます

弊社では本件を重く受け止め、「Personnel Info Web」を廃止するとともに、当社の編集体制の抜本的な見直しと再発防止策を講じてまいります》

なんと謝罪に留まらず、ページまで閉鎖したというのだ。なお本誌は8月5日、JEPSの担当部署に対し、発端となった記事を公開した経緯などを問い合わせている。回答があり次第、追って報じる。

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