「次は、神谷宗幣君の質疑を行います。神谷宗幣君!」

8月5日に開かれた参院予算委員会で、質問に立った参政党の神谷宗幣代表(47)。

神谷氏、そして参政党にとって、予算委員会での質疑は衆参両院を通じて今回が初めてだ。

参政党は「日本人ファ―スト」を掲げて参院選を戦ったが、神谷氏は質問に先立ち、このキャッチコピーについて、「国境を超えた経済競争による行き過ぎた新自由主義、多国籍企業に富が偏在し、それぞれの国の中間層が没落してしまうようなグローバリズムに警鐘を鳴らす、『反グローバリズム』を意味する」と改めて強調し、国内生産の強化、安価な労働力としての移民受け入れの規制などで内需を拡大し、“中間層の復活”を目指すと力を込めた。

また、今回の予算委員会では、日米の関税合意を受けた集中審議が行われたが、神谷氏はアルゼンチンがアメリカとの関税交渉を日本よりも優位に進めていると指摘し、その理由を「(アルゼンチンの)ミレイ大統領は、トランプ大統領との関係構築を早く行った。WHO脱退を表明したり、アメリカの政策に倣っていろんなことやるという風に言っている」などと説明。その上で、神谷氏は石破茂首相(68)に対し、ウクライナ支援の見直し、脱炭素からの脱却、政府によるSNS規制の撤廃など、アメリカの動向に合わせる方針を検討しているかを尋ねた。

これを受け、石破氏は「国益に資するかどうかは我が国が主体的に判断するもの。アメリカから言われて関税の取引の材料としてこういうものを使うことが、必ずしも正しいとは思っておりません。アルゼンチンの大統領がトランプ大統と非常に緊密であるということは注目していますが、アルゼンチンとは全く貿易構造が違う。そして、我が国とアメリカは安全保障上、非常に緊密な同盟関係にあるということで、そこはアルゼンチンと全く同列に論じるべきではありません」との見解を示した。

ただ、神谷氏は同盟関係について一定の理解を示しつつ、アメリカと妥結した「対日関税15パーセント」「80兆円の対米投資(枠)」は「いい条件とは思えない」と話し、「不平等条約のようなものを一方的に押し付けられたような感覚を持っている国民はたくさんいると思います」と指摘。続けて、石破氏に対してこう提言した。

「今回の取り決めを守る必要はないと思うんです。

いかにこの15パーセントを0にしていくかという交渉を、これから政府をあげてやっていく必要があると考えています。その時に、向こうの意向も考えずに、我が国との関係が良いからと言って、突きつけられた条件を飲んでいくということであれば、外交交渉としては非常に心もとないなと感じます」

最後は、「関税交渉はまだこれから続くと思いますので、ぜひより良い結果が導けるように頑張っていただいて、またこういった場で議論させていただきたいと思います」とエールを送った神谷氏。しかし、Xでは神谷が「関税ゼロ」に向けた交渉を促していたことをめぐって、こんなツッコミが続出した。

《関税をゼロに近づけろって、反グローバリズムどころか、むしろグローバリズム推進でしょ》
《関税を 0% にまで下げるというのは「反グローバリズム」の真逆》
《グローバリズムは突き詰めれば関税ゼロの世界。神谷さん、こんなこと国会で言って大丈夫か?》

「神谷氏は質疑の冒頭で、経済競争が生み出す過度な新自由主義的価値観を憂慮していましたが、一般的に、関税が低くなればなるほど自由貿易は活発化し、外国からの商品もより入ってくることになります。結果として、一部の多国籍企業を利する『グローバリズム』を肯定することに繋がるのではないでしょうか。トランプ大統領が高い関税で自国産業を守れると主張するように、神谷氏は日米それぞれの輸出産業を守るという意味合いで『関税ゼロ』に向けた働きかけを求めているのかもしれません。ただ、参政党が結党以来一貫して『反グローバリズム』を掲げてきただけに、今回の発言と党の方針に矛盾を感じる人は多いでしょう」(経済部記者)

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