8月13日、大阪・関西万博が開幕4カ月を迎えたが、連日の盛況もあり、吉村洋文大阪府知事(50)が当初掲げた「並ばない万博」という計画はもはや“白紙”状態だ。そんななか、交通機関のトラブルが発生し、今度は「帰れない万博」が来場者を襲った。
「万博会場への唯一の鉄道ルートでメインのアクセス手段となっている大阪メトロ中央線で、13日午後9時半ごろから、同線に送電線トラブルが発生し、運転が見合わせられました。結局、運転が再開したのは翌14日の午前5時半ごろで、一時、会場周辺には約3万人が足止めされたとみられており、午前7時前にようやく帰宅困難者が退場することができたといいます」(全国紙社会部記者)
帰宅困難者が大量発生するという緊急事態を受け、万博会場が電車の運行再開まで急きょ待機場所として開放されることに。Xでは、思い思いの一夜を過ごす帰宅困難者たちの投稿が拡散し、一時「オールナイト万博」という関連ワードもトレンド入りすると、なかには会場内に設置されたカメラに向かってダンスなどを披露するポジティブな若者の映像も見られた。そのほか、会場や各パビリオンのスタッフが飲食物を配っていたという報告などの“美談”も相次いでいた。
そんななか、事態が収束した14日昼ごろにXを更新し、《昨夜のオールナイト万博、お疲れ様でした》と労ったのが、万博最大の目玉でもある「大屋根リング」のデザインを担当した建築家で、万博会場デザインプロデューサーを務める藤本壮介氏(54)だ。藤本氏は、会場で一夜を過ごした帰宅困難者、サポートに当った関係者に対し、こんなメッセ―ジを送った。
《大変な状況にもかかわらず、忍耐強く過ごしてくださり、また時にポジティブに楽しく過ごしてくださった来場者の皆さん、ありがとうございました
またパビリオンの解放や飲食の提供、臨時便の増発、そのほかもろもろ、難しい状況の中で柔軟に対応下さった各パビリオンの関係者の皆さん、警備の皆さん、そのほか全ての関係者の皆さん、ありがとうございました》
そして、《あらためて、今回の万博は、人が作っている、ということを実感しました》としみじみと書き綴り、《国境や立場を超えて、人が人と共に人のための素晴らしい場を作る、ということを実感しました 会場からの朝日の写真、沁み入りました》と締めくくった。
投稿は14日夜時点で5000件近い「いいね」が寄せられ、共感の嵐かと思いきや……。リプライや引用リポストで、藤本氏に対して痛烈な批判が殺到しているのだ。
《これ、嫌味か嫌がらせとしか思えない人居るだろうな。万博側の責任者なんやから先にご迷惑をおかけしましたとか言わんとあかんやろ》
《ポジティブに過ごせた人は一握りでほとんどの人は災害に遭ったようなもんだろう。よく呑気なこと言えるな》
《さすがに運営、設計関係者が言うことではなくない?制度設計的に危惧されてたことが起きたわけだし反省が先じゃないの》
《感動してる場合か そんな調子だとまたトラブル起きるよ》
万博への交通面の脆弱性が招いた「オールナイト万博」の光景に、すっかり“感動”しているかのような藤本氏に、強い反発が起こってしまったようだ。
「もちろん、帰れなくなったことを好機と捉えて一夜を目いっぱい楽しんだ人は多くいたでしょうし、そのような人たちにとっては、『オールナイト万博』が忘れられない特別な思い出になったことでしょう。いっぽうで、体調不良で高齢者を含む36人の男女が救急搬送されており、当夜は30度近くある熱帯夜でしたから、熱中症の疑いがあるケースもあったといいます。そのほか、自動販売機の飲み物が売り切れるなど、つらい経験となった人も多数いたことでしょう。
これは立派な人災ですから、運営サイドでありながら、苦しい思いをした人たちに謝罪の言葉もなく、『オールナイト万博』という本来はネガティブな話題に乗っかるような藤本氏の姿勢に違和感を覚える人が多かったのでしょう。
実際、吉村知事もXで、『オールナイト万博』を楽しむ人たちの投稿をリポストしていましたが、これにも同様に厳しい声が殺到していました。ただ、藤本氏の場合は運営サイドとはいうものの、あくまでも建築面のプロデューサーですから、負っている責任以上に批判を受けている印象もあります。とはいえ、このようなタイミングでは、うかつな投稿だったことは否めません」(前出・社会部記者)
会期終了まで2カ月を切ったが、協会には再発防止を強く求めたい。