国内最高気温が塗り替えられるなど、史上最悪ともいえる猛暑が続いている。そんなこの夏、スズメバチに巣を作られて駆除を依頼するケースが増えているという。

このスズメバチに刺された場合、アレルギー反応のなかでも特に重篤な状態であるアナフィラキシーショックを起こすことも。放置すれば死に至る恐れがある。

「都道府県別ハチの発生状況」を見てほしい。発生指数は50以上がかなり発生していることを示す数値だが、東京都の2025年の発生指数は何と143.2。2024年の同日は79.5なので、昨年の約1.8倍にも上昇している。

「今年に入っていちばん大きかったものは直径40cmほどのキイロスズメバチの巣。また、駆除依頼の件数は例年よりも多く感じます」

こう話すのは、スズメバチ駆除の専門業者、みどり産業の松原暢明さんだ。

キイロスズメバチといえば、日本に数種類いるスズメバチのなかでも特に攻撃性が高い。このときに駆除した巣の中には500匹ほどのスズメバチがいたという。

スズメバチに襲われて死亡するケースは、厚生労働省の人口動態統計によると毎年20人前後いる。考えるだけでも恐ろしい。

では、なぜ今スズメバチの被害が増えているのか。

その理由を九州大学大学院農学研究院准教授の上野高敏さんにうかがった。

「スズメバチが増加する背景には、まず温暖化がありますね。

温暖化が進んで春の始まりが早くなると、巣作りが早くなり、暑さが続いて秋の終わりが遅くなることで活動期間が延びて巣はより大きくなります。高温環境を好むスズメバチには温暖化は好都合です」(上野先生、以下同)

さらに今年の短かった梅雨もスズメバチが増えた要因だという。

「梅雨は短かったものの、適度に雨は降ったのでハチのエサとなる虫に困ることもなく、巣がつぶれるような大雨や台風の直撃もほぼありませんでした。梅雨明け後は一気に暑くなり、スズメバチの繁殖にとって非常にいい気象条件がそろっていたといえますね」

スズメバチの巣といえば、あまり身近な場所にあるイメージが湧かない人も多いと思うが、前述のとおり、東京都内をはじめ都市部でも増えていて人ごとではない。

「都市部で特に増えているのがキイロスズメバチとコガタスズメバチ。この2種はさまざまな虫をエサとして生きていけるので、都市部でも生き残りやすいです」

また、巣を構える場所もスズメバチが生きていくうえで重要なポイント。

イラストを見てもわかるように家の軒下など人工的な環境にも巣を作れるため、都市部でも巣作りの場所に困らない。

「軒下だけでなく、壁や軒下にちょっとした穴や割れ目などがあると、そこから侵入して屋根裏や壁の中にも巣を作ってしまいます」

このような場所があれば日ごろから気をつけておこう。もし春の巣作りを始めた段階で小さな巣を見つけた場合は、スズメバチ専用の殺虫スプレーなどを使ってすぐに駆除することもできる。

「巣が小さい時期を過ぎるとどんどん大きくなってしまい、夏ごろには個人で対応することが不可能なレベルに。

すぐに駆除を専門に扱う業者に依頼してください」

その駆除業者に依頼するときに注意すべきは、高額な駆除費用を請求するような悪徳業者だ。

■巣が大きくなる秋は攻撃性が増し要注意!

スズメバチの駆除費用の相場は2万~5万円ほど(編集部調べ)。ただしこれは基本料金で、別途巣の大きさや数などで追加料金が発生する業者もあるので注意が必要。見積もりのための事前調査で費用を請求する業者もある。

今回話をうかがったみどり産業は、巣の大きさなどは関係なく、屋根裏や壁、木の中などに入り駆除に時間がかかるものでも3万円ほど。このように、料金システムが明確で安心できる業者をしっかり調べて依頼することが大切だ。

「自治体によっては、きちんとした駆除業者を紹介してくれるところもあります。迷ったときは相談してみるのも一つの手です」

業者の紹介以外に、駆除費用の一部補助をしてくれる自治体も。ただし補助は条件付きの場合もある。住んでいる自治体にどのようなサービスがあるか、駆除依頼前に調べることが得策だ。

もう一つ注意すべきは、スズメバチは夏の終わりごろから攻撃性が増すという点だ。

「今年は猛暑と小雨の影響で、例年より早いペースで巣が大きくなっている可能性があります。

スズメバチは巣が大きくなるほど攻撃性が高くなります。そのため、特に巣がかなり大きくなってきている秋に向けては要注意。見張りの役割を果たす働きバチの数が多くなっているうえ、刺激に対して敏感になっています」

夏の終わりごろは、巣に近づくだけでもスズメバチを刺激し、刺される危険性がより高まる。 秋には直径70cm近くまで大きくなる巣もあるという。

スズメバチの巣を見つけた場合は決して近づかず駆除依頼を。その際、くれぐれも悪徳業者には注意しよう。

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