「M-1グランプリ2024」で準優勝して大ブレイクを果たしたお笑いコンビ・バッテリィズのエース(30)が8月19日、今年の「M-1」に「ほぼ出ない」と明かし、話題を呼んでいる。

東京・水道橋のIMM THEATERで行われた『東京グランド花月』の初日公演後に取材に応じたバッテリィズ。

今年のエントリー締め切り31日が目前に迫る中、今年も同大会に出場するか聞かれたエースは「ほぼ出ないです。可能性的には」と発言。寺家(35)も「一応(まだ)10日あるので、”ほぼ”ということで」と同意した。

’18年から毎年「M-1」に挑戦してきたバッテリィズは、’22年と’23年に準々決勝進出。昨年ついに決勝に進出し、2連覇した令和ロマンに敗れたものの初決勝ながら準優勝という快挙を果たした。エースの真っ直ぐでピュアなキャラクターが人気を呼び、バラエティ番組に引っ張りだことなり、7本のCMに出演するなど、勢いはとどまるところを知らない。

今年の「M-1」出場を期待していたファンも多かっただけに、”ほぼ不出場”表明に残念がる声も多かった。バッテリィズ同様に最近は、’22年に準優勝、’23年に3位となったさや香が’24年の「M-1」出場を見送り、現時点で今年もエントリーが確認されておらず、’19年と’20年に決勝進出しブレイクを果たしたニューヨークも’22年からは出場していない。

かつては’01年から出場し続け、10回目の挑戦となった’10年に優勝を果たした笑い飯のように、“M-1優勝”を至上命題に掲げる芸人は少なくなかったが、前述のように近年は出場資格をクリアし、優勝が期待されながらも「M-1」に出場しない芸人も増えている印象だ。

お笑い評論家のラリー遠田氏は「『M-1』優勝を目指さない芸人が増えているわけではない」と指摘した上で、その背景についてこう解説する。

「すでに十分な知名度があって仕事もあるので優勝を目指す必要がないというのがニューヨークとバッテリィズで、さや香もそれに近いと思います。さや香の場合は、準優勝までしているので、多分もうやれるところまでやって満足したという感じではないでしょうか。

見る側としては、せっかくなら毎年出て優勝を目指せばいいと気楽に考えるかもしれませんが、出る側としては1年に1度のオリンピックに出るくらい負担が大きいです。そこに向けて逆算して専用のネタを作って磨く。それを普段の劇場やテレビの仕事の合間にやるので、メディア出演の多い人が片手間でやれるようなことではないというのもあると思います」

そもそも、注目度の高い「M-1」は、まだ世に知られていない芸人にとってはこの上ないチャンスの舞台だ。

「何のために出るかというと、みんな優勝はしたいでしょうが、それだけではなく、決勝に残って活躍して知名度が上がり仕事が増えれば目的の一つは達成したと考える人もいます。そういう人であれば翌年は出ないという選択肢も出てくるということでしょう。

だから、逆にほとんどの人には関係ないことなんです。1万組エントリーして決勝進出はたった10組です。しかも、その全員が活躍できるわけではなく、決勝をきっかけに”売れた”と言えるのは毎年2、3組です。だから、その人たちは翌年”出ない”という選択肢も許されますが、そうじゃない人にとっては別に何も変わらないということです」

また、いい結果を残して”売れた”芸人にとって、翌年の挑戦は「リスクになる可能性もある」ようだ。

「さや香の新山さんも言っていますが、彼らは準優勝したので、次に『M-1』に出るとしたら、優勝を目指す以外にないんですよ。銀メダルは獲ったから、次の目標は金メダル以外ないので、優勝を目指すんじゃなければ出る意味がないんです。決勝ではなく優勝を目指すことはものすごく厳しく、他の活動を全て犠牲にしてやる意味があるのかと考えるのは自然なことです。

なので、出場しない選択は近年に限ったことではなく、歴代の人も同じです。’08年にはオードリーが準優勝して有名になり翌年以降は出場していません。逆に、南海キャンディーズは’04年に準優勝してすごく有名になって1年間忙しかったのですが、翌’05年にも出場して、なんとか決勝には残れたけどうまくいかなかった。多忙で満足のいくネタができない可能性もあるので、出たことによって損する場合もあります」

さらに、知名度を得ている芸人が出場しないことには、後進に席を譲る意味もあるという。

「レギュラー番組も増えて順調にいっている芸人が『M-1』に出ると、やっぱり周りの芸人からもよく思われないみたいですね。十分有名なのにチャンスを奪ってしまうことにもなりかねないわけですからね。ほとんどの芸人は知名度0の状態からなんとかして勝ち上がって売れっ子になりたいのに、すでに売れてるニューヨークとかバッテリィズとかさや香とかが出てきたら、それによってファイナリストの枠が1つなくなるっていうふうにも思われるじゃないですか。

実際は勝負の世界だから、人気のある芸人が必ずしも決勝に行けるわけではないし、出る・出ないは個々人の自由なんですが、やっぱり芸人の間では多かれ少なかれそういう意識はありますよね。やはり売れてない人が売れるためのチャンスの場ですから、”売れっ子が出てくんなよ”みたいに白い目で見られやすいというのはあるでしょう。それを超越して戦略的に2連覇した令和ロマンはまた特別なんですが、結局『M-1』は小さな番組に100回出るよりも、芸人にとって大きなチャンスの舞台なんです」

昨年はバッテリィズが掴んだ“チャンス”今年掴むのは――。

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