《無料の占いアプリをインストールしたが、無料なのは最初の3日だけだった。その後知らない間にサブスク(定期契約)になっていて、後日5万円の請求が届いた》

これは国民生活センターに寄せられたスマホアプリでのトラブル事例だ。

ほかにも、ダイエットアプリ経由でLINEグループに誘導され、商品購入のために5万円を振り込んだ直後に、連絡が途絶えたケースもある。このようなアプリをきっかけとしたトラブルは後を絶たない。

「個人情報を抜き取ったり、意図しない課金が発生したり、容量が重すぎて支障をきたすアプリなどを『有害アプリ』と呼びます」

こう話すのはITジャーナリストの鈴木朋子さんだ。

有害アプリは2つに分けられる。一つは「品質が粗悪なアプリ」。これをインストールするとスマホの動作やバッテリーに悪影響を及ぼし、充電の減りが異常に早くなったり、動作が極端に遅くなることもある。そしてもう一つは「悪意を持って作られたアプリ」。巧妙な仕組みで、利用者に意図せず課金をさせたり、個人情報を抜くものだ。

特に深刻な被害を招きやすいのは後者だ。一見すると問題がないように装いながら、利用者の不注意を狙って、気づかぬうちに被害を発生させる危険性が高い。

「さらに最近は、アプリからLINEやSNSでの個人的なやりとりへ誘導し、そこから投資詐欺やロマンス詐欺、高額請求へと発展させる手口が急増しています。アプリストアの審査強化もあり、アプリ単体での詐欺は減りましたが、その半面、このような間接的な『誘導型詐欺』が目立つようになりました。

特に50代以降の被害が増えているため、注意が必要です」(鈴木さん、以下同)

■SNS型詐欺による被害総額は、過去最高となる1272億円!!

警視庁の発表によれば、令和6年のSNS型投資詐欺の認知件数は、前年の約1.8倍に増加。SNS型ロマンス詐欺も前年の約1.4倍と大幅に増えている。そして、これらのSNS型詐欺による被害総額は、過去最高となる1千272億円にも達した。アプリをきっかけとした詐欺事件や不当な高額請求については、警察庁や消費者庁も相次いで注意を呼びかけている。

「『怪しいアプリは入れたりしないから、自分は大丈夫』と思いがちですが、中高年世代で特に多いのは、スマホの画面に突然表示された広告を消そうとして、よくわからないままボタンを連打し、結果的に有害アプリをインストールしてしまうケースです。また、表示された広告の『×』や『閉じる』ボタンが極端に小さく、画面を閉じようとして誤って広告を開き、そのまま有害アプリをダウンロードしてしまうこともあります」

さらに「アプリを入れないと、データが全部消える」といった虚偽の警告メッセージで不安をあおり、アプリをインストールさせる悪質な広告も確認されている。

「有害アプリをインストールしてしまうと、深刻なリスクにさらされます。たとえば、カメラや位置情報機能が勝手に起動され、個人情報を不正に収集される危険性です。さらに、入力フォームで個人データを抜き取られ、知らないうちに有料サービスや課金システムに同意させられてしまうケースも少なくありません」

■粗悪なアプリはセキュリティも脆弱

では、使用しているアプリが有害かどうかを、どう見抜けばいいのだろうか。

「残念ながら、アイコンなど見た目だけで判断することはほぼ不可能です。ただし、目安となるチェックポイントはいくつかあります」

バッテリーの消耗が早いアプリは、容量が極端に大きいなど、技術力の低い会社が開発している可能性が高く、セキュリティも脆弱であることが多い。アプリ起動時に「ウイルスに感染しました」などの不安をあおる広告や通知が頻繁に表示される場合も、悪質なサイトやアプリにつながりやすく要警戒だ。

また、入れた記憶がないアプリは、知らないうちにインストールをさせる悪意のあるアプリである可能性が高い。アプリ起動中に、別のサービスや課金プランを促すものは詐欺の可能性もある。

■行ったこともない海外のWi-Fi無制限サービスに加入していた事案も

「怪しいアプリを見つけたら、まず確認してほしいのがサブスクの利用状況です。iPhoneの場合は『設定』から自分のアカウント情報を開き、『サブスクリプション』を確認します。Androidの場合はGoogle Playストアアプリで『お支払いと定期購入』を確認。身に覚えのないアプリがあれば、すぐに解約しましょう。実際に、海外へ行ったことがない方が、『海外Wi-Fi無制限サービス』に加入させられ、毎月課金されていたという事例もあります」

サブスクの確認が終わったら、次はスマホにインストールされているアプリをチェックしよう。1カ月以上使っていないアプリや、用途が説明できないアプリはアンインストールしておくと安全だ。

ただし、アプリ内でアカウントを作成している場合は、まずはアカウントを削除してからアプリを削除する必要がある。

■有害アプリはアプリ長押ししてアンインストールを

削除の基本は、アプリを長押しして「削除(アンインストール)」を選ぶこと。ただし、機種やアプリによっては完全に消えていない場合があるため注意が必要だ。

Androidの場合はホーム画面で、削除したいアプリを長押し、画面上部の「アンインストール」やゴミ箱の絵のところまでアイコンをドラッグ。

「このアプリをアンインストールしますか?」と表示がでるので「OK」をタップすれば消去できる。iPhoneの場合は、ホーム画面でアイコンを長押しして「アプリを削除」を選ぶか、「設定」→「一般」→「iPhoneストレージ」からアプリを選択し、「アプリを削除」で完全に消去できる。

「家族や友達、携帯ショップの店員など、わからないことや不安なことを相談できる相手を作っておくことが大切です。スマホ操作が不慣れだからといって、表示された内容をなんとなく『OK』や『許可』で進めたり、むやみに個人情報や口座情報を入力しないように気をつけましょう」

ニュースや仲間内での会話などで、日ごろから危機意識を高めれば、有害アプリによるトラブルを未然に防ぐことにつながる。こまめに自分のスマホを点検し、有害アプリから身を守ろう。

【“有害アプリ”の見極め方チェックリスト】

1)位置情報や写真のアクセスを許可しないと起動しない
2)アプリを起動中、バッテリーの減りが異常に早くなる
3)アプリからの通知が頻繁に届く
4)アプリ内でやたら個人情報を求められる
5)アプリ起動時に広告が頻繁に表示される
6)アプリ名が怪しい(不自然な日本語や直接的す表現など[例:投資稼ぎ等])
7)ダウンロードした記憶がない
8)アプリからLINEでの個人のやり取りに誘導される
9)アプリストアのコメントに悪評がある
10)アプリ起動中に頻繁に広告を消すプランや、課金プランが提示される

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