親や夫など身内が亡くなったとき、悲しんでいる暇はあまりない。葬儀や各種届け出など、やらねばならないことが次々と押し寄せてくるからだ。

「悲しい気持ちを脇に置いて冷静でいようとしても、ふだんどおりとはいきません。必要なことにすべて対応しているつもりでも、見落としてしまうことがあるものです」

そう話すのは1万5千件以上の相続相談に対応した相続実務士で、『身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2026年版』(扶桑社)の監修者・曽根恵子さんだ。本来もらえるはずのお金を、申請をうっかり忘れたために受け取れない、そして、そのことに気づかない人も多いのだという。

たとえば年金の受給者が亡くなって死亡を届け出たときに、年金事務所の担当者が「『未支給年金』の申請も忘れずに」などと教えてくれることもあるという。そんな担当者にあたった人はラッキーだが、担当者が親切な人とは限らないのが現実だ。

「死亡のタイミングによりますが、未支給年金に該当し申請すれば、故人が受け取っていた年金の1カ月分が受け取れます。遺族にとって、もらえる、もらえないの差は大きいでしょう。

ただ身内の死に直面してから、もれなく申請しようと思っても難しいかもしれません。ですから、『死なんて関係ないよ』と笑えるうちに、リストアップしておくことをお勧めしています」(曽根さん、以下同)

■国民健康保険の葬祭費は7万円という自治体も

そこで曽根さんに、身内が亡くなったときにもらえるお金を15項目教えてもらった。リストがあるので、保管しておこう。

意外と忘れがちなのは、葬式を行った喪主などが受け取れる「葬祭費」や「埋葬料」だという。死亡届は葬儀会社が届け出を代行してくれることが多いからだ。

国民健康保険の葬祭費はわずかだとよく聞くが、7万円という自治体もある。会社の健康保険なら、加入者だけでなく、扶養されている家族が亡くなったときにも「家族埋葬料」が出る。

また、入院や治療でかかった医療費には、年齢や収入に応じて自己負担の上限が決まっている。その上限を超えて支払った医療費は、通常は本人が「高額療養費」の払い戻しを申請するが……。

「亡くなってしまった場合は、相続人の代表者が申請できます。葬儀などが終わって落ち着いてからの申請で構いませんが、2年の期限があるので注意してください」

18歳未満の子どもなどを遺して親が亡くなった場合、配偶者や子どもに「遺族基礎年金」が支給される。これは国民年金でも厚生年金でもどちらでも受け取れ、子どもが1人の場合で年約107万円と手厚いものだ。

いっぽう、厚生年金の加入者が亡くなったときは、18歳未満の子どもがいなくても30歳未満の妻は5年間、30歳以上の妻は亡くなるまで「遺族厚生年金」を受け取れる。

今後制度が変わるが、2028年度に40歳以上になる女性はこれまでどおり亡くなるまで受給できる。

「国民年金を受け取る前に亡くなった人の妻は、婚姻期間が10年以上で65歳未満などの条件を満たせば『寡婦年金』が受け取れます。国民年金の加入期間が短い場合でも、妻か子どもか親などが『死亡一時金』を受け取れることがあります」

国民年金にも18歳未満の子どもを持たない妻などを支える仕組みがあるのだ。条件を満たしているのか悩む人は、年金事務所に相談してみよう。

手続きを急がないといけないのは、個人事業主など確定申告が必要な人が亡くなった場合の「準確定申告」だ。4カ月という短い期限なので注意しよう。

「実は、航空会社のマイルや電子マネーの残金は相続財産です。ほかにも農協や生協、信用金庫などの組合出資金も相続できます」

ただ、どこのマイルか、どんな電子マネーを利用していたか、わからないことには相続手続きが行えない。アカウントやパスワードなども前もって共有しておきたい。

「ポイントをためている人も多いと思いますが、ポイントは相続できません。亡くなる前に使い切るか、相続できるマイルなどに移行するといいでしょう」

これらをすべて記憶するのは無理があるだろう。エンディングノートなどを活用し、親だけでなく自分の情報もきちんと整理しておこう。

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