まだあどけなさの残る19歳のころにデビューしてから約7年。すっかり大人びた水上恒司(26)が、吉岡里帆(32)とW主演映画『九龍ジェネリックロマンス』で、撮影時の実年齢よりも9歳年上のキャラクター工藤発を好演している。
「30代を演じるのは初めてですし、工藤は痛みを抱えている人間なので、オファーを受けたときは『お前に演じられるのか?』と自問自答しながらも、挑戦的な役をいただけてすごくうれしかったです。僕には工藤のように強い喪失感を覚えた経験がないので、役作りでは自分の中にある0.1にも満たない要素を少しずつ広げて引き上げていくような、地道な作業を繰り返しました。振り返ってみると、その時間がすごく大切だったなと思います」
真摯に向き合った工藤というキャラクターについて水上は「ダメな男ですよね(笑)」と話す。
「工藤は一見するとストレートな物言いで、ややがさつにも見えます。ただ、僕は彼を男性の弱さや繊細さを体現するキャラクターにしたくて。ヒロインの令子を抱きしめている場面でも、逆に抱きしめられているように見えていたらうれしいです」
本作は人間の記憶がバックアップできるようになったとされる世界観になっている。水上自身にはバックアップしたいと思う記憶はあるのだろうか?
「いい芝居をした瞬間は、できれば忘れたくないですけどね。今回は食事のシーンが自分でもとくによかったと思っています。ただ、ほかの現場や作品でそれをなぞりたくないので、ふだんからあえて記憶を封印しているような気もします」
本作の舞台は九龍城砦をモデルにしており、画面からはどこか懐かしさが漂っている。そこで水上が懐かしさを感じる瞬間について聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
「野球に真剣に取り組み始めた小学4年生のとき、クラブチームの練習に向かう国道沿いの道の風景を思い出したときです。
【INFORMATION】
映画『九龍ジェネリックロマンス』
8月29日公開。九龍城砦の不動産屋で働く鯨井令子(吉岡里帆)は、先輩の工藤 発(水上恒司)に恋をしているが、なかなか距離が縮まらない。ある日、2人で立ち寄った金魚茶館の店員(栁俊太郎)に工藤の恋人と間違えられたことで、令子はもう1人の自分の存在に気付く。