日本人の死亡理由の1位となっているのが「がん」。じつに4人に1人ががんで亡くなるとされている。
『放っておくとこわい症状大全 早期発見しないと後悔する病気のサインだけ集めました』(ダイヤモンド社)など著書が多数ある、総合内科専門医の秋津壽男さんと、医療ガバナンス研究所理事長で、内科医の上昌広さんに意外ながんの症状を教えてもらった。
「女性のがんでもっとも多い乳がんは、大部分ががん検診やしこりにより発見されます。ただし、乳管に沿って起きる乳管がんは、患部にかゆみや赤い乳汁が出ることで見つかることも」(秋津さん)
ほかにも女性特有のがんである子宮がんや卵巣がんは、不正出血が続くなどの症状があるので、注意しよう。もっとも女性の死亡数が多いがんが、大腸がんだ。
「一般的な症状は血便や貧血。よほどの出血量でない限り潜血は肉眼で確認できないので、1年に1回、便潜血検査は受けるようにしましょう」(上さん)
「免疫細胞の約70%が大腸にあります。がんで働きが落ちると老廃物がたまり、フケやシミができたり肌荒れすることも」(秋津さん)
胃がんは、真っ黒な血便が特徴。
「胃で出血した場合、消化管を通る間に血液内のヘモグロビンが酸化するためです」(上さん)
「出血が続くと、貧血によって爪やまぶたの裏が白っぽくなる症状が出たりします」(秋津さん)
肺がんでは「深呼吸すると二の腕あたりが痛む」ことも。
「肺の外側の壁にがんができると、深呼吸や肩甲骨を動かしたときに肺が痛みます」(秋津さん)
風邪でもないのに声がかすれた状態が2週間続けば、咽頭がんや食道がんが疑われるという。
腎臓がんは、尿の泡立ちが目印。
「尿を泡立たせるアルブミンというタンパク質は、本来は体内に取り込まれますが、がんなどで腎臓の糸球体が損傷すると、尿に漏れ出てしまうのです」(上さん)
早期発見が難しいすい臓がんは、白っぽい便が特徴的だという。
「便は、胆汁と交わることで茶色に着色されます。しかしすい臓がんにより胆管が圧迫されると、胆汁が腸にまで届かず、便が白くなってしまいます」(上さん)
■早期発見が命も家計も救う
「病気の症状にいち早く気づくことは大事ですが、がんなどは定期的に検診を受け、早期発見することも重要です」(上さん、以下同)
がん検診は、自費よりも自治体などで行われるがん検診のほうがお得だ。
「もちろん、生活習慣を見直して予防することも心がけてください。入院となれば経済的負担も大きくなります」
厚生労働省の医療給付実態調査をもとに、入院を伴う場合の治療費を試算してみると、3割負担であっても、がんなら20万円前後となる。
医療費が高額となった場合は、年収に応じた自己負担額の上限を超えた分が払い戻される、高額療養費制度が利用できる。
「しかし、入院ともなれば、差額ベッド代(1人部屋全国平均1日8千625円)や、病院食(1食490円)も別途、必要になります」
入院日数が長引けばそうした負担も増していくことになる。自分の体の変化に耳を傾けながら、定期的な検診を忘れずに、がんの早期発見を心掛けよう。