これまで「ポイント経済圏」といえば、楽天やドコモなど携帯電話会社間の競争が中心だった。

「’24年4月に三井住友フィナンシャルグループ(以下、三井住友)が、共通ポイントの先駆けだったTポイントを自社のVポイントに統合。

ポイント経済圏の覇権争いがし烈になってきました」

そう話すのは、130枚以上のクレジットカード(以下、クレカ)を持ち、ポイントの黎明期からポイ活を行う達人、菊地崇仁さん。

三井住友は’23年3月、銀行・証券・クレカ・保険などを一体化した金融サービス「Olive」を開始。当初、Vポイントの知名度は低かったが、Tポイントとの統合で形勢は一転。顧客囲い込みを期するメガバンクが本気でポイント経済圏争いに打って出たのだ。

いっぽう三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、三菱UFJ)はやや遅れて今年6月に「エムット」をスタート。銀行アプリにグループのクレカや証券会社などへのリンクボタンを設置。タップするだけで簡単にアクセスできる総合金融の体制を整えた。

両者とも総合金融を目指すのは同じだが、異なる点は多い。三井住友がキャッシュカードとクレカやデビットなどを集約した「Oliveフレキシブルペイ」を発行するのに対し、エムットは従来どおり個別のカードを使う点などだ。だが、ポイント経済圏への攻勢はどちらもかなり強力だ。

昨今、ポイントは“改悪”が続く。たとえば楽天ポイントは、’22年には税込み価格へのポイント付与から税抜き価格に縮小され、’24年には楽天モバイル以外の携帯電話料金の支払い時の還元率を1%から0.5%に引き下げた。

楽天ポイントの売りである「貯まりやすさ」がどんどん削がれている。

いっぽう、Oliveもエムットも通常のポイント還元率は0.5%にとどまるが、加盟店ではなんと7%に跳ね上がる。

「買い物するだけで7%還元はかなりお得。また、コンビニやスーパー、ファミレスといった実店舗での利用で還元率がアップ。ネットが苦手な人にもおすすめです」(菊地さん、以下同)

Oliveとエムット、どちらを使えばいいのだろう。

「選ぶ基準は大きく3つあります。1つ目は加盟店のラインナップです。よく使うお店があるほうを選ぶといいでしょう」

Oliveの加盟店は22ブランド。セブン-イレブンなどのコンビニとマクドナルドや吉野家などのファストフード店、サイゼリヤやガストなどのファミレスが中心だ。これらを頻繁に利用する人はポイントが貯まりやすいだろう。対してエムットは30ブランド。コンビニなどに加えて、オーケーやオオゼキ、東急ストアといったスーパーが多く並んでいる。

日常的に利用する近くのスーパーが加盟店に入っていればかなりお得だ。同じ7%でも、スーパーは利用料金が高いぶん、還元されるポイントもそれだけ大きくなる。

2つ目はポイントアップの条件だ。Oliveの条件は「スマホのタッチ決済で支払うこと」。スマホにOliveのクレカを設定し、スマホをかざして決済する。

「エムットは従来どおりクレカの差し込みで7%還元されます。タッチ決済の設定などが苦手な人にはエムットが使いやすいでしょう」

また、エムットの条件には「ポイントがアップする利用額は月5万円まで」というものも。加盟店での利用が月5万円を超えたぶんは通常の0.5%還元となる。「1カ月の食費は5万円以上」という人も多いだろう。だが、そのうち5万円が7%還元になると3千500円相当のポイントがもらえてお得感が大きい。

選ぶ基準の3つ目は、還元率を上げるための仕組みだ。実は、加盟店での還元率は7%を基準として最大20%まで引き上げられる。

Oliveでは、三井住友のクレカを持つ家族を登録すれば1人1%ずつポイント還元率が上がる。だが、2親等以内という条件もあり、最大の+5%は困難かも。ほかにOliveアカウントの契約とアプリログインで+1%、といった簡単な条件もあるが、外貨預金やSBI証券での保有資産額など厳しい条件も多い。

いっぽうのエムットは、ネットバンキングにログインで+1%、年金か給与の受取口座指定で+1%など比較的簡単な条件も多い。

「どちらも最大の20%還元は難しいでしょう。ですが、エムットなら10%程度は十分狙えます。私は現在13%還元。加盟店で5万円利用すれば、6千500円相当のポイントがもらえてお得です」

ただし、ポイントはサービス開始当初の好条件から徐々に改悪されることもある。ポイント規約に変更がないか、定期的に確認を。現金払いではポイントはつかない。物価高から家計を守るためにも、賢くポイ活に励もう!

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