東京都心では猛暑日を10日連続で記録するなど、全国各地で史上もっとも暑くなった今年の夏。この酷暑は、体だけでなく家計にも深刻な影響を与えている。
第一生命経済研究所の主席研究員の柏村祐さんがこう語る。
「異次元の暑さによる農作物の不作や電力需要の急増が呼び水となって、物価高の第2波……“猛暑インフレ”が家計を直撃しています。4人家族でひと月平均2万5千円の負担増に。8~10月の3カ月で支出が7万5千円上がることが見込まれます」
この猛暑インフレによって増える支出のうち、食費が1万5千円を占めている。
「記録的な猛暑や大規模な水害などが全国各地で起きており、野菜の供給量が大きく減少し、とくにトマトやなすなど夏野菜の価格が上昇しています。さらに米の収穫量が落ち込み、今後の新米価格が急騰する可能性も。
また酷暑と飼料価格高騰のダブルパンチで、これまで“家計の味方”だった豚肉や鶏肉、鶏卵の価格も上昇しています」(柏村さん)
この夏に高騰した食品は右下の表のとおり。価格が安定している食材を活用する、スーパーの特売日を狙ったり閉店間際の値下げされた食材を購入したりするなどの食費を抑える対策を。家計を見直して、食材をまとめ買いして冷凍保存して食品ロスを防ぐことも喫緊の防衛術になる。
■電気代負担は4人家族でひと月1万円増に
また猛暑インフレは電気代にも大きな影響を与えている。
「連日の猛暑で、エアコンの稼動時間が増加。4人家族でひと月1万円程度の負担増が見込まれます。
猛暑による物価上昇のダメージを少しでも軽減するためには、これからの残暑を乗り切る、賢い節電術が大切なポイントになる。
節約アドバイザーでファイナンシャルプランナ―の丸山晴美さんがこう語る。
「わが家のエアコンは28度設定の自動運転で24時間つけっぱなし。それでもこの夏の電気代は1万円以内(2人家族)で済んでいます。
フィルターをこまめに掃除する、遮熱レースカーテンで冷気を逃さない、消費電力が抑えられるDCモーター型の扇風機を併用するといった当たり前の節電方法を行っているだけ。
じつは、空調機器メーカーダイキンの調査では、約6割の人がエアコンの節電方法について誤解していることがわかっています。厳しい残暑が続き、まだまだ活躍する機会が多いエアコンの正しい使い方を知ることで快適に乗り切れます」
夏の電気代が気になり、エアコンの風量を「弱」にしたり、こまめにスイッチを切ったりした人も少なくないだろう。
丸山さんが語る。
「風量を調整しないで、エアコンは自動運転にすることでひと月約990円の節電に。また設定温度を1~2度上げて、遮熱カーテン、すだれやグリーンカーテンなどで熱が入ってくる窓の対策を万全にして、設定温度を26度から28度に上げてもひと月1,068円の節約になります。
さらに冷気を攪拌しつつ、風が体にあたるように扇風機を併用することで月930円も電気代を抑えられます。
また1時間ぐらいの外出ではエアコンのスイッチはオンのまま。起動時の消費電力を抑えられ月1,053円の節電に。フィルターをこまめに掃除する(ひと月86円節約)、夕方に室外機周りに打ち水をすることも電気代を抑えるコツ。
もちろん、古い機種を省エネエアコンに買い替えることでもひと月130円電気代を削減できます」
丸山さんがこの夏実践したエアコンの使い方に加え、残暑でも気温が下がる夜間や明け方にはエアコンを切るなどの対策を講じれば、ひと月約740円の節電に。
以上の方法を合わせれば、月4千997円の節電も期待できる。
■湿度を60%ほどにすれば体感温度が4度変わる
残暑を乗り切るテクをさらに丸山さんに紹介してもらおう。
「残暑をもたらすのは、湿った空気をたっぷり含んだ太平洋高気圧が日本を覆うから。つまりは残暑にはとりわけ湿度対策が有効です。
ダイキンの調べで、室内温度が28度でも、湿度を85%から60%ほどにコントロールすれば、体感温度が4度変わることが明らかに。残暑時の除湿にはエアコンの冷房運転が効果的。『弱冷房除湿』(ドライ)よりも冷房のほうが除湿量も多く、消費電力も少なくてすみます」
またリビングや寝室に、湿度の調整力に優れた竹炭や備長炭、湿気を吸収するアロエやサンスベリアなどの観葉植物を置くのも効果的だという。
「1~2Lサイズのペットボトルに水を入れて凍らせたものを置いておくだけでも除湿効果が期待できます。
暑さは続きそうだが、酷暑インフレを賢明なテクで脱却しよう!