9月2日未明に肺炎のため都内の病院で吉行和子さんが逝去したことを、9日に所属事務所「テアトル・ド・ポッシュ」が発表した。享年90。

故人の遺志により、葬儀はすでに近親者のみで済ませたという。

数々の映画やテレビドラマで活躍した吉行さん。‘78年公開の大島渚監督の映画『愛の亡霊』では、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。その後も『3年B組金八先生』(TBS系)シリーズや『ナースのお仕事』(フジテレビ系)シリーズなどに出演。

特に話題を呼んだのが、母で美容師の吉行あぐりさんがモデルとなった‘97年放送のNHK連続テレビ小説『あぐり』。吉行さん本人もヒロインが営む美容院の客役で出演した。

「あぐりさんは日本の美容師の草分けとして知られ、90歳を過ぎても現役を続けました。そのあぐりさんの長男が作家の吉行淳之介さんで、和子さんの妹にあたる吉行理恵さんも作家として活躍。“華麗なる一族”の出身ということもあり、和子さんも気品のある女優さんとして長く活躍をつづけました」(スポーツ紙記者)

幼くして詩人の父・吉行エイスケさんを失っている吉行さんは、‘94年に兄・淳之介さんが70歳で亡くなり、’06年には妹・理恵さんも死去。‘15年には母・あぐりさんが107歳で亡くなってしまう。しかし、吉行さんは“ひとりぼっち”を恐れることはなかった。

《107歳になる母・あぐりを見送り、私はひとりになりました。

母とはずっと同じマンションの別々の部屋で暮らしていて、私がしょっちゅう母の部屋を訪ねていたんです。(中略)と言っても、母を亡くしてすごくショックを受けた、というわけではないんですよ。私にとってひとりであることは、ごく当たり前のことでした》(『婦人公論』‘23年3月号)

「吉行さんは40代のときに都内のマンションを購入し、そこでは母と妹が別々の部屋で暮らしていました。家族の死後も気ままなひとり暮らしを楽しんでいたそうです」(芸能プロ関係者)

吉行さんが亡くなったことが報じられた当日、本誌が自宅マンションを訪れると、なにごともなかったように静かだった。

「和子さんが亡くなった? 今、初めて知りました。最後にお見かけしたのは3月ごろで、ご挨拶しても特にお変わりはありませんでした。ただこの夏はお見かけしていなかったから気にしていたのですが……。

あぐりさんがこの近くで美容室を営んでいましたが、和子さんもここに50年近く住んでいました。ご本人は女優然としたところもなく、プライベートではふつうの方。いつもちゃんとした格好をなさっていました。ただ生活感はなく、スーパーのレジ袋を下げているような姿は一度も見たことありません。

いつもスーッと歩いていて、目立たないようにされていた印象があります。

ひっそりと暮らし、ひっそりと亡くなったということでしょうか……。とても残念です」(近所の人)

インタビューでは数年前からの“終活”も告白している。

《もし私が死んでも遺品整理なんかでご迷惑をかけることは、たぶんない。だけど、死んだ後に誰にもみつけてもらえなかったらそうしようって、今はそれだけが心配。自分の身体は事前に処分するわけにもいきませんからね》(『週刊新潮』‘23年1月)

来年公開予定の映画『あなたの息子ひき出します!』にも出演予定だったという。吉行さんのご冥福を祈りたい。

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