「本年の5月15日に私は90歳になりました。昭和10年生まれですから、昭和は100年、私は90年ということになります。
そう語るのは、今年90歳を迎えた美輪明宏さん。節目の年にあたり、未来を担う世代へ向けたメッセージ本『令和を生きぬく貴方たちへ 未来世代が輝くミワちゃま語り20』を出版した。
美輪さんは私たちが生きるいまの現代を「何かと不寛容で不確実」と表現する。そんな時代だからこそ、自らの人生の経験を、しなやかに生きるヒントとして役立ててほしいという願いが新刊には込められている。
美輪さんのメッセージのなかから、“取り越し苦労ばかりの自分から脱却するための鉄則”を紹介する――。
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私は音楽会や舞台でお会いしたファンの方々に「美輪さん、パワーをください」と言われることが多くあります。そんなときには、何て答えると思いますか?
私はひと言「あげません!」って言います(笑)。そして、こう付け加えます。「くださいくださいだけじゃなくて、あげます、あげますと言いなさいな」ってアドバイスするのです。
たとえどんなに落ち込んでいても、「誰かにこうしてあげたいな、あの人にこんなことをしてあげたいな」と思うことで、ジワーっと水が染み出してくるように体の中からパワーが湧いてくるのです。そうすると他人にもらわなくても、自前でいつもパワーが満たされます。
生きるうえでよくないことは、取り越し苦労です。現代人の多くは悩みを抱え、将来に対して不安を感じています。さらにメディアから悪いニュースばかりが流れてくるものですから、もっと不安になる。経済的にも精神的にも暗い気持ちになり、希望や理想といった明るい未来については考えられないようになっていきます。
でも、そんな取り越し苦労をする必要はありません。いろいろ考えたところで、どうにかなるものではないでしょう?どうすればいいのか、開き直ればいいのです。簡単でしょ?
将来の不安に慄き、自分ではどうにもならないことばかりを考えている人は、自らの人生を暗くしているだけです。自分で自分の首を絞めて「苦しい、苦しい」と言っているのと同じですから。
だから、その手をすぐに離せばいい。そして、明るい未来を、夢や希望をたくさん思い描くのです。
どうしてもそんな夢を描けないという人は、焦る必要はありません。ゆっくりあなたの夢を探してください。
そして、その間に誰かの夢をかなえるお手伝いをすればいいのです。「あの人の夢をかなえたい!」あなたがそう考えることで、実はあなた自身の夢も実現に近づいているのです。
風の間に間に波の間に間に。人生はなるようにしかならない。ケセラセラでいいのです。
『令和を生きぬく貴方たちへ 未来世代が輝くミワちゃま語り20』(光文社)より抜粋