毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」。はがきの中身を見ないで捨ててしまうという人は要注意。
「日本年金機構から送られてくるねんきん定期便(以下、定期便)は、50歳未満はその時点の加入歴に応じた年金額が、50歳以上は実際に受け取れる年金の見込額が載っています。この定期便をしっかり確認しなければ、本来もらえるはずの年金が減ってしまうことも。
というのも、2007年に持ち主がわからない年金納付記録が約5000万件あることが発覚した『消えた年金』が社会問題に。もはや解決済みと思っている人が少なくありませんが、実は、今年3月時点でも1676万件の持ち主不明の記録が残っており、そこに紛れている可能性があるのです」
年金記録が行方不明になっているのは、1996年12月以前に公的年金に加入した人で、結婚や離婚で姓の変更があったり、転職が多かったりする人だという。
「とくに50代の女性は、寿退社が当然だった時代を過ごし、結婚後は姓が変わり、その後、さまざまな職についている人も。年金記録をデジタル化した際に、名前の読み方や勤め先を間違えられているケースが少なくありません。
実際、相談に来られた50代の女性で、結婚前の旧姓のときの年金記録が見つかり、年間の受給額43万円が、154万円に増えたこともありました」
定期便を確認しなかったら、本来支給される月9万2500円分がないまま老後を過ごすことになっていた可能性がある。また転職経験がある人で、若いころに勤めていた記録が見つかり年金が98万円から234万円に増えたケースも。
「年金額は、年金が支払われたら確定され、5年過ぎると時効となり、申し立てが無効になることもあります。国任せにしないで、定期便を自分で確認して“誤り”を見つけることが重要です」
■平均的な年金額と自分の見込み額を比べて
定期便には、はがきで届く以外に、35歳、45歳、59歳には過去の勤務先や支払った保険料などが載っている封書タイプも届く。
また日本年金機構の「ねんきんネット」で加入履歴や将来の年金額の試算も可能だが、今回はもっとも身近なはがきタイプの定期便の正しい見方を教えてもらった。
「最初にチェックしてほしいのが、裏に書かれている『これまでの年金加入期間』。国民年金や、第3号、会社員、公務員などの厚生年金に加入した月数に間違いがないかを確認します。また『受給資格期間』は、60歳までで480カ月になると満額受給。保険料を払い続けているのに、480カ月に足りない場合は、記録が消えている可能性があるので、年金事務所に相談に行ってください。
未払い期間があり480カ月に満たない場合は、60歳以降も国民年金に任意加入する、また会社で働いている場合は、上限はありますが、厚生年金が自動的に未納期間を埋め合わせてくれます」
1985年に厚生年金の受給開始が60歳から65歳に段階的に引き上げられた際、現役世代への影響を少なくするために“つなぎ”として新設されたのが「特別支給の老齢厚生年金」。ここに記載があったら受給手続きを行おう。「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」のチェックも忘れずに。
「60歳まで保険料を払った前提で、老齢基礎年金(国民年金)は未納期間がなければ80万円前後。また老齢厚生年金はずっと会社員だった男性の平均が月平均10万円前後。フルタイムの正社員で働いてきた女性は、見込み額120万円を目安に、少なすぎる場合は年金事務所に確認しましょう」
定期便の正しい見方を知って、正しい年金額を受け取ろう。