天皇陛下はイエローのネクタイ、雅子さまはダークイエローのセットアップ。9月18日、リンクコーデで足を運ばれたのは、東京都内にある国連機関の一つ、国際連合大学だ。
「両陛下は国連大学の創立50周年を記念する式典に臨み、デンマーク、ガーナなど14カ国の大学院生と英語で懇談されていました。
以前から両陛下はご公務以外でも、講義やシンポジウムの聴講などで同大に足を運ばれています。お務めを通じて世界の諸問題にどのように貢献していくのか……この日のご様子からは、改めてお志を振り返るようなお気持ちもお見受けしました」(皇室担当記者)
だが、陛下と雅子さまのお志をよそに、皇室の未来に立ち込める暗雲は広がるばかりだと、宮内庁関係者は嘆息する。
「9月11日に、宮内庁の西村泰彦長官は定例の記者会見で、皇族数の減少について『大変危機感を持っている』『国会における議論が進展することを望んでいる』などと発言しました。
悠仁さまが成年式を終え、皇室は戦後初めて、未成年の皇族がいない状態になりました。にもかかわらず、長く継続してきた皇族数確保のための制度改正に向けた国会の議論は、一向に進んでいません。長官は、両陛下のご様子などを拝察しながら発言しています。危機感のない政界の動きには、皇室の方々もそろって不安をお感じになっているはずです」
前国会まで皇族数の確保策を巡る議論は、結婚後の女性皇族の身分保持、旧宮家に連なる男系男子の養子縁組の2案を軸に進められてきた。だが、議論をリードしてきた自民党と立憲民主党が「女性皇族が結婚した夫とその子供に皇族の身分を認めるか」という論点で対立を深め、その隔たりが埋まらないまま、結論は先送りに……。
その後参院選で与党が敗北、石破茂首相が辞意表明に追い込まれ、いまや永田町の関心は22日に告示された自民党総裁選一色となってしまった。
■「人格否定発言」の衝撃が再び……
秋の臨時国会では、状況はさらに混迷の度合いを増すと、全国紙政治部デスクは語る。
「自民党以上に保守色を鮮明にする参政党が参院選で躍進したこともあり、国会での議論の決着はいっそう不透明な情勢となりました。
ただ、どの候補者が総裁となっても、少数与党となった政権運営のために、強硬な保守層の支持をつなぎとめる必要性があります。皇室の課題に対する自民党のスタンスは、これまで以上に柔軟さがなくなっていくとみられています」
総裁選の多数派工作や国会での勢力維持に明け暮れる自民党が無視し続ける皇室の危機。神道学者で皇室研究家の高森明勅さんは、次のように懸念を示す。
「2005年の小泉政権下で設けられた有識者会議が女性・女系天皇を容認する報告書を示してから20年がたちました。しかし皇族数減少や安定した皇統を維持するための本質的な解決策について、国会の議論は何度も振り出しに戻りながら、1ミリも進展していません。
2016年8月に上皇陛下がご退位の意向を示されたビデオメッセージは、決して望まれたことではなかったものの、数少ない選択肢として行われ、そのお気持ちを国民は受け止め、政治が動かざるをえない状況を作り出しました。
あのときと同じように、政治による問題解決の先送りがこれ以上続けば、『再び天皇陛下によるおことばがなければ、政治は動かせないのか』という憤りの声が国民から上がりかねないほど、危機的な状況ともいえるのです」
現在の皇室典範では、愛子さまや佳子さまといった女性皇族は、結婚によって皇籍を離れられることになる。だが国会の議論しだいでは、皇族方の人生の選択肢も大きく変わるのだ。
前出の宮内庁関係者が想起するのは、陛下が皇太子時代の2004年5月に、突如述べられた「人格否定発言」だとし、こう続ける。
「陛下は欧州歴訪前の記者会見で、《それまでの雅子のキャリアや、そのことに基づいた雅子の人格を否定するような動きがあったことも事実です》と述べられ、国内外に衝撃が走りました。
お世継ぎへのプレッシャーを受け続け、この当時の雅子さまはご体調を崩されてお務めもままならず、当時の皇太子家は厳しいお立場にあったのです。
お立場が憲法で定められているばかりでなく、国会で与野党が対立している問題に対して意見を表明されることは、陛下のご性格からしても考えにくいでしょう。しかし陛下の、“愛子や女性皇族の未来を守らねば”というお気持ちは非常に強いものがあると拝察しています。皇族数を確保する方策すら放置され続ければ、人生二度目となるご決断を下さざるをえないとも限らないのです」
国民の幸せ、世界の平和を希求する皇室を未来へとつないでいくため、お務めに臨まれている天皇陛下。政治家たちが反省し、皇室を守るために議論を決着させることを、陛下は待ち望まれている。