ついに新米が店頭に並ぶ季節がやってきた。スーパーでの小売価格が5キロ4千円を超えるのが日常になるなど、異常な米価の高騰に苦しめられた2025年。
しかし、9月8日~14日までの1週間に販売された米の平均価格は、前週より120円値上がりして4275円に。新米の流通が価格低下につながっていないのが現状だ。今年は梅雨明けが全国的に早く、異常な暑さにも苦しめられた。流通経済研究所主席研究員の折笠俊輔さんはこう話す。
「極端な気象の影響もあり、米の生産の見通しはかなり厳しくなっていました。特に、稲の穂が出てくるタイミングで、東北など東日本で水不足になったので、粒が小さくなっている恐れがあります」
やはり、おいしい新米は貴重品になる可能性が高い。今後、米はどうなるのか。専門家に聞いた。
■新米の出来がよい地域は?
五ツ星お米マイスターでごはんソムリエの澁谷梨絵さんは水不足が騒がれた今年の夏に比較的水が豊富だった関東や、東北でも一部の地域の出来はよさそうだと話す。
「少雨だった西日本や北陸、猛暑が続いた北海道は例年にない厳しい状況と聞いています」
■こしひかりなど従来の銘柄米の今年の特徴は?
「昔から作られている品種の銘柄米は、今年のような外気温が40度近くまで上がるような暑さに耐えられないので厳しいと思います」(澁谷さん)
暑さへの耐性があまりない、昔ながらの銘柄米品種は今年、高温障害の出る恐れがあるという。
「高温の影響を受けると、お米が濁った白っぽい色になり、もろく割れやすくなることも。
■米増産で新米価格は下がる?
小泉進次郎農林水産大臣は米増産を指示したが……。
「今年の新米は作付けが終わっていて影響はありません」(折笠さん)
ただし、令和8年産以降はこの政策が価格に影響する可能性があるというので、注視しよう。
■新米が出回ると古米の価格は下がる?
一般的な年は新米が出ると、前年産の古米は半額以下で売られることもあるというが……。
「今年に限って言えば、米騒動をきっかけに備蓄米を食べてみて、古米でもおいしく食べられることに気づいた消費者は多いと思います。それに加え新米価格が高めになれば、古米でも十分においしいという人が新米ではなく古米を選ぶと需要が上がり、古米価格は例年のように下がらない可能性も」(折笠さん)
■スーパーなどでの新米の選び方は?
米作りをしていた親戚の手伝いで田植えや稲刈りなどの経験があり、米作りにも精通する管理栄養士の大槻万須美さんによると、チェックすべきポイントは3つあるという。1点目は一括表示欄だ。
「一括表示欄とは、米袋に表示が義務付けられている米の品質に関する項目をまとめた部分のこと。そのなかに単一原料米、あるいは複数原料米と書かれているところがあります。単一原料米は1種類の品種が入っているが、複数原料米であればお気に入り以外のお米も入っている可能性があるのでチェックを」(大槻さん、以下同)
2点目は精米時期の確認。
「精米後は徐々に品質が劣化していきます。いつごろ精米されたものかを確認しましょう」
3点目は米袋にある小窓から米粒の状態を見ることだという。
「小窓の部分から、濁ったような色や変色したお米、割れたお米が入っていないか、米粒が割れて粉っぽくなった部分が小窓などについていないかを確認するといいですね」
■新米を安く買う方法は?
高値になりそうな新米だが、安く買う方法はいくつかあるという。
「1点目はまとめ買いです。単価が下がることもあるのでお得になります」(大槻さん、以下同)
ただし、精米から1カ月以内を目安に食べきれる量を購入し、正しく保存しないと鮮度が落ちる。
「2点目は定期購入の活用。定期的にお米が届き、鮮度もよく特別価格で購入できる点で人気です」
ただし銘柄変更が難しい、手続きが面倒というデメリットも。 3点目は農家直送や、ふるさと納税の活用だ。
「生産者本人と直接契約をする農家直送や、ふるさと納税の活用も人気が高いですね。農家直送は中間コストがかからず、産地を選ぶ楽しみも味わえます」
この場合もデメリットはある。
「農家直送は送料が高い場合もあり、やめる際には気を使います。ふるさと納税はすぐ届かないこともあります」
また農家と直接契約をするECサイトから購入する方法もある。農家とのやり取りはハードルが高い場合、検討してもよさそうだ。ただし、信頼できるサイトかどうかをきちんと見極めて利用しよう。
「タイミングがよければ直売所や道の駅など、産地に近い場所だと安く手に入れられることも」
今年は特に新米が高いといわれているので、食べ方を工夫して。
「昔と違い、保管技術も進歩して古米でも十分においしい時代。そこで新米を購入したらまず新米だけでおいしくいただき、その後少しずつ古米と混ぜてみては。費用を抑えつつ、新米感も楽しめます」
■今注目されている新米のブランドは?
厳しい気象となった今年。そのなかで澁谷さんが注目しているのは2つのブランド。一つ目は、コシヒカリの地位を確立させた新潟県から誕生した「新之助」。
「大粒で甘味やうま味が強く、しっかりとした食感。コシヒカリとはまったく違う、新時代を感じさせるお米です」(澁谷さん、以下同)
もう一つは、栃木県から誕生した「とちぎの星」だ。
「大粒で炊いた後の粒はとてもふっくら。炊いた直後は弾力がありますが、冷めるともちっとした食感に変化。冷めてもおいしいです。暑さだけでなく、寒さにも強い珍しい品種。こちらも新時代を感じさせるという点で注目です」
■将来、輸入米で新米の価格は下がるの?
「米国からの輸入米には高い関税がかけられていますが、5キロの現在の価格相場は3500円程度。
備蓄米が底をつき、新米が高値の場合、備蓄米と同等程度の価格帯の米はなくなってしまう。
「そのときに買いやすい価格帯の米として輸入米の需要は高まるのでは。輸入米が入ってきても新米の価格に影響しませんが、新米の価格や売れ行き次第で、輸入米の価格に影響を与える可能性はありますね」