「台所で家事をしたり、洗濯物を干したりするとき、おなかをギュッとへこませながら作業する。いつもの動作を少し変えるだけで、無理なくやせることができます」
そう話すのは、健康運動指導士の植森美緒さん。
「私自身、食事制限もきつい運動もせず“やせる日常動作”だけで30年間も体形を維持できています。それもそのはず、生活動作を工夫することによる消費カロリー量を計算すると、ジョギングを毎日30分しているのと同じくらいあるんです」(植森さん、以下同)
植森さんは20代のころ、1年で7kgのダイエットに成功。さらにそこからリバウンドもせず、59歳にしてウエスト58cmを30年以上キープしているという。
「秘訣は、いろいろな動きでおなかをへこませること。家事は、そのままやるだけでも意外に運動量があり、少しの工夫で運動効果が期待できます」
たとえば、「ドローイン歩行」。背筋を伸ばしておなかを大きくへこませた状態で歩くことで、消費カロリーが1.4倍になるという。
長年行ってきた植森さんほどになれば長時間大きくへこませることが可能だが、慣れるまではコツがいりそうだ。そこで、まずは家事の間だけでも意識する“家事トレ”にするのがおすすめだという。
でも、おなかに力を入れるなら、おなかしか効果がないのでは?
「おなかと背中の筋肉の動きは全身と連動しています。
さらに、中高年が気にする部位の代表格である、二の腕の裏側や下っ腹。ここがたるんでいるのは、ふだんの生活であまり使わない筋肉だから。家事で意識して使うと、効果を必ず実感できると思います」
今回は、ふだんの家事ついでにできるながらトレーニングを5つ教えてもらった(イラスト参照)。まずは太もも、おなかなど、気になる部位の家事トレからトライ! 習慣にしていくことで、かなりの消費カロリーが積み重なり、全身くまなくやせられる。
まずは台所での洗い物だ。お尻を締め、かかとを浮かせて立ってみよう。
「流し台におなかをつけるので、ほかの家事トレより楽ちんかも。だけど、効果はバツグン。テレビを見たり、家族と話をしながらでもできますよ」
■電子レンジ待ちの「背中トレ」が特に大事!
さらに、レンチン待ちの時間は絶好のトレーニングチャンス!
背中のトレーニングは、年齢を重ねるほど大切だ。
「背中を反らす動きをしないと、年とともに背中や腰が丸くなります。背中の筋肉を刺激することで、筋力強化につながります。
ただし無理はせず、腰に不安がある場合は、腰に手を当てながら行ってください」
消費カロリーが少なくても、引き締め効果は絶大だ。そして、風呂掃除。体を大きく動かすのでただでさえ大変だが、前傾姿勢のまま腹圧を意識!
「もう少し頑張れそうなら、息を止めない程度におなかに最大限の力を入れて。毎日続ければ、脂肪をじわじわ燃やすことができて、腹筋運動よりも効きます」
掃除機をかけるときは、太ももやせの大チャンス。
「ポイントは、足を大きく前に踏み出して重心をかけ、次に踏み出した足に重心を移動させること。上半身をぐらつかせないことが大切です」
洗濯物を干すときは、しわを伸ばしながら、しっかり腕を使って行おう。
「しわを伸ばす動作には、二の腕やせのポイントがあります。片方の脇をしっかり締めながら、伸ばしたほうの腕の裏の筋肉を刺激して。服がピンと伸びるので、アイロンがけの手間を減らせます」
家事トレの基本メソッドは、植森さんのダイエット講座などで4万人が実践。多くの中高年女性が、体形を変えてきた。
「筋肉には形状記憶する性質があるんです。おなかがへこんだ形を一時的に記憶するため、90分の講習会で私が直接指導した人の中には、ウエストが10cm以上減る人も珍しくありません。最高19cmサイズダウンした方もいます。その後何もしなければ戻ってしまいますが、見た目にすぐに効果が現れることでモチベーションは上がります。時間のかかる運動と違って、自分のペースでいつでもどこでも行えるのが何よりの利点です」
1回30秒でも1日2回やれば、1年で365分=6時間もトレーニングしたことに! このチリツモが、体形チェンジ、キープに大きく貢献してくれるのだ。
「家事以外の日常動作なら、トイレの時間も使いやすいです。私はトイレの中でフェースエクササイズをすることに決めていて、“便器に座ったらやる”ルールを設けています。ドアの裏に鏡を置けば、自分の顔が映りスイッチが入りやすいですよ」
日々の家事トレで、ちゃっかりカロリー消費量を増やして、ぜい肉のたるみとは無縁の引き締まった体を目指そう。