9月21日、大盛況のうちに幕を閉じた「東京2025 世界陸上」。日本をはじめ各国の代表選手の活躍が各メディアやSNSでも話題になるなか、ある外国人選手の“場外”での振る舞いが物議を醸している。
その選手とは、女子投てき(円盤投げ)カメルーン代表のノラ・モニー選手(28)だ。9月2日に更新したインスタグラムで、本大会への出場を報告し、開幕前日の12日には日本国内のトレーニング施設で入念に調整する様子を投稿していた。そして、問題視されているのは、25日の投稿だ。
この投稿で、ノラ選手は《ポケモンのようにメトロカードを集めている。“ノラおばさんは東京で何をしてきたの”と聞かれるのが待ち遠しい。何かを投げたり、捕まえたり…。ちょっとしたメトロの体操…。すべてが楽しい旅だった》(原文は英語)と綴るとともに、日本の電車内でシートに座る自身の写真や、同行者が撮影した動画を公開。
動画の中で、ノラ選手は他の乗客がいないガラガラの車両のつり革を吊るした左右2本のバーを鉄棒のように扱い、体を回転させたり、うんていを進むように前後に動いていた。なお、投稿には撮影者としてカメルーン男子短距離選手のアカウントがタグ付けされていたが、その他の同行者も含め、彼らがノラ選手の行動を止める様子はなかった。
これこそが、ノラ選手の言う“ちょっとしたメトロの体操”なのだろう。ただ、Xでは28日頃からノラ選手の振る舞いが“迷惑行為”として拡散。
《影響力を考えてほしい。国を代表して来られた選手なら、恥ずかしい行為はしないでほしい。日本のルールやマナーを守ってください。他の外国人の旅行者にも悪影響で迷惑です》
《あなたの国では、公共の電車内でアスレチックをするのが常識なのでしょうか。少なくとも日本ではこのようなことは迷惑行為に他なりません》
《日本に来るなら、日本のルールを勉強して守ってください。ルールを守れない人は日本には来ないでください。迷惑です。こんなことする人、日本には誰もいません》
《日本では、電車は遊ぶ場所ではない。あなたの行動はモラルに欠けているし、見ていて不愉快です》
今大会をめぐっては、英代表で短距離のトビー・ハリーズ選手(26)が試合後に京都旅行や大相撲を観戦したり、“眠り姫”として一躍人気を博したウクライナ代表で走高跳びのヤロスラワ・マフチフ選手(24)が東京を観光したりと、訪れた外国人選手が日本の各スポットを満喫する様子も見られた。こうした光景は国際大会の魅力でもあり、SNSでは日本人から喜びの声が上がっているのだが、そんななかで、ノラ選手による今回の振る舞いは悪目立ちしてしまったかたちだ。
そして、ノラ選手は9月30日にインスタグラムを更新し、日本語で《大変申し訳ありません》と謝罪。
そのうえで、《日本の文化を軽んじる意図はありませんでしたが、今となっては、それでも私が与えた影響や悪いお手本が消えることはないと、わかっています。本当に申し訳なく思っています》と釈明。《今後は自分の行動に気を配るようにします》とも綴り、《今回の件から学び、成長する機会を与えてくださったことに感謝します》などと述べた。
問題の投稿も同日までに削除されていたが、鉄道会社は今回の騒動をどう捉えているのか。ノラ選手の投稿は、JR東日本・埼京線車内で撮影されたものと見られるが、本誌が30日に同社に対して問い合わせたところ、担当者は投稿を把握しているものの、写真や動画からは、現状、同社の車両であるかは判断できないとコメント。その上で、以下のように話した。
「他の乗客の方がいらっしゃらない場合でも、適切でないご乗車の方法はおやめいただきたいと思います。(迷惑行為などを見かけたら)駅係員や、駅を巡回しているガードマンにお声がけください」
また、埼京線は、大崎駅~新木場駅の区間で東京臨海高速鉄道の「りんかい線」と直通運転を実施している。ノラ選手の投稿は、大崎駅で停車中に撮影されたと見られるが、同社の担当者は本誌の取材にこう明かした。
「あくまでも我々の見解ですが、投稿は大崎駅で停車中に撮影されたものと考えております。その場合、JR東日本様の管轄で撮影されたということになるのですが、一方で、我々の管轄(新木場方面)に向かおうとする車両でもあります。
そのうえで、もし我々が(ノラ選手の行動を)見かけたり、お客様からご報告を受けたりした場合は、車両に他の乗客がいない場合であっても、当然ご注意はさせていただいておりました。あくまでも推測ですが、発車した後で、(ノラ選手の行動が)他のお客様に迷惑をかける可能性がありましたから。また、我々としては、世界陸上の期間は特に警備警戒に力を入れていたのですが、今回の件はその矢先に起こった事例でもあります。
社内ではこのような事例を常に共有しているのですが、今回の件も新たな事例として共有いたします。また、海外の方にも多くご乗車いただいている状況で、日頃から様々な言語でご案内させていただいておりますが、今回の件を受けて、(乗車マナーなどが)より一層、海外の方にも伝わるようにしなければいけないと考えております」