「10月27日にマレーシアから来日したトランプ大統領は、天皇陛下と会見し、28日には高市早苗首相と昼食会、拉致被害者家族との面会、米軍横須賀基地視察などに臨み、29日には早々に韓国へ。

トランプ氏は歴代最高齢(78歳7カ月)で大統領に就任し、健康不安も囁かれましたが、ホワイトハウスは最近も『並外れて健康』と発表しています」(全国紙記者)

“馬車馬発言”の高市首相も驚く、世界でもっとも多忙なリーダーだが、そのバイタリティの源泉と健康の秘訣はどこにあるのだろうか。

過去の発言や資料をもとに、立川パークスクリニック(東京都)院長の内科医・久住英二さんに分析してもらった。

「身長190cm超え、体重100kg超えの79歳は、日本ではほとんど見ることはありませんが……。BMIは28、米国人の平均値です。米国において、太りすぎと見られることはないでしょう。

ただし、BMIだけで肥満か否かを判定するのは不可能で、メタボ判定には腹囲も重要な指標。世界的には身長の半分が目安といわれています。トランプ氏の正確な腹囲はわかりませんが、だいぶおなかが出ているので肥満体形です」

そのためだろうか、基礎疾患には高コレステロール血症がある。

「日本人でも中年期以降に多く見られる、悪玉コレステロールが増える病気で、心筋梗塞のリスク要因になります」(久住さん、以下同)

もう一つの持病・慢性静脈不全は足がむくむ症状があるが、軽症であれば治療の必要はないという。今年、ホワイトハウスはトランプ氏が高コレステロール血症を薬で治療していることを発表。’18年には男性型脱毛症の治療薬を服用していると公表した。

「男性ホルモンの働きを抑えるため、勃起不全が生じる可能性が指摘されますが、私が診た患者さんでそういった副作用に悩まされた人はいません」

トランプ氏の生活習慣に目を向けると、飲酒も喫煙もしないことが目に留まる。飲酒に関しては、実兄をアルコール依存症で亡くした過去も影響しているとされる。

「酒はかつて適量なら百薬の長と言われ、リラックス効果により1日2合までなら心疾患リスクが下がるとされていました。近年、がんに関しては、酒に適量はなく、少量であっても飲んだ分だけリスクが高まると考えられています。飲酒や喫煙をしないことは、健康上の大きなメリットです」

ところが、食生活に目を移すと一転、不健康そのものなのだ。今年、トランプ氏が4年ぶりに大統領に返り咲いた際、ホワイトハウスの執務机に“赤いボタン”が復活。このボタンを押すと、冷えたダイエットコークが運ばれてくるほどのコーラ好き。1日12本飲むといわれたこともある。

「砂糖を使用した清涼飲料水と異なり、血糖値を上げることはありません。ただし人工甘味料の取りすぎによる健康リスクは複数の論文で報告されています」

人工甘味料は肥満を誘発し、心血管疾患のリスクを高める。発がん性をも示唆する研究結果があるなか、今年発表されたのは認知症に関するレポートだ。人工甘味料の1日の摂取量を3つのグループに分けた、ブラジル・サンパウロ大学の研究では、摂取量が最も少ないグループに比べ、最も多いグループの認知機能の低下速度は62%速かったという。

スナック菓子のトルティーヤ・チップスもトランプ氏の好物。

「スナック菓子は脂質と糖質が多く、血糖値上昇や肥満、脂肪肝の原因となります。

特にトルティーヤ・チップスは味が濃いので、塩分も多めです。スナック菓子など超加工食品(脂質や糖質、添加物を用いて過度に加工された食品)は、米国人の摂取カロリーの半分以上を占めるといわれています」

フランスの調査では、超加工食品の摂取量が10%増えると、全がんリスクが12%、乳がんリスクが11%上がるという結果が出ている。

おやつばかりでなく、トランプ氏の肉中心の食事も要注意。第1次トランプ政権発足時には、ホワイトハウスのシェフに「味をマクドナルドに寄せるように」と指示するほどファストフードが好物。

ステーキも好むが、潔癖症の性格もあって、焼き方は焦げ目のついたウェルダン。それにケチャップをかけて食べるのが定番だ。

「50代以上の男性は、男性ホルモンの分泌が低下してタンパク質が失われやすくなるので、肉を食べることは推奨されます。しかしハンバーガーの場合は動物性油脂が多く、同時にパンという炭水化物を食べるのでエネルギーの取りすぎです。余剰エネルギーは脂肪となって貯蔵されるため、肥満や動脈硬化を引き起こします。エネルギー量を減らし、付け合わせに野菜を取るなど、バランスに気をつけることが大切です」

また、ステーキの焼き加減も、レアやミディアムより、トランプ氏が好むウェルダンにした場合のほうが老化を加速させるAGEsという物質が多く発生すると、マウントサイナイ医科大学の研究論文で報告されている。AGEsは、アルツハイマー型認知症の原因ともいわれる脳内に蓄積されるアミロイドβにも多く含まれているのだという。

不健康そのものの食生活だが、趣味がゴルフというのは健康的だろう。

今年4月、世界経済を震撼させた「相互関税」の発表直後にも、トランプ氏が3日間連続でゴルフ場に足を運んだことが報じられるほどの愛好者だ。スウェーデンの科学誌に発表された調査によると、ゴルフをする人は死亡率が40%減少し、寿命が約5年延びるのだという。

「運動強度が高くはないので、高齢であっても続けやすく、健康的だといえます」

そして、睡眠時間は若いころから変わらずいまなお3~4時間というトランプ氏。だが、このような生活習慣は「決してマネしないでください」と久住さんは言う。

「ここまで見ただけでも、認知症やがん、動脈硬化のリスクとなる要素がいくつも挙げられます。普通の人なら不健康そのものの生活なのに“並外れて健康”なのは、特異な例といえるでしょう。周囲の言うことを聞かずに、自分の意見を押し通す、鋼のメンタルも、それをかなえている要因のひとつなのかもしれません」

「元気の源はMAGA(=米国を再び偉大に、のスローガン)」と豪語するトランプ氏。ストレスフリーの“やりたい放題”で、世界中の人々の心臓に悪い影響をおよぼすのはほどほどにしてもらいたいところだが……。

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