「目は光を取り込むという役割があります。ほかの臓器が皮膚を除き、外部の刺激から守られているのに対して、目だけは“むき出し”です。

そのため、強い光や手でこするなどのダメージを直接受けてしまうのです。とくにスマホの光など“目の外敵”に囲まれている今は、目の健康を保つ対策を講じる必要があります」

そう話すのは、世界的に著名な眼科外科医で深作眼科院長の深作秀春先生。食生活の乱れ、環境汚染、スマホの光など、現代の生活は目に大きな負担をかけ、その機能寿命を縮めている。“むき出しの臓器”である目は、外からの衝撃に弱い。とくに現代社会は目を酷使するものに囲まれている。日々増えていく目への負担を少しでも減らすため、避けるべき行動にはどんなものがあるのか、深作先生に解説してもらった――。

【1】目をこする

目はとてもやわらかく繊細な組織。こするだけでも目には大きな衝撃を与える。とくに花粉症やアトピー性皮膚炎のかゆみで目を強くこすると角膜や水晶体、網膜に力が加わり白内障や網膜剥離、網膜裂孔、円錐角膜(角膜の変形)を起こすことも。また強度近視があると網膜周辺部が伸びて薄くなっているため少し目をこするだけでも網膜剥離に。1回の刺激は少なくても頻繁にこするとダメージが蓄積。目は弱い豆腐のように優しく扱おう。

【2】長時間の下向き作業

パソコンを使ったデスクワーク、読書などで下向き作業を長時間続けると、視力を調節する毛様体筋が緊張し続け、視界がかすんだり、遠くが見えなくなる不調が出る。頭痛や肩こりを伴うことも。下向き作業が日常的に続くと近視や乱視に加え、疲れが取れない、やる気が出ないなど全身の不調も。一定間隔で遠くの山やビル、室内にいるなら6m以上先をボーッと見て目を休める“目の休息タイム”を設けよう。

【3】強い光を浴びる

虹彩の色が濃い日本人はまぶしさに強いが、紫外線が目に及ぼす悪影響は軽視できない。紫外線による白内障や加齢黄斑変性を防ぐためにも黄色か薄茶色のサングラスを適切につけよう。パソコン、スマホ、テレビなどのLEDライトが発するブルーライトにも要注意。強い光が網膜の奥まで届いて黄斑部(光が像を結ぶ部分)を傷つける。スマホやパソコンの使用時間を短くしたり、ブルーライトカットグッズを活用して網膜への刺激を減らそう。

【4】目を洗う

目を防御する涙は、油層・水層・ムチン層の3層で角膜の透明性と平滑性をキープしている。目を洗うと、むき出しの目を守っている涙を流してしまうことに。学校のプール授業の後の洗眼は今や非常識。

ゴミや薬物が入ったとき以外は、目を洗うことは絶対にやめよう。花粉症で目のかゆみがあるときに「洗眼液」を使う人もいるが、大切な涙を洗い流し、無菌とは言えない水道水や洗眼液で洗うことで、角膜障害をきたし、細菌感染のリスクさえある。

【5】スマホの長時間使用

至近距離からブルーライトが網膜を直撃する影響に加えて、まばたきの回数が激減してドライアイになる。近くばかり見てしまうため視力調整筋が緊張し続けて疲れ目にもなる。さらにのぞき込む姿勢で首の血管や神経を圧迫するなど、スマホの長時間使用はさまざまな不調の引き金に。1日2時間以内、なるべく目から離すなどルールをつくって、正しくスマホと付き合うこと。ブルーライトカットメガネやスクリーンフィルターなどの対策も。

【6】危険な眼トレ

世にあふれる“目の簡単な健康法”は医学的に効果のないものもある。眼球を激しく動かす「体操」は、激しく眼球を動かすことで目の大部分を占める硝子体が揺れ網膜剥離を招くこともある。無理に目を動かすことはそもそもNG。3Dアートを見ると目がよくなるというのは嘘情報だ。特殊な模様や風景写真を見ると目がよくなることもない。

裏付けのない目の健康法に飛びつくと目の健康を損なうことも。

目に優しい生活習慣を実践し、100年見える目でいよう。

編集部おすすめ