昨今、各動画プラットフォーム上で増えているライブ配信。配信者と密にコミュニケーションが取れたり、“投げ銭”で直接支援することもでき人気を博しているが、トラブルになることも――。

先日、あるライブ配信プラットフォーム上で行われたライブ配信で、動画配信者の男性と動画に映り込んだ通行人のトラブルがSNS上で波紋を呼んでいる。

ライブ配信時は同時接続者数1000人程だった配信中、都内の繁華街にある駅前で座りながら配信者の男性が視聴者に語りかけていたところ、背後の駅の方から1人の男性が歩いて近づいてくる。男性は通り過ぎて画面からは見切れるも、画面にうつらない場所で配信者の男性に話しかけ、自身の姿を映さないよう怒った様子で要求。

しかし、配信者の男性は、あくまで自身は“ライブ配信をしていただけ”と、意図的に映したわけではないと反論し、応じようとしない。この対応に映り込んだ男性もヒートアップし、激しい言葉の応酬が続き、最終的にもみ合いに。

結果的に両者の主張は並行線をたどり、2人で交番に行き警察が間をとりなす事態となっていた。この一連の様子をおさめた切り抜き動画がXで拡散することとなり、大きな話題となった。

あくまでライブ配信をしていただけで“意図的”に映したわけではないので、映像を消す必要はないという配信者の男性と、意図の有無は関わらず消してほしいと訴える男性の言い分。

確かに、昨今ライブ配信を行う人は増えており、道を歩いているだけでも自身の姿が意図せず全世界に配信されてしまう可能性は誰しもある。果たして、こうした場合法律上はどういう扱いになるのか。

知的財産に詳しい弁護士法人松本総合法律事務所の松本賢人弁護士に、ライブ配信に一般人が写ってしまったときの権利問題について解説してもらった。

「肖像権侵害が問題になるだろうと思いますが、そもそも今回の映り込みが法的に侵害といえるか微妙なように思います。

肖像権侵害があり得るとしても公の場所のようなので、プライバシー侵害はなく、慰謝料は認められてもごく少額であろうと思います」

一方で、「消して」と依頼することはできても、拒否された場合にその場で消すことを強要することはできないという。どうしても消してほしい場合は、内容証明を送る、訴訟提起や民事保全申立てなどの手続をする、または配信プラットフォームに訴えるといった手段が考えられるが、松本弁護士は「ごく少額の不法行為の損害賠償請求権があるという状態で、この場合は実際に提訴するケースは少ないだろうと思います」と言う。

とはいえ、不本意に配信される不快感は理解できる。配信者には配慮が求められるのではないだろうか。

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