「(中国が)戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうる」

11月7日に行われた衆院予算委員における、“台湾有事”に関する高市早苗首相(64)の答弁。これが台湾を“核心的利益”と位置付ける中国の猛反発を招き、外交問題に発展している。

「“存立危機事態になりうる”とはつまり、日本の自衛隊が集団的自衛権に基づいて、武力行使に踏み切る可能性があるということを意味します。歴代政権はこれまで、存立危機事態の認定については、“実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、総合的に判断する”として台湾有事と関連付けない“曖昧路線”を取ってきました。“一線を越えた”高市氏の答弁を受け、中国が渡航自粛勧告を出したことで、日本行の飛行機が大幅に減便され、6月に輸入再開が決まっていた日本産海産物も、再び輸入を停止することが日本側に通達されました」(政治部記者)

なお、高市氏の答弁は、立憲民主党・岡田克也議員(72)の質疑に対して飛び出したものだった。岡田氏は台湾を念頭に、“どのような事態が日本の存立危機事態になり得るか”と問いかけたのだが、SNSでは日本が中国の反発を受ける中、答弁を“引き出した”岡田氏にも責任があるとし、批判が噴出。いっぽう、岡田氏は各メディアのインタビューに応じ、こう反論している。

《安全保障の問題に対して憲法や法律に照らして質問するのは当然ですし、さまざまな影響が生じる答弁をしたとすれば、それは総理発言として問題があったということです》(『AERA』/11月19日)
《何か問題があったとは全く思っていない。10年前に大議論して成立した安保関連法について、ちゃんと法律通りにやりますかと聞いているわけで、首相の認識を繰り返し聞くのは当然だ》(東京新聞/11月21日)

そんななか、SNSで注目を集めているのが、’21年12月13日、岸田政権下の衆院予算委員会での一幕。実は当時、高市氏も「台湾有事」を持ち出し、岡田氏と同じ“質問者”の立場で、安全保障に関する質疑を行っていたのだ。

この質疑が行なわれた当時、すでに首相を退任していた安倍晋三氏が、台湾で行われたシンポジウムにリモート出演し、「台湾有事は日本有事。日米同盟の有事でもある」と発言していた。高市氏はこれを引き合いに出し、こう問いかけた。

「台湾有事は日本有事という、安倍元総理の見解について、安全保障の観点から正しい認識と考えるか」

「日本の閣僚を含む政治家が、台湾有事、つまり中台有事を想定した発言をすること、日本政府が中台有事への備えを進めることというのは、中国の内政に対する干渉と考えるか」

これらの質問に対し、答弁者の岸信夫防衛大臣(66/肩書は当時)、林芳正外務大臣(64/同)は、「中国は台湾周辺における動きを活発化させている。

我が国として、防衛相として、引き続き関連動向に注視する」「日本を取り巻く環境が一層厳しさを増す中、政府としていかなる事態にも対応できるよう体制を整備することは当然」などと応じつつ、具体的な回答は避けていた。

台湾有事を想定した安全保障の質疑をめぐって、岡田氏への批判が強まる中、高市氏の当時の質疑がXで拡散し、こんな反応が寄せられている。

《高市早苗氏は、2021年に岸田政権に対して「台湾有事は日本有事か」と迫っていることも周知されるべきです》
《与党同士の立場でも明確に”台湾有事について”具体的にきいている。これで野党の立場で質問した岡田さんが責められるのはおかしい》
《なぜ野党は質問したのかと言う方達もいますが、台湾有事について内閣に確認するのは与野党関係なく大事みたいです。当の高市さんが2021年の予算委員会でこのように「台湾有事は日本有事」と言う安部元総理の言葉について当時の岸田内閣に予算委員会で質問してますから》

「岡田氏に対する批判は様々あるようですが、高市氏の過去の質疑を改めて見た上では、少なくとも”わざわざ台湾有事の話をするな”といった批判は筋違いではないでしょうか。また、高市氏は当時、安倍氏の”台湾有事”発言が中国の反発を受けたということを前置いて質疑を始めているわけですから、当然、発言自体が問題視されることは承知していたはずで、4年が経過した現在もそれは同じでしょう。だからこそ、一部で報じられているように答弁の後に《つい言い過ぎた》と周囲に漏らしたのではないでしょうか。問題化してしまった以上、これからどんな落としどころが作れるのか、高市氏の手腕が問われています」(前出・政治部記者)

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