文書や画像の作成、面倒な企画書だって一瞬で作ってしまうなど、ビジネスでは、広く活用されている生成AI(以下、AI)だが、日常生活では使えるだろうか?

「AIというと、なにか技術を学ばなければと思う人が多くいますが、“いつでも嫌な顔をせずに、すぐに返事をくれる物知りな友達”と思えばいいのです。スマホなどで『ChatGPT』のアプリ(無料)をダウンロードするだけで、博識なコンシェルジュが、料理や旅行、家事や日常のちょっとした相談ごとに寄り添ってくれます。

とくに日常生活には、自分の頭で考える創造的な活動が多く、そんなときこそ相談にのってくれるAIの真価が発揮されるのです」

そう語るのは『AIを使って考えるための全技術』(ダイヤモンド社)の著者の石井力重さん。

若者には“チャッピー”の愛称で知られるChatGPTなどAIは、プロンプト(指示文)を入力すれば、すぐに答えを出してくれるが、うまく回答が得られないという人も少なくない。

■AIを『ガラスの仮面』の北島マヤだと考えて

「AIはよくも悪くも指示文に対して忠実。ロクでもない回答が返ってきてしまうときは、人間側の質問が適切でないことがほとんどです。実は、男性よりも女性のほうがAIとの相性は良好なのです。

たとえば美容院で髪を切るとき、男性は『短く刈りあげて』と要点をまとめて簡潔に伝えますが、コミュニケーション能力の高い女性は『最近、疲れちゃってさ、もう思い切って、サイドは外ハネにして、ちょっとレトロな1990年代風に……』と細かく指示を伝えますよね。

AIも背景や目的、具体的な条件、避けてほしいことなど細かい指示があればあるほど質問者の意図やイメージを正確に受け取ってくれるのです」(石井さん、以下同)

さらに、こんな上手な回答の導き方のコツがあるという。

「AIに専門家の役割を与えて、目的に合った視点や専門性の高さを役割でコントロールすることも大切なポイントです。イメージとしては漫画『ガラスの仮面』。主人公、北島マヤは、月影千草先生に指示されたら、どんな人でも演じきって、その人物になりきった言動をします。

AIも与えられた役割どおりにきちんとした情報を参照して回答してくれます。文字を入力するのが面倒なら、マイク機能を使って『声で会話したいんだけどいいかな』と聞くとAIが『もちろん』と、あたかも人と会話しているように回答まで導いてくれます」

石井さんのアドバイスを参考に、ChatGPTに<あなたは高血圧の予防に詳しい栄養士です>と指定したうえで、高血圧を予防する献立を聞いてみた。

瞬時に、主菜「鶏むね肉とブロッコリーのしょうが蒸し」、副菜「豚こまキャベツの黒酢炒め」、汁物「納豆とレタスのみそスープ」の献立とレシピを提案してくれた。

■優秀な執事のつもりでAIを使いこなそう

栄養士で日本フードコーディネーター協会理事の若宮寿子さんがこう語る。

「食生活で高血圧を予防するには、減塩に加えて、塩分を排出するカリウムが豊富な食材を取ること。塩味を抑えて酢やしょうがを加えたり、カリウムが多いブロッコリーや納豆を選択したりしていることからAIの回答は正しいです。ただし物価高の今、豚肉は翌日の料理に使って、カリウムが多いいも類で副菜を作ったほうがお財布的にはいいでしょう」

今回、食材費の条件は付けなかったので、費用を抑えたい人はそうした条件を加えればいいだろう。

「料理を作る際に、多くの人が頭を悩ませるのが食事のメニューにバリエーションを持たせること。まして血圧のことまで考慮しなければいけないとなると大変。AIで瞬時に献立やレシピを手に入れられたらずいぶん助かりますね」(若宮さん)

AIには、求める回答を得るまで「対話」をすることが大切だという。前出の石井さんが語る。

「仕事やプライベートでやらなければならないことが山積しているのに気力が出ないときにはAIにやるべきことを伝えて優先順位をつけてもらいます。疲れていると愚痴も伝えて『何からやればいい?』と。満足できない回答なら『やる気が出ない』とか『今夜中にやらないといけないことを優先して』と言い返します。

“会話”を繰り返していくと、自分の頭も整理されて、“それならいいか”と思えるような回答にたどり着く。あとは淡々とその順にやっていきます」

優秀な執事のように私たちの暮らしを支えてくれるAIだが、付き合い方には注意が必要だ。

「AIは高いレベルで具体性を持って回答しますが、しれっと自信満々に嘘もつきます。必要に応じて確認することが大事です。また、AIを使うとバカになるとよくいわれますが、すべて任せるのではなく、提案された回答から一段上がったオリジナルの発想を練るなど、考えることをやめないことが大切です」

AIを賢く使って、日々の家事を楽にしよう。

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