東京・赤坂の高級個室サウナ「SAUNATIGER」で火災が発生し、利用客の30代夫婦が亡くなった事故。12月15日の事故発生から1週間以上が経過したが、警視庁は業務上過失致死容疑も視野に現在も捜査を続けている。

亡くなったのは、川崎市の美容室経営・松田政也さん(36)と妻の陽子さん(37)。15日、サウナ店が入るビルの3階で「ベルが鳴っている」との119番通報を受け、消防隊員に個室の入り口付近で倒れているのが発見されたが、約1時間半後に搬送先の病院で死亡が確認された。なお、22日の「週刊文春電子版」によると、夫婦が店を訪れたのは、この日が初めてだったという。

《子供には沢山遊んでもらって『パパに言えば なんでも買ってもらえる』 ATMになってでも遊んでもらいたいので より働きます。いつかこの子がドレスを着るまで生きたい》

これは、’23年に第一子が誕生した際の政也さんのインスタグラムの投稿。このほかにも、アカウントには夫婦の仲睦まじい姿が投稿されていたが、政也さんの知人は本紙の取材に、「本当に周りの幸せを考える人だったので、このような形で亡くなられたことはショックで仕方がありません」と生前の人柄を語っている。

そんな夫婦の命を奪った今回の悲惨な事故。詳しい死因は現在も捜査中だが、発生から1週間のうちに、店の安全管理体制、そして発見される直前の夫婦の様子が次々と明るみになっている。

「現場検証の結果、サウナ個室のドアノブが内側、外側共に外れ、床に落ちた状態だったことがわかっており、室内の非常ボタンが押された形跡があったものの、受信盤の電源が切れていたことも判明。店のオーナーは“一度も受信盤のスイッチを入れたことがない”と聴取に答えているといいます。

発見時の夫婦の様子ですが、政也さんが陽子さんに覆いかぶさるような状況だったそうです。また、個室ドアのガラスには叩いた跡が残っているほか、室内の通気口の一部が壊れて落ちていたことから、物を叩いて従業員を呼ぼうとしていたとみられています。

火災はサウナストーンにタオルが触れて発火したのが原因とされていますが、これは外部に異常を知らせるために、故意にタオルを燃やした可能性も指摘されています」(社会部記者)

さらに、22日には読売新聞で、各個室のドアノブが後から取り換えられた跡が見つかり、一部では動作に不具合があったことも報じられた。記事が掲載されているネットニュースサイトのコメント欄には、店の安全管理体制を疑問視する声が噴出している。

《複雑な構造のドアのぶにしとくのが間違い。個室だからノブがあるんだろうけど、浴場のサウナは通常押せば開く、引けば開く、鍵はない。もし、鍵があったら間違っている。緊急時の脱出を内装を作る時に普通は考える。それがないとすれば非常ボタンも動かず、全く危機管理ができていなかったんだろう》
《仮に非常ボタンが作動してスタッフが助けに来れても、ドアノブ壊れてたら開かないからレスキュー呼んでドア壊したりするしかなく、灼熱のサウナの中でその時間閉じ込められるのも命に関わる。非常ボタン作動しないのも絶対ありえないけどドアノブも本当にありえない》
《全部がそもそも生き残れない設計になっている。ドアが開かない、非常ボタンもならない、ガラスも割れない…これがただの不備という一言で片付けられていいのでしょうか》

月額利用料最大39万円という“超高級”志向をウリにしながらも、ふたを開ければ、“杜撰”な安全管理体制の下で運営されていたことがわかった「SAUNATIGER」。店の運営会社「SAUNA&Co株式会社」(東京)のオーナーは、現在のところ公の場に姿を現していない。

「同社は15日、公式HPで事故を謝罪しつつ、“推測を含む説明は差し控える”“判明した事実は適切な時期に知らせる”とコメント。以降は捜査機関に協力するとし、店の営業は停止すると発表していました。

店の経営に関してですが、’22年のオープン時はA氏が代表取締役社長だったものの、昨年12月に辞任し、新たにB氏が就任しています。

A氏は’17年にブランド品などの中古品買取りを行う会社(千葉県)を設立しており、現在も同社の社長。ところが、この会社は今年11月、訪問先の消費者に対する勧誘が特定商取引法に違反したとし、消費者庁から9カ月の業務停止命令を受けています。

A氏はサウナ運営からは退いたものの、オープン当初は店の責任者ということもあり、現在の店の安全管理が明らかになる中、先月の行政処分事案が浮上したことで、SNSではいまやB氏と並んでA氏にも注目が向けられています」(前出・社会部記者)

本誌は18日、店のオープン当初の安全管理体制について話を聞くため、A氏の自宅を訪れたが不在だった。さらに、A氏が現在社長を務める会社にも電話で取材を申し込んだが、担当者は「社長が不在なので。大変申し訳ございません」と返答した。

愛する子どもと年を越すことができなかった政也さんと陽子さん。A氏とB氏には、真摯な説明責任を果たすことが求められている。

編集部おすすめ