《昨年は、戦後80年という節目に当たり、先の大戦を思い起こし、戦中・戦後に人々が耐え忍んだ苦難と、人々のたゆみない努力により築き上げられた今日の我が国の平和の尊さに改めて思いを致すとともに、これまでの歩みを今後とも語り継いでいくことの大切さを心に刻みました》

新年にあたり、ご感想を公表された天皇陛下。皇室担当記者はこう語る。

「’25年の両陛下にとっての課題は、“戦争の記憶を継承する旅”でしたが、今年、最重要とされる課題は、いわば“被災地へ思いを寄せる旅”となるようです。

’26年3月11日で、東日本大震災発生から15年となります。春には特に被害が大きかった岩手、宮城、福島の3県を訪問される方向で調整されています。

また’26年4月には熊本地震から10年の節目となりますので、秋には熊本県に足を運ばれます。いまだ被災地で苦しむ人々を自ら激励し、さらに国民には“被災地の人たちのことを忘れないでほしい”というメッセージを伝えたいというご意向なのでしょう」

今年5月には御代替わりから8年目に入る。特に熊本県は、天皇皇后両陛下として初めて訪問されることになるのだ。

「熊本県は’20年7月に豪雨被害も受けています。両陛下は被災地訪問を希望していましたが、コロナ禍のために実施困難な状況が続き、翌年1月にオンライン形式で見舞われました。初めての試みで、現地の被災者らは励まされたでしょうが、両陛下としてはやはり、現地で直接顔を合わせて激励したかったというお気持ちもあったと思います」(前出・皇室担当記者)

天皇陛下と雅子さまにとって、全都道府県を訪問されることは、“宿願”ともいえるという。

宮内庁関係者によれば、

「天皇が全国を巡るように行幸するという形式は明治時代から始まりました。それまで天皇は御簾の向こうにいて一般人の前には現れない存在でした。しかし明治維新後、国家の主権者は天皇であるということを国民に知らしめるために、巡幸するようになったのです」

天皇による全国巡幸の意義は時代によって変化してきた。

静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次さんはこう話す。

「昭和天皇による全国巡幸は、戦争で荒廃した各地の復興状況を視察するためでした。そして打ちひしがれた国民を励まし、ともに復興に立ち向かっていこうというメッセージが込められていました」

■国民に連帯を求めるメッセージも――

平成に入ると、上皇ご夫妻による行幸啓先でのおふれ合いで国民との距離はさらに縮まった。

「上皇さまと美智子さまは、国民と直接言葉を交わすこと、お二人で務められることを重要とお考えだったのです。そのご姿勢は’16年8月に公表された上皇陛下による『象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば』からも伝わってきます。

《これまで私が皇后と共に行おこなって来たほぼ全国に及ぶ旅は、国内のどこにおいても、その地域を愛し、その共同体を地道に支える市井の人々のあることを私に認識させ……》などと語られました」(前出・宮内庁関係者)

天皇陛下と雅子さまは、こうした上皇ご夫妻のご姿勢を踏襲しつつ、令和における新しい全国行幸啓を目指されているという。前出の天皇陛下の新年にあたってのご感想では、こうつづられている。

《昨年も、地震や豪雨、林野火災、大雪などによる災害が各地で発生したほか、物価の上昇などにより、苦労された方も多かったことと思います。困難を抱えている人々のことを案じるとともに、そのような人々のため、また社会のために地道に活動に取り組んでいる人も多いことを心強く思っています》

前出の宮内庁関係者が続ける。

「あえて“物価の上昇”と表現されたことが非常に印象的です。被災者ばかりではなく、生活に苦しむ国民の“痛み”に直に向き合いたいというお気持ちが強く伝わってきます。さらに、“こういう事態だからこそ国民同士が連帯してほしい”と呼びかけていらっしゃるのでしょう」

コロナ禍の影響もあり、御代替わり以降、天皇陛下と雅子さまがまだ訪問されていない県は20県残されている。

「今年、“未踏破”のうちの熊本県は被災地ご視察で、また四大行幸啓により、愛媛県、青森県、高知県を訪問されます。

さらに両陛下は“全県踏破”のため今後、さまざまな名目で地方ご訪問の機会を増やされていくと思われますが、側近たちの新しい体制にも、そのサポートを期待されているようです」(前出・宮内庁関係者)

12月24日、宮内庁長官に黒田武一郎氏が、宮内庁次長に緒方禎己氏がそれぞれ就任した。

「特に黒田長官は、総務省のトップである総務事務次官に上りつめただけではなく、熊本県副知事も務めたことがあり、地方自治体の事情を熟知しています。

地方のコロナ禍対策などのために、臨時交付金の創設や、政府と各都道府県との調整に携わった事務次官時代の実績は、地方自治体からも高く評価されているそうです。

両陛下の地方ご訪問は基本的に宮内庁総務課長が担当していますが、何か問題や調整が必要な事案があった場合には、黒田長官が手腕を発揮すると思います」(前出・宮内庁関係者)

全国の国民同士の絆を強め、笑顔にするための旅へ……。8年の宿願を胸に、雅子さまはご決意を新たにされている。

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