「『探偵物語』のラストシーンに私は関わっていないのですが、試写を見たとき、清純派の薬師丸ひろ子さんが松田優作さんと激しいキスをしているから、びっくりして! キスするくらいは台本に書いてあったかもしれませんが、あれだけ濃厚になったのは、現場で優作さんが考えたのだと思います」

こう振り返るのは、秋川リサさん(73)だ。同作品の撮影現場は、時間どおりに終わったことがなかったという。

「優作さんが台本を持って、根岸(吉太郎)監督に近づく姿が見えたら“これで2時間待ちか”って覚悟するほど。薬師丸(ひろ子)さんも、スタンバイして現場入りしても、監督と優作さんがもめている姿を見ると、すっと楽屋に戻っていきました」

それだけこだわりが強かったのだろう。

「優作さんからは『お前、よくこのセリフが言えるな』って驚かれましたが、私は『脚本家が“てにをは”を間違えても、まずはそのまま台本を読め』と教えられていたんです。逆になんでそんなにこだわるのか不思議でしたが、聞いたら力説されて面倒だから、嵐が過ぎ去るのを待っていました(笑)」

撮影が終わるタイミングが一緒のときは、優作さんは「一緒に飯食って帰ろう」と、バイクの後ろに秋川さんを乗せて食事に行き、家まで送ってくれたという。

「優作さんはあまり共演者と食事に行かないそうだから、友人からは『リサは気に入られたんだね』と言われましたが、優作さんに聞くと『女房が妊娠していて、いつ生まれるのかわからないから、一人でそわそわしているのが嫌なんだ』と言っていました」

優作さんとのベッドシーンでは、監督から「2人で考えてください」と言われ、事前に打ち合わせをしていたという。

「奥さんが臨月だから、優作さんからは『ここのところ、女に触っていないんだよ。お前、あんまりリアルにするとオレ、困っちゃうから、お手柔らかに』ってお願いされました」

優作さんは若くして亡くなったが、その後も不思議な縁でつながっているという。

「優作さんの次男・翔太さんが、うちの娘と同じ学校で、優作さんが私を送ってくれたように、翔太さんも娘を送ってくれたことがあったんです。それから数年後、翔太さんと食事をする機会にも恵まれたのがうれしくて、つい『あなたのお父さんとはベッドシーンをした仲なのよ』って言ってしまいました(笑)」

『探偵物語』(1983年)

富豪の令嬢・新井直美(薬師丸ひろ子)とボディガード兼監視役の私立探偵・辻山秀一(松田優作)が殺人事件の謎に迫る。同じく松田優作主演のドラマ『探偵物語』の工藤ちゃんとは対照的な煮え切らない探偵像が印象的。物語終盤の長く、熱いキスシーンが話題となった。

【PROFILE】

あきかわ・りさ

1952年生まれ、東京都出身。

15歳でモデルデビュ―し、資生堂の広告や雑誌『anan』で広く知られた。その後、舞台や映画、バラエティ番組など幅広く活躍。

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