「司組長が読んでいた本で印象的なのは、『宮本武蔵』や『徳川家康』などの歴史小説。長編のものが多く、読書家の一面を垣間見ることができました」
そう語るのは、2009年から2014年まで府中刑務所に収監されていた、元受刑者の三井裕二氏(仮名)。
「図書工場のおもな仕事は、官本(刑務所が無料で受刑者に貸し出す本)や新聞の配布、そして、受刑者が購入する本と差し入れされた本の内容をチェックすること。僕は班長だったので、『私本購入願箋(がんせん)』という、本を買うための書類を見ることができました。そこで見つけたのが司組長の願箋でした」
「裏社会のトップはどんな本を読むのか」と興味を持った三井氏は、司組長が5年間の服役中に購入した、もしくは差し入れされた本のタイトルをメモし、リストアップしていた。本の数は、140冊に上る。
「歴史小説以外に、思想家の安岡正篤、中村天風の本が何度も差し入れされています。これらは、本人が面会や手紙で頼んで差し入れてもらったものでしょう。哲学書を読み漁ることもあるといわれる司組長らしいセレクトです」
本の内容によっては、購入や差入れが許可されないものもある。唯一「不許可」となったのは『山口組概論――最強組織はなぜ成立したのか』だった。
「暴力団や犯罪者に関する本や記事、刺青の写真などは基本的にNG。司組長の場合、週刊誌もほかの受刑者より厳しくチェックされていました。僕たちはそれを『司ルール』と呼んでいました」
司組長はこのほか、「週刊大衆」「週刊実話」「アサヒ芸能」をローテーションで購入。
意外なのは、料理や旅行に関する本が目立つこと。じつは、これらのジャンルは「おいしいものを食べたり、どこかを旅したりした気分になれる」ことから、塀の中では隠れたベストセラーなのだという。
服役中、刑務官ですら口をそろえて「オーラがある」と言ったという司組長。その存在感は、圧倒的な読書量で培われた知識に裏打ちされたものなのかもしれない。
(週刊FLASH 2016年9月27日、10月4日号)

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