「自宅内でスリッパが脱げ、靴下が滑って転倒、前腕を骨折した」(70歳代・女性)
「風呂場で体勢を崩し、背部を打撲、肋骨を骨折した」(70歳代・女性)

これらは2025年に国民生活センターが紹介している事例だが、地震などの災害時に限らず、じつは平穏な日常生活のなかでも、高齢者の転倒・転落事故が年々増加しているという。

厚生労働省「人口動態調査」のデータによると、2023年の転倒・転落等による死亡者数は1万1千784人。

近年、交通事故による死亡者数が約2千500人で推移していることから、交通事故死の4倍以上も命を失っているのだ。

「その背景には、超高齢社会の中で、ほぼ毎年高齢者人口(65歳以上)が増えており、この状況に比例するように転倒・転落事故件数も増加しているのです。

転倒・転落の主な原因は、筋力、バランス能力、反射神経、柔軟性、視力、聴力など、身体機能の低下。

そして服用する薬の作用・副作用による立ちくらみ、運動不足などが挙げられますが、それ以外にも住み慣れた自宅内には、転倒・転落の原因となるリスクがたくさん潜んでいます」

こう語るのは、『暮らしのうっかり事故を防ぐ本』(宝島社)の監修者で、危機管理アドバイザーの国崎信江さん。

東京消防庁のHPによると、65歳以上の高齢者の転倒事故のうち、3万8千485人、全体の57.4%が「住居等居住場所」で発生していた(2023年のデータより)。すなわち約6割の高齢者が自宅で転倒していたのだ。

さらに、厚労省の別の調査では、転倒死の80%以上が、「スリップ、つまずき、よろめきによる“同一平面上”での転倒」が原因だと報告されている。つまり、危険な場所は、段差や階段だけでなく、平面な床などでの動作中の転倒が大半を占めているのだ。

そこで国崎さんに、高齢の親が住む家に潜む、転倒リスクの高い5つの場所の危ないシチュエーションについて、対策を含めたアドバイスをしてもらった。

【居間】

「床とカーペットやラグの段差によるつまずきを防ぐために、養生テープなどで端部を固定して段差を減らします。そしてスリッパを履いての移動はつまずきの原因にもなるので、かかと付きの室内用の「転倒予防シューズ」に切り替えましょう」((1)・イラスト内の番号を参照。コメントは国崎さん、以下同)

「動線上にタコ足配線や暖房器具のコードがあると、足に引っかかる可能性が高いので、延長コードを用いて壁際にはわせ、余長分はまとめましょう」(2)

床に置きっぱなしにしている新聞紙やチラシ、買い物袋も危険(3)。

「つまずきの原因となるので、必ず新聞ラックに入れるか、テーブルの上などに置くことです」

■高齢者の転倒事故は12~2月の寒い時期に多い

【階段・廊下】

夜間はとくに危険なので、足元の明るさを確保するための常夜灯やセンサー式の照明を増設する(1)。そして床や階段には物を置かないようにすること。

「加えて、ふらつき、つまずき、踏み外しなどを防ぐために手すりの設置もマストです」(2)

踏み外し防止策として、階段の始まりと終わり、あるいは全段に“蓄光テープ”(蛍光灯や太陽光などの光を蓄えて、暗闇で蓄えた光を放出する粘着テープ)を貼ることも有効だ(3)。

【浴室・脱衣所】

浴室内でのふらつき、滑り対策として手すりの設置。髪や体を洗った後は、立ち上がる前に床面をシャワーで流して泡を除去。脱衣所には滑り止めマットを敷く。入浴後は浴室内で体を拭き、バスローブを着てから暖かい部屋に移動して着替えること(1)。

「さらに、冬場は浴室と脱衣所の温度差による立ちくらみ、ヒートショックなどを防ぐために暖房器具で脱衣所を暖めておきましょう」(2)。

【玄関】

靴着脱時にバランスを崩したり、ふらつかないように、腰掛け用の椅子を常設しておく(1)。

「そして、玄関と室内を区切る段差でつまずいたり、ふらつかないように手すりを設置しましょう」(2)

【寝室】

万が一、転落しても衝撃が緩和できるよう低床のベッドにする。また、起き上がり時のふらつきなどを防ぐための“ベッドガード”(手すりとしても有効な柵)を設置すると、より安全になる(1)。

「また、夜間、トイレなどに行く際、足元を明るく照らす人感センサーライトを設置することで、つまずき防止策になります」(2)

高齢者の転倒事故は、12~2月という寒い時期にとくに多く発生するといわれている。

高齢の親が転倒→骨折→寝たきりにならないよう、自宅内の危険リスクをチェックして対策を講じよう!

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