■首回りを温めることは肩こり改善につながる
「寒くなって気温が下がると急に痛みやこりが現れる人がいます。そういう人のなかには、朝方調子が悪くても、体を動かしているとよくなるという人も多く、血流や体温と関係があるように感じます。
と話すのは、New Spineクリニック東京の総院長で慶應義塾大学医学部整形外科前特任教授である石井賢先生。
日中は体温を奪われないよう、首にマフラーを巻いたり、カイロを当てるなど、首回りを温めることは肩こり軽減につながるという。加えて、手首や足首といった、体温が出入りしやすい部位も保温しておきたい。
ここで紹介したさまざまなストレッチで血流を促すのもよいが、ウオーキングなどの有酸素運動も血流促進に効果的だ。
「デスクワークなどで長時間同じ姿勢をしがちな方は、少しでもいいので、定期的にストレッチを取り入れるようにして、体を動かすようにしましょう」(石井先生)
また、冬季は特にゆっくりと湯船に首までつかって血流を促すと痛みやこりが緩和される。
体が固まりやすい季節こそ体を温めることに努めよう。
■少しの力でもツボに入り、女性でも簡単にできる
「体の中には経絡という気の通り道が線路のようにつながっています。これらの『気』の入口であるツボを刺激することで、気の流れが整い、同時に筋肉を包む筋膜のつながりを通じて、離れた場所の筋肉の緊張も緩んでいきます。直接患部に触れなくても症状が楽になるのは、こうした体のつながりがあるからです」
こう話すのは、鍼灸師・整体師で治療院「伊織鍼堂」代表の松田伊織さんだ。
松田さんはペンを使ったツボ押しを推奨している。その理由は、力加減がちょうどよいからだ。
「指を使ってツボを押そうとすると、力加減がわからず、爪が皮膚に食い込んで皮膚を傷つけたり、逆に押しているほうの指や手が疲れやすくなることがあります。女性は特にその傾向があります」(松田さん、以下同)
ペンのよいところは、キャップやお尻側の丸いところがツボに入りやすいこと。ペンに体重を預けるようにすれば、腕や指の力を使わずとも、自重だけで十分な圧がかかる。力は最小限で効果は最大限。だから女性でも簡単にできる。
松田さんに、肩こりに悩む人にペンを使ったツボ押し4種類を紹介してもらった。
【1】後谿(こうけい)
「小指から手首、ひじ、肩甲骨の内側から首へとつながる気の経路があります。この経絡上にある後谿への刺激は、デスクワークで背中が張る、スマホを見て肩甲骨あたりが張る、猫背、巻き肩、呼吸が浅い人などに効果的です」
後谿の場所は、手を軽くグーにしたときに小指の付け根の外側にできる横じわの端、少し膨らんだところ。そこにペン先を合わせ、息をフーッと吐きながら、ツボにペンを入れていく。そのまま深い呼吸を何度か繰り返す。
実際に記者も深呼吸を繰り返しながらツボを刺激しているうちに、ツボ押ししている側の肩周りが軽くなっていく感じがした。
【2】合谷(ごうこく)
「このツボは『面目合谷収』といって、顔にある目や鼻などの症状を合谷が収めるという意味があります。
合谷の場所は親指と人さし指の付け根の間、水かきのところ。
【3】築賓(ちくひん)
「ふくらはぎは第二の心臓とも呼ばれ、心臓に血液を送り出すポンプの働きをしています。ふくらはぎにある築賓を刺激することで、血流が促進され、全身に血液が巡って体が温まり、冬に起こりやすい肩こりを解消していきます」
築賓は内くるぶしから指5本分ほど上、ふくらはぎの内側にある。
「このツボは更年期世代の女性の『冷えのぼせ』という、手足が冷たいのにホットフラッシュで首から上がほてる症状にピッタリのツボです。疲れやすく朝から肩が重いといった人におすすめです」
【4】神門(しんもん)
手首の横じわの小指側。後谿からそのまま手首におろしたあたり。神門は心の安定に関係するツボで、副交感神経を優位にし、過緊張からくる筋肉の緊張を緩和する働きをする。
「ストレスで緊張すると無意識に肩に力が入りますが、緊張が解ければ、自然と張りつめていた肩や背中が緩みます。神門はそうした緊張をリラックスモードに変えてくれる働きがあるのです」
イライラしやすい、夜寝つけないなど、精神的な要因からくる肩こりに悩んでいる人におすすめだ。
ペン1本でいつでもどこでもできる「ペンつぼ押し」。
■世界の【肩こり事情】くらべてみたら
【ベトナム】魔法の液体!?「ヤウ・ヨー・サン」は何にでも効く常備薬
ベトナムで昔から行われてきた肩こり対策の民間療法が「カオヨー」。特製のヘラ、あるいはスプーンなどを代用し、体の表面、ツボのラインを何度もなでこする。結果、血行が促され、体のこりがほぐれていくんだとか。また、カオヨーのもう一つの必需品が、現地で魔法の液体と呼ばれる「ヤウ・ヨー・サン(緑の風油)」。
カオヨーの際は、これをたっぷり体にふりかけてから、ソフトタッチで優しくなでこする。このヤウ・ヨー・サン、腹痛や喉の痛みなど「何にでも効く」と信じられている、まさに“魔法”のような“常備薬”なのだ。
【台湾】季節を問わず温かいものを好み、体を温め血流の滞りを防ぐ
「食は医なり」の考え方が浸透している台湾。夏はうだるような暑さだが、現地では季節を問わず温かな飲み物、食べ物が好まれ、朝は白湯や、温めた豆乳を飲む習慣を持つ人も。体を温め、血流の滞りを防ぐことで、肩こりや腰痛予防につなげている。
なかでも注目なのが「當歸(とうき)」。日本では「当帰」と書く生薬で、セリ科トウキ属の植物の根を乾燥させたもの。
【韓国】伝統の「コルギ」での改善もあるが、美容大国ならではの注射で一発解決
いまや日本でも有名になった韓国伝統の「コルギ」。さまざまな手技を駆使し気の滞りや血液の循環不良を改善、肩をほぐしていく。
いっぽう“美容整形大国”らしい肩こり解消法も。それが「肩こりボトックス注射」。肩こりは肩の僧帽筋が緊張・萎縮することで起こる循環障害。そこで、筋弛緩作用があり、筋肉の緊張や痛みを抑える効果が期待できる「ボツリヌス菌」を、患部にダイレクトに送り込むのだ。効果は数カ月間続くとされる。ただし、流産などのリスクが高まるため、妊娠中や妊娠の予定のある女性はNG。
【スウェーデン】科学的な施術のいっぽうで、小麦を使用した自然療法も
スウェーデンの肩こり解消法といえば「スウェディッシュマッサージ」。約200年前、医師が解剖生理学に基づき開発した科学的アプローチのマッサージ。
スウェーデンには温めた(もしくは冷やした)小麦を使った伝統的自然療法も。「麦の温冷ネックピロー」と呼ばれるもので、レンジで加熱したピローの温熱効果により肩・首の筋肉の血行を促進、慢性的なこりを和らげる。冷蔵庫で冷やしたピローは、スポーツ時などの急性の肩の炎症を抑える効果が。
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