感染すれば、4割から7割が命を落とすといわれる“ニパウイルス”。昨年末以降インドで感染例が報告され、警戒が広がっている。
「ニパウイルスは、危険度を示す“バイオセーフティレベル”が、エボラ出血熱を起こすエボラウイルスと同じで、最も高い4に分類されています」
そう解説するのは、「KARADA内科クリニック福岡天神」の院長で、感染症専門医の沖中友秀さん。
インド政府・保健サービス総局 国立疾病管理センターによれば、これまでに世界全体で754人の感染例が報告され、435人以上が死亡している。
「はじめは熱や頭痛、筋肉痛や嘔吐など、風邪に似た症状ですが、進行すると重い肺炎や急性脳炎になることがあります」(沖中さん、以下同)
発症から早い場合は数日~1、2週間程度で重篤化し死亡することがあるという。
ウイルスは、オオコウモリの唾液や排せつ物を通じてブタなどの家畜に広がり、ヒトへ感染する。さらに、ヒトからヒトへの感染も確認されている。
「1998年にマレーシアで初めて感染が確認され、その後、2001年以降は、バングラデシュやインドなど、主に南アジアで集団感染が繰り返し起きています」
■ウイルスが変異し空気感染の可能性も
感染は冬から春に拡大する。
「バングラデシュでは、12月から3月ごろにかけて、飲用に樹液を収穫する習慣があります。その際、感染したコウモリの排せつ物が樹液に混入し、そこから人への感染が広がるケースがあるようです」
現在、有効なワクチンや確立した治療法がないため、WHO(世界保健機関)も、パンデミックを起こす可能性が高いウイルスとして、新型コロナと同様の「緊急研究を要する優先感染症」として位置付けているのだ。
「現時点では、あくまで体液への曝露など、濃厚接触による感染が前提と考えられています。新型コロナのように空気感染を示す報告はないので、日本国内で感染が広がる可能性は低いと考えられます」
ただし、「注意すべき点もある」と沖中さん。
「最初に流行したマレーシア型は、ブタを介した感染が中心でした。一方、2001年以降のバングラデシュ型は、ブタを介さずにヒトにうつり、さらにヒトからヒトへ感染する例も出ています。
つまり、ウイルスの性質が変わってきている可能性があるのです。今すぐ空気感染するわけではありませんが、変異を繰り返した結果、将来的にそうした性質を持つ可能性がゼロとは言えません」
大切なのは、感染しないことだ。
「対策そのものは、ほかの感染症と大きく変わりません。手洗いやうがいを徹底し、人混みではマスクを着用しましょう。また、ニパウイルスはアルコールで不活化されるので、手指のアルコール消毒を心がけてください」
ニパウイルスを理解して、リスクを低減しよう。
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