自民党が歴史的勝利を収めた2月8日投開票の衆議院選挙。同日午後8時ごろからテレビ各局で選挙特番が組まれたが、『選挙の日2026 太田光がトップに問う!結果でどう変わる?わたしたちの暮らし』(TBS系)で、爆笑問題・太田光(60)が高市早苗首相(64)に投げかけた質問に賛否が巻き起こった。

午後10時20分頃に高市氏と中継がつながり、自民党が公約に掲げる「食料品の消費税2年間ゼロ」の政策を中心にインタビューが行われた。

太田は中継後半で、「大変失礼なことを言いますが、日本の政治家っていうのは、責任の所在があやふやになることが、今までの歴史のなかで、僕は多いなと思うんですよね。やっぱり、もしできなかった場合、高市総理はどういう風に責任をとるんでしょうか?」と質問。

すると高市氏は、「できなかった場合?いや、だって公約に掲げたんだから、一生懸命いまからやるんですよ」「できなかった場合とか、暗い話しないでください」と突き返していた。

しかし太田は「政治家としての責任の取り方をどうするかという覚悟がおありなのかということを、大変失礼ながら質問させていただいています」と続け、高市氏は「なんか、意地悪やなぁ」「最初からできへんと決めつけんといてください」と関西弁で反論。

太田は「なんで急に関西弁?」と驚きながらも、「責任の所在をどうするのかというのをお聞きしているんですけど、意地悪ですかね、この質問?」と再び尋ねた。高市氏は「うん。だって、これから必死でやろうとしているわたくしに対して凄い意地悪」と返答し、ここで中継は切れてしてしまった。

このやりとりは大きな注目を集め、ネットやSNSでは太田の質問を“失礼”と批判する声もあれば、“正当性がある”と理解を示す声などさまざまな意見が飛び交った。

なお、太田は中継終了後、質問の“真意”についてこう説明していた。

「前回の(参議院)選挙で自民党は(一律2万円の)給付をするっていう(公約を掲げた)、給付か減税かが争点になって。結局(選挙が)終わったときに、どっちもやらなかったっていう経験を我々(はしてる)。

すごい近い過去で見てるから、“またこんなことになったら政治不信はどんどん進むんじゃないか”っていう思いが僕にはあって」

また、10日深夜放送の『火曜JUNK 爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)でも、「世間が俺を嫌うのもわかる、あのやりとりでね。俺はかなり礼儀正しく言ったつもりです」「でも、俺は悪かったとは思ってないんだけど、俺が言ってるのは責任の所在をはっきりさせろよということなんだよね」と振り返っていた。

■高市氏の関西弁は“戦略”…太田にとって「炎上を防ぐチャンス」でもあった

「賛否を呼んだやりとりですが、“高市人気”を裏付けるような出来事だったと思います。もし高市首相の人気が低ければ、太田さんが同じ質問をしてもさほど炎上はしなかったのでは。太田さんを批判する書き込みがSNSで目立っていたことも、炎上の背景にあると思います」

こう語るのは、元毎日放送プロデューサーで同志社女子大学メディア創造学科の影山貴彦教授。太田の質問が炎上した背景や、タレントやアーティストなど著名人による政治的発言が炎上しやすい背景について解説してもらった(以下、カッコ内は影山教授)。

TBSの選挙特番で、高市氏と中継がつながった時間は約6分半。はじめは同局の井上貴博アナ(41)が質問し、残った時間を太田が受け持ったかたちだ。波紋を呼んだ責任に関する質問では、両者の“差”が顕著に表れていたという。

「高市首相には受け答えに余裕がありましたが、太田さんは表情や振舞いからも緊張しやすいタイプのように思えました。TBSの選挙特番に出演するのは5回目でも、あまり余裕がなく精一杯に受け答えをしていた印象です」

そんな両者の会話は、高市氏が「意地悪やな」と関西弁で返したところがポイントだという。

「高市首相はあの場で、“失礼じゃないですか”と返すこともできたはずです。

表情から笑顔は消えていましたが、急に関西弁にシフトしたのは“戦略”だと思います。“失礼”と“意地悪”では意味が異なりますし、関西弁も取り入れて柔らかいニュアンスを出そうとしたのかもしれません。

太田さんは『なんで急に関西弁?』と返していましたが、もし高市首相と同じように関西弁で返していたら高市首相は笑ったんじゃないでしょうか。ですが、太田さんの一生懸命さが前面に出てしまい、余裕がないなかで『意地悪やな』と返されてしまった。太田さんはここで返すチャンス、すなわち炎上を防ぐチャンスがあったんです。

高市首相を支持する人が沢山いても、あそこで高市首相を笑わせていれば、太田さんの勝ちですよね。さらにタイムリミットが迫ってしまい、必死に爪痕を残そうとして質問を重ねてしまったように見えました」

だがそのいっぽうで、影山氏は番組側の責任もこう指摘する。

「約6分半という時間をもっと計画的に使うべきでしたね。井上アナから太田さんにすぐバトンタッチされましたが、責任の取り方に関する質問はチームで連携すべきだったのでは。太田さんの必死ぶりから見ても“丸投げ感”は否めず、もう少し井上アナに背負わせてもよかったように思います。

選挙特番となれば台本が用意されている可能性は高く、テレビ局のオーソドックスな攻め方として高市首相を本気にさせるような質問は入れているはず。太田さんも’21年10月の衆院選の際に炎上した反省から、好き勝手に喋るということはないでしょう。

太田さんを“番組の顔”に据えていたとしても、周囲のスタッフや共演者がフォローする体制が必要だと思います」

■タレントやアーティストの政治的発言が炎上してしまう背景とは

今回の衆院選では、SNS上で真冬の衆院解散や現政権の在り方を批判するタレントやアーティストの投稿も注目を集めた。

なかには高市氏の一部支持者から、批判の書き込みが殺到した投稿も。例えば、俳優の野間口徹(52)が2月1日に《逃げてばっかりだ。すぐ忘れると思われてる。許せないよね》とXで呟いたことは、タイミング的に『日曜討論』(NHK)を欠席した高市氏への批判だと受け取ったユーザーも少なくなかった。

いったいなぜ、著名人による政治的発言は炎上につながりやすいのだろうか。

「一般社会において、タレントやアーティストに“政治的発言をしてほしくない”と望む風潮がまだ残っているように感じます。SNSを通じて自由に発言できる風潮は広がりつつありますが、著名人が政治的発言をしたら“なぜ、あなたが?”と反発を招くケースもしばしば。発言内容にもよりますが、日頃から政治的発言をしているタレントが炎上することはさほどありません。キャラクターによるのかもしれませんが、どんな人であっても政治的発言が自由にできる社会になってほしいと思います。

ただ、ワイドショーや情報番組が視聴者の気を引く目的で、あまり政治分野に詳しくないタレントを起用しているのは問題だと思います。求められて発言するのと自発的に発言するのでは意味が異なりますから、ワイドショーとSNSを同じ土俵に捉えてはいけないでしょう」

では、タレントやアーティストなどが政治的発言をする際に、求められることはどんなことだろうか。

「政治信条は人それぞれですが、一般人が思いつきで話すことに比べて、著名人であることからひと言ひと言の影響力は重くなります。自分で情報収集をして発信している人がほとんどだと思いますが、なかにはイメージだけで意見を発信している人も見かけます。著名人であることの影響力を考えて、正確な情報をインプットしてから発信することが大事でしょう」

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