「食後1~2時間で急激に眠たくなる人は、血糖値スパイクを起こしている可能性があります。血糖値スパイクは“隠れ糖尿病”といわれ、健診では見つけにくい。

さらに近年、血糖値スパイクが認知症リスクを高めると指摘する医療論文が発表されています」

こう語るのは、金沢大学脳神経内科の准教授・篠原もえ子医師だ。

まずは血糖値スパイクについて、NOBUヘルシーライフ内科クリニック(東京都)院長の藤原信治医師が解説する。

「通常、食事を取ると、食べ物の糖質が体内に取り込まれて血糖値が徐々に上昇します。しかし、食事の取り方や生活習慣の乱れ、加齢などが要因となり、食後の血糖値が急上昇するケースがあります。すると体がびっくりして、急いで血糖値を正常に戻そうと、すい臓から糖を代謝するインスリンが大量に分泌されてしまうのです。その結果、血糖値が急下降し、糖を必要とする脳がエネルギー不足に陥り、強い眠気や集中力の低下が引き起こされます。ひどい場合は気絶することもあります」

そのため血糖値を示すグラフが、急上昇と急下降を描く“スパイク”(鋭いとがり)になるのだ。

「血糖値スパイクは血管へのダメージも大きく、日々繰り返されると、動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります」(藤原医師)

そればかりでなく、認知症を引き起こすと指摘しているのが、昨年12月に米国立医学図書館が公開している医療データベースで発表された論文だ。研究は、英国のUKバイオバンクに登録された、36万人分の遺伝子データや生活習慣データから分析されている。

前出の篠原医師が続ける。

「血糖値と認知症の関連を分析したところ、“食後2時間の血糖値が高い”、つまり血糖値スパイクのある人は、アルツハイマー型認知症リスクが69%増になるという結果でした」

当レポート発表の約1年前、篠原医師が所属する金沢大学の研究室や、九州大学などが行った共同研究でも、血糖値スパイクとアルツハイマー型認知症との関連が見つかっているという。

■脳の記憶をつかさどる“海馬”が痩せてしまう

「血中のグリコアルブミンという物質の量を測ることで、過去、2週間の短い期間での血糖値の平均がわかり、血糖値スパイクとの関連が推測できます。

そこで1万人の対象者のなかから7千400人の脳のMRI画像とグリコアルブミンの数値との関連を解析すると、糖尿病の有無にかかわらず、グリコアルブミンの数値が高い人(血糖値スパイクが疑われる人)は、脳の記憶をつかさどる“海馬”という部分が痩せていることがわかりました。

現状、認知機能が正常な人であっても、将来的な認知症の発症が懸念されます」(篠原医師)

藤原医師も、次のように続ける。

「脳内のインスリンは記憶や学習機能をサポートしますが、血糖値スパイクを繰り返すと、その効き目が弱まり、記憶力低下につながる可能性があります」(藤原医師、以下同)

何よりも重要なのは、血糖値スパイクを引き起こさない生活習慣を身につけることだ。

「食事のドカ食い、早食いは血糖値の上昇を抑制するインクレチンというホルモンの働きが遅れるので、適量の食事を、ゆっくり食べることが求められます。さらに長時間の空腹状態が続くと、乾いたスポンジに水が染み込むように糖の吸収が急激になるので、朝食は抜かないこと。糖質の吸収をゆるやかにする食物繊維が含まれた野菜から食べる、炭水化物は血糖値が上がりにくい低GI食品に置き換えるなど、食生活を工夫してみましょう。

また、食後30分以内に10~15分ほどの軽い散歩をすると、血糖値の上昇が抑えられます」

ニュージーランドのオタゴ大学の研究では、食後の散歩で血糖値が12%、とくに夕食後の場合では22%改善したという。

それでも散歩が面倒だという人は、とりあえず食後に立つこと。欧州応用生理学ジャーナルに発表された論文によると、食後に座位でいるより、食事直後から30分間立っているだけで、血糖値を示す指標となる間質性グルコース濃度の上昇が抑制されるというのだ。

食後はゴロ寝せず、すぐに洗い物をしたり、テレビも立ちながら見るなど、工夫する価値はありそうだ。将来ボケないためにも、食後の睡魔を克服しよう。

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