3月10日深夜放送のラジオ番組『火曜JUNK 爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)で、爆笑問題の太田光(60)が吐露した“悩み”が話題だ。

事の発端は、2月の衆院選のTBSの選挙特番で太田が高市早苗首相(65)に、公約として掲げていた「食料品の消費税2年間ゼロ」を実現できなかった場合の責任の取り方を質した問いだ。

これに高市氏は「なんか意地悪やなぁ」と反論し、SNS上で高市氏の支持者を中心に批判の声があがっただけでなく、保守系WEBメディアの動画でも、同媒体の編集長と元産経新聞論説副委員長の2人が対談し、太田を痛烈に批判していた。

太田はラジオでこの編集長が「ビートたけしとの”違い”はなんなんですかね、太田と。たけしは笑えて太田は不快なんですよね」などと語ってことに「お前さ、それは自分の1番大事な価値観だよ」「何が笑えて何が笑えない、この違いは何だろうっつうのは、何が美しいとか何が醜いと自分が思う。お前の価値観じゃねえかよ」「なんでそれをさ、隣のたぬきに聞くんだよ!」と猛反論。

続けて「お前の考えてる違い、それ俺40年近くずっと考えてること。なんでビートたけしが笑えて、俺が人が不快になるのかっつうのは40年近く俺も考え続けてんの」と明かし、「それでも答え出ないの。はっきり言えば、才能の違いだけど、でもそれを俺が言っちゃうともう俺は終わっちゃうから、そうじゃないだろうっていう前提でやってんの。これからもずっと多分答えは出ないし考え続けることなの。それをお前に分かるわけねえよ。バーカ!」とぶった斬った。

『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)と『サンデージャポン』(TBS系)と、それぞれ政治を扱う番組を持ち、政権に対してどちらも苦言を呈すことは共通しているのに、なぜビートたけし(79)は炎上せず、太田は炎上するのかーー。

たけしと太田の違いについて、お笑い評論家のラリー遠田氏に聞いたところ「なかなか説明が難しいところなんですが……」と前置きした上で、こう解説する。

「まず、太田さんはたけしさんに強く影響を受けて芸人になっているので、同じ系譜にいる存在であることは間違いありません。たけしさんは『ツービート』時代から、老人いじり、ブスいじり、田舎者いじりなど、あちこちに噛みついて毒を吐くネタをやってきました。個人でテレビに出るようになってからもその路線は変わらず、その攻撃的な芸風が支持されてきました。

年齢を重ねたことで多少はマイルドになっている部分はありますが、たけしさんの基本的なスタイルは変わっていません。政治の話をするときにも『こういうやつがマヌケなんだよ』『こういうところが笑っちゃうよな』というような、冷静で皮肉っぽい目線があります。何を対象にしていても“たけし“というフィルターを通してどう見えるのか、ということを一貫してやっていて、それが笑いになっています。『たけしさんは物事をこういうふうに見ている』というのが世間の多くの人に理解され、支持もされています」

一方の太田は、本人が“子供時代には『24時間テレビ』を観て、恵まれない子供を助けるために募金をしていた”と語っているように“根が真面目”だとラリー氏は指摘する。

「そんな太田さんが、中学生の頃にたけしさんの『オールナイトニッポン』を聴いて衝撃を受けた。攻撃的でときには差別的なギャグを平気でやるスタイルに強く影響を受けて、たけしさんの背中を追いかけていくことになるわけです。

たけしさんの攻撃的な笑いは、本人の内側から出てきた露悪的な本音のようなものです。でも、太田さんはそれとは少し違う。あくまでも真面目な部分がベースにある上で、世の中をかき乱してみんなを驚かせたい、騒がせたい、目立ちたい、という感覚でお笑いをやっている。

そこがお二人の違いです。そのように笑いのスタイルに本質的な違いがあるからこそ、それぞれの番組で政治的な話題を取り上げて、両者が似たようなことをしていても、見る人の受ける印象が違うのかもしれません」

また、世間が抱いているイメージも太田とたけしでは異なるという。

「太田さんは『憲法九条を世界遺産に』(集英社)といった本などを出していて、どちらかと言うと“左翼”的な人物だと見られています。この本を実際に読んでみると、太田さんの主張はタイトルの印象ほど単純ではないのですが、よく知らない人からは“太田は左翼”とレッテルを貼られてしまいます。今回、太田さんの悪口を言っていたのも保守系メディアの人でした。保守系の人たちからはそもそもよく思われていないのでしょう。

一方のたけしさんは団塊世代であり、素朴な庶民感覚として“国のやることってあんまり信用できないよね”といった共通認識があります。学生運動が盛んだった時期でもありますが、立派なお題目を並べて過激な活動をしていた同世代のインテリ学生に対するシニカルな目線もある。政治的には左でも右でもない立場を貫いているので、敵を作りにくいのだと思います」

しかし、左右問わず、太田の発言は批判を浴びることも少なくない。その背景についてラリー氏は、テレビに対する太田のスタンスをあげる。

「太田さんのなかには、政治についてのしっかりとした考えや意見があります。文章やラジオなど、じっくり伝えられる場ではそれを丁寧に説明していますが、テレビの限られた時間では“説明し切れない”という感覚があるのだと思います。

テレビでは自分の役割も決まってると割り切って、中立の立場として短い時間で必要なことを聞いたり、時には茶化したり、ふざけたりしています。それが見る人によっては軽薄に感じられるし、知識のない芸人が偉そうに政治に口出ししているように見えることもあるのかもしれません」

それでも、なぜ太田は炎上を繰り返しても選挙特番に出続け、政治の話題にも言及し続けるのだろうか。

「太田さんはたけしさんのことを心の底から尊敬していて、超えられない存在だと感じているという趣旨のことを言っています。でも、それを認めてしまうと芸人として終わってしまうので、自分にしかできないことを見つけてやっていくしかないという思いがあるのではないでしょうか。

今回のことも、わざわざ取り上げる必要もないことなのに、そこにきちんと反論して、時間をかけて批判して文句を言うというのは、非常に泥臭いスタイルですよね。選挙特番で炎上したときにも、ラジオで反省の言葉を述べて延々と愚痴ったりしていたこともありました。そういうのって人間として情けなくてカッコ悪い部分じゃないですか。

でも、太田さんは正攻法で戦ってもたけしさんのカッコ良さには勝てないので、泥臭く戦うことをあえて選んでいるのだと思います。そこがいちばんの芸風の違いかもしれません。私も含めて、太田さんを応援しているファンの人たちは、彼のそういうところが実はカッコ良いのだということを知っているわけですが、それが世間にはあまり伝わっていないのかもしれません」

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