アメリカとイスラエルによる先制攻撃で始まった今回の「イラン戦争」。エネルギー輸送の最重要経路である中東の“ホルムズ海峡”が事実上封鎖され、世界がオイルショックに見舞われている。

そんななか、高市早苗首相(65)は19日、ホワイトハウスでトランプと首脳会談を開催。事態の沈静化に向けて協力することや、日本が出資して北米から原油を調達することなどにも言及した。

これでひと安心か、と思いきや「そう簡単な話ではない」とクギを刺すのは、元経済産業省官僚で政治経済評論家の古賀茂明さん。

「中東と北米では原油の質が異なるため、国内の精製設備を調整する必要があります。また、米側も、すぐ増産できるわけではなく、輸出用に新たに掘る必要も出てくるため、時間もコストもかかります。合意したからといって、すぐに輸入して使えるわけではないのです」

打開策が見いだせないなか、原油と並んで問題になっている石油製品がある。それが“ナフサ”だ。

「ナフサは、原油を蒸留・分離したときにガソリンや灯油、軽油などとともに得られる石油製品のひとつです。身の回りの製品でナフサが使われているものは無数にあります。日本は、ナフサも原油も中東から多くを輸入しているので、イラン戦争が長期化すれば、私たちの生活に大きな影響が及びます」

そう語るのは、エネルギー問題に詳しい化学工業日報の編集局長・渡邉康広さん。

ナフサは、ごみ袋やプラスチックトレー、ペットボトル、食品のラップ、シャンプーなどのプラスチック容器、医療用手袋や点滴の容器、衣類、文具、家電製品など、ありとあらゆる製品の原料として広く使われている。

「日本政府は、約240日分の石油を備蓄していますが、ナフサは、民間各社による備蓄が約20日分ある程度なんです」(渡邉さん)

すでに、ナフサ不足の影響で、化学メーカーでは、プラスチック原料であるエチレンの減産が始まっている。

このままナフサの輸入が厳しい状況が続けば「夏ごろには包装材や日用品などに影響が出る可能性がある」(渡邉さん)という。

ナフサは肥料の原料としても使われているため、農産物の生産に影響が及ぶ可能性も……。価格高騰だけでなく、ホームセンターからごみ袋などの商品が消えることもありうる。事態の沈静化が見通せないなか、生活を守るために、どのように備えればよいのだろう。

「慌てないこと。そして、買い占めはしないこと」と前置きしたうえでアドバイスするのは、備え・防災アドバイザーの高荷智也さん。

「まずは、長期保存できる石油化学製品ーごみ袋やラップ、シャンプーや洗剤などから優先的にストックしましょう。まとめ買いしすぎるのではなく、ふだんから2~3個は手元に置いておくのがおすすめです。使った分だけ補充する習慣をつけましょう」

加えて、重要なのが医療品だ。

「ナフサは、薬の製造過程やコンタクトレンズなどにも使用されているため、ないと生活に支障が出たり、場合によっては命にかかわることもあります。こうした必需品は、有事に限らずふだんから少し多めに備えておくと安心です」

■食料品は買い占めをせず“使った分を買う”対策を

もっとも気がかりなのが食料品だろう。ナフサのみならず、ガソリン不足でハウス栽培の生産や流通が滞ってしまう可能性もある。

「何日分の食料備蓄が必要かという話ですが、1人あたり1日2,200キロカロリーとすると、1週間分でおよそカラーボックス2箱分くらいになります。半年分だと50箱分。費用は25万円ほどかかります。

家族人数分となると費用がかさみ場所も取りますし、現実的ではないと感じる人もいるでしょう。なにより危機が早期に収束した場合、消費期限切れで廃棄、なんてことにもなりかねません」

そこで高荷さんが推奨しているのが、“ローリングストック”だ。

「ローリングストックとは、ふだんから使っている食材を少し多めにストックしておき、消費期限の古いものから順に使っていく備蓄方法です。使った分を、そのつど買い足すだけなので、負担もあまりかかりません」

主食の米や麺類、飲料、缶詰やカップ麺、レトルト食品など、日常の食卓でも使いつつ、余分に買った分はストックする。野菜なら、日持ちするじゃがいもや玉ねぎなどの根菜がおすすめだ。目安としては、政府が備蓄を推奨している「1人1日3食分×3日?1週間分」はストックしておこう。

とはいえ、店頭からモノが消える前に事態は沈静化するのか……。

「残念ながら長期化が懸念される」と、前出の古賀さんは推察する。

「トランプ大統領は早期終結を望んでいると見られますが、イスラエルは徹底攻撃の姿勢で、さらにイランも停戦に納得できる条件が必要です。

結局、三者すべてが“勝った”と言える形にならない限り終結はむずかしく、現時点で見通しは立っていません」

節約しつつ、ふだんから2~3個手元に置いておく備蓄で乗り切るしかなさそうだ。

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