「『警視庁捜査一課9係』(以下、9係)シリーズから、続編の『特捜9』シリーズ終了までの19年間、同じ役を演じ続けました。そんなこともあり、ボクには刑事のイメージが強いのかもしれません。
こう語るのは、津田寛治さん(60)。『9係』は特殊な現場だったと振り返る。
「監督は『ボクはせっかちだから』と、衣装合わせも短時間。撮影も30分前には現場入りするようにと言われました。実際に現場では『何やってんだ! 早く! じゃあ、本番いくで』と目まぐるしい」
そんなとき「ちょっと待て。まだ早い。もう1回テストをやるぞ」と間に入るのが、主演の渡瀬恒彦さんだった。
「しかも渡瀬さんと監督のやりとりが、かなり激しくて……。ボクも吹越さんもお地蔵さんのように固まってしまうし、羽田(美智子)さんは、2人のどなり声とストレスが原因なのか『あ、片方の耳が聞こえない……』って言い出したりしていました(笑)」
ただ、渡瀬さんは津田さんらにはやさしかったという。
「ボクと吹越さんは競い合うようにアイデアを出してアドリブを多用。あんまりやりすぎると、渡瀬さんから『津田、いまのはレッドカード』と言われましたが、『お前らの芝居を見ていると飽きねえよ』と励ましてもくださいました」
全員が活躍できるドラマだった。
「じつは第1話の放送を見たとき、渡瀬さんの出番が少なくてびっくりしたんです。でも、渡瀬さんは『これでいい。このドラマはみんなが主役なんだ』とおっしゃって、ボクらを引き立ててくれました」
同ドラマは、人気シリーズに成長。だが、2017年3月のことだった。
「現場に向かう途中、渡瀬さんの訃報が入りました。『渡瀬さんの負担を減らすために、少し本を直した』という話は聞いていました。それでも、亡くなる直前まで『9係』の台本を手にしていたそうです」
その晩は、主要キャストが集まり、誰もが“このままでは終われない”という思いを確かめ合った。
「だからこそイノッチ(井ノ原快彦)が主役を引き継いだ『特捜9』をもり立てようと、一致団結。もちろん、撮影現場では常に渡瀬さんの気配を感じ、仲間とも『絶対に見てるよね』と話していました」
『警視庁捜査一課9係』(テレビ朝日系、2006~2017年)
捜査一課に新設された「第9係」のメンバーが難事件に挑む刑事ドラマ。主演の係長・加納倫太郎を演じた渡瀬恒彦さんが亡くなった後も、浅輪直樹(井ノ原快彦)を主役とした『特捜9』に引き継がれ、2025年まで続く人気シリーズとなった。
【PROFILE】
つだ・かんじ
1965年生まれ、福井県出身。映画俳優を目指して上京、1993年の『ソナチネ』で映画デビュー。
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