今回は、意外なきっかけで仲直りの糸口を掴んだ女性のエピソードをご紹介しましょう。
些細なきっかけで、夫と喧嘩をしたまま2か月
西川亜弓さん(仮名・34歳)は、夫の雅彦さん(仮名・37歳/Webデザイナー)と喧嘩をして、仲直りできないまま2か月が経ちました。「原因は、私が昔あるライターさんと付き合っていたことが、共通の知り合いを通じてバレてしまったことです。
亜弓さんはそのことについて特に隠しているつもりはありませんでしたが、あえてそんな昔のことをわざわざ言う必要もないと思っていたそう。
「なのに『有名人と付き合っていたことが自慢なんだ? だから、今でも忘れられなくて、こんな風に本を買いそろえているわけ?』と言われて、そんなわけないだろうと腹が立ちました。でもまぁ雅彦の気が済むならと思って、仕方なく彼の本を全て捨てたんです」
それで機嫌を直してくれると思いきや、雅彦さんはそれ以来亜弓さんを避けるようになり、話しかけても最低限の返事しか返してくれなくなってしまいました。
「最初は私もムカついていたので勝手にすればという感じで、どうせいつもみたいにすぐ仲直りできるだろうと軽く考えていたんですが……そんな様子はまるでなくて。月日が経つにつれ亀裂が深くなっていくようで、どんどん不安になっていきましたね」
おじさんから渡された封筒の中身
そんなある日、亜弓さんがパート先のスーパーの従業員用の出口から帰ろうとすると、いきなり60代くらいのおじさんに無言で封筒を渡されました。「『これなんですか?』と聞いたんですが、無理矢理押し付けられて、おじさんはニヤニヤしながら去って行きました。なんか嫌だなと思いながらも中を見て見ると手紙が入っていました。『いつでも好きなものをご馳走するので電話してください』と携帯の電話番号書いてあって、正直気持ち悪いなと思ってしまいました」

「一緒に働いているパート仲間や主任にすぐ情報を共有して、また話しかけられた時はどうしたらいいかを相談しました。対策は立てたつもりですが、それ以来いつもそのおじさんに見られているような気がして怖くなってしまい……。しょっちゅう振り返ったり周りを確認しては、おじさんに似たシルエットが目に入る度にビクつくようになってしまったんです」
夫に報告したら、意外な反応に嬉しくなった
雅彦さんに話を聞いてもらおうと思ったものの、「今はとてもそんな雰囲気じゃないし、もしまた『今度は現役でモテてます自慢ですか?』なんて嫌味を言われたら辛いな」と思い、何度も言葉を飲み込んだ亜弓さん。ですが……。「心細くてどうしようもなくなり、勇気を出して雅彦に話しかけて、例の手紙を見せながら事情を説明したんですよ」

「こんな時ですが、『え、私のことを心配してくれてるの?』と嬉しくなってしまいました。
私が『もしあのおじさんがストーカー化したりしたらやめるしかないけど、できることなら今のパート先は気に入っているし仲の良い仕事仲間もいるのでやめたくはない』と素直な気持ちを伝えると『分かった。じゃあもう少し様子を見てみよう』と言ってくれたのですが……。
久しぶりの会話が照れ臭かったのか、その後は寝るまでスマホのゲームばかりして、私の方を見ないようにしているみたいでした」
おじさんから守ってもらいながら、やっと仲直り
そして翌日、パート終わりに亜弓さんが従業員用の出口から帰ろうとすると、今度は雅彦さんが待ちかまえていたそう。「なんと私のことを迎えに来てくれたんですよ。そんなことは初めてで、えー!って感じでしたね」
しかも雅彦さんは亜弓さんの手を握り「そのジジイにこうやって見せつけて、俺たちの間に割り込む隙なんてないって分からせてやろう」と言ってくれました。

そして「亜弓がよくわからないジジイに変な目で見られると思ったら、機嫌を悪くしている場合じゃないとハッとしたし、実はずっと謝りたかったけどタイミングが掴めなくなっちゃって」とやっと笑顔を見せてくれたそう。
「それ以来、雅彦が頻繁に迎えに来てくれるようになり、手を繋いで一緒に帰るのが楽しみになったんですよ」
その後、他のパートの女性にも待ち伏せ行為
そしてあの手紙を渡してきたおじさんは、それ以来亜弓さんの前には姿を現しませんでした。ですがその後他のパートの女性にも同じような待ち伏せ行為をし、従業員をざわつかせました。「私以外にあと2人にやっていたので『別に誰でもよかったんだ』と思えて内心ちょっとホッとした気持ちもありました。でもはっきり言って迷惑だし、実際に私も怖い思いをしたので、もうやめてほしいですね」
「でも雅彦との仲直りのきっかけになってくれた件に関してはちょっとだけ感謝かな? と思います」と苦笑いする亜弓さんでした。
<文/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。