あなたには、忘れたいのに忘れられない「許せない言葉」はありますか? 今回は結婚寸前の恋人からそんな言葉を投げかけられてしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。

高熱で苦しむ私に「ビーフシチュー」を作った彼。「食べられない...の画像はこちら >>

結婚目前、順調だったはずの2人

秋元美佐子さん(仮名・32歳)が、恋人の洋介さん(仮名・33歳)とお付き合いを始めて3年経ったころのお話です。

「1年前から私が洋介の部屋に引っ越して、同棲を始めていました。
もちろん結婚の話も出ていて、お互いの両親に紹介済みでした」

洋介さんは外食やテイクアウトがあまり好きではないため、美佐子さんが毎日料理を作っていました。

「一緒に食べられないときも多いので、常に何かしらの作り置きを用意して、なるべくヘルシーなメニューを心がけていたんです」

美佐子さんは自分の作った料理が洋介さんの血肉となり、元気に過ごせていると思うと幸せを感じたそう。

「ですがそんなある日、私が体調を崩してしまったんですよ」

体調不良の私に、彼が作った“まさかの料理”

風邪を引いてしまい、高熱で悪寒がする美佐子さんが震えながら寝込んでいると、洋介さんが珍しく料理を始めました。そして完成したのは、ビーフシチュー。「これ食べたらスタミナつくし、すぐに良くなるよ」と出してくれたのですが……。

高熱で苦しむ私に「ビーフシチュー」を作った彼。「食べられない」と言うと…“信じられない暴言”が返ってきた
許せない言葉
「洋介の料理なんて付き合いたての頃に何度か食べて以来でした。かなり久しぶりだったし、私が元気になるようにと作ってくれたことは本当にありがたい。ですが……とてもじゃないけど食欲がなく、お粥や雑炊なら食べられそうでしたが、ビーフシチューなんて重たいものはとても胃が受け付けませんでしたね」

そんな美佐子さんが「ごめんなさい、今はちょっと食べられそうにないから後でいただくね」とやんわり断ると、なんと洋介さんが不機嫌になってしまったそう。

「『メニュー考えて買い物して料理して、どれだけ苦労したか分かる? もういいよ。食べないなら全部捨てるから』といじけだしたので、仕方がないと思い、無理やりなんとか一皿完食したんですよ」

限界を超えた瞬間。彼の“許せないひと言”

弱った体にさらに負担がかかってしまった美佐子さんが、ごちそうさまと伝えてフラつきながらまたベッドに向かおうとすると「なんで『忙しい中作ってくれてありがとう! すごく美味しかった』とか言えないの? 感謝の気持ちがないってこと?」とさらにグチグチ言われてしまい……。

高熱で苦しむ私に「ビーフシチュー」を作った彼。「食べられない」と言うと…“信じられない暴言”が返ってきた
喧嘩をしている男女カップル
「普段あまり怒らない私も、さすがにイラッとしましたね。だって洋介は普段、その日の気分で、私の料理を食べなかったり残したり平気でしていたんですよ?

しかも体調の悪い私のために作ってくれたんじゃなくて、自分がチヤホヤ褒めてほしいから作っただけだったの? という感じで」

美佐子さんが「だったら私にも毎日そうやって感謝してくれてもいいんじゃない?」と言い返すと「俺の料理はたまにしか食べられないからレアだけど、美佐子の料理は当たり前に毎日食べられるしそんな価値ある?」と言われてしまったそう。


「ふざけるなと思いましたね。『私だって体調が悪いときや気分が乗らないときがあって、それでも毎日自分を奮い立たせて一生懸命料理を作っていたのに! 久々にビーフシチューを一回作ったぐらいで何を偉そうにしているんだよ!』とついにこっちがブチ切れてしまい、大喧嘩になったんです」

積み重なった不満が爆発し、家を出た

激しい言い合いの末、「感謝の気持ちがないのはそっちだろハゲ! 二度とその顔を見せるな!」と啖呵(たんか)を切り、美佐子さんは家を飛び出しました。

「料理をすること自体は好きだし、もちろん私も食べているのでいいんですが……息抜きがなかなかできなくて。鬱憤(うっぷん)が溜まりに溜まったところでの『俺の料理はレアだけど、お前の料理は価値がない』発言で、私は爆発しちゃったんですよね。

自分の口からあまりにスムーズに言葉が出てきたことで、『あぁ私は、毎日の料理がずっと負担に感じていたし、彼の感謝の気持ちが伝わってこないことにイライラしていたんだな』とやっと気づけました。

あと、ずっと洋介の頭頂部が薄くなってきたことを『触れてはいけない』と思い黙っていましたが……ついぶちまけちゃいましたね」

実は当時、たまたま出張中の女友達に、ペットの熱帯魚に餌をあげてほしいと頼まれて部屋の鍵を預かっていた美佐子さん。彼女の了承を得て、しばらくそこに寝泊まりさせてもらうことになったそう。

復縁の泣きつき。でも彼女の答えはひとつ

その後、洋介さんから何度も「復縁したい」と泣きつかれましたが、美佐子さんはとてもそんな気持ちにはなれませんでした。

「寝込んでいる私にあんな仕打ちをしておいて、よく復縁なんて迫れるよなと呆れました。図々しすぎますよ」

そして今では無事に引っ越しを済ませ、一人暮らしを満喫しているそう。

「料理疲れの反動で、毎日のようにデリバリーやテイクアウトを利用しまくっています(笑)。今回のことで両親に心配をかけて悪いことをしてしまいましたが、しばらくはこのままひとりで気楽に過ごしたいですね」と微笑む美佐子さんなのでした。


<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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