そんな華子さん自身も、息子を信じすぎて大反省したひとりです。
中学生のしっかり者の息子にスマホデビューを
華子さんは、息子Tくんが保育園の年長に上がる頃に夫と離婚。その後は、生活費やTくんの将来の学費を稼ぐため、早朝から夜遅くまで働く毎日を送っていました。小学生のうちは学童保育に預けていましたが、中学生になれば頼れるところは塾ぐらい。
「ただ、あまり高い塾費は支払えないので、Tは週に何日かは誰もいないマンションに帰ってくる“カギっ子”になりました。不安はありましたが、私は親を亡くしていますし、兄弟もいない。Tを信じるという選択肢しかなかったのです」
ただ華子さんは、Tくんが幼かった頃からひとりの人間として尊重し、何でも相談するなど、よい関係を築いてきたという自負がありました。そしてTくんも華子さんの期待に応え、真面目に宿題や勉強をしていたといいます。
「そんな息子から、『スマホを持っていないのは自分だけ』とせがまれ続け、中学2年生になった頃に『課金などはしない』という約束でスマホを購入したのです。息子が使うものでも親の私が付き添うなどしなくてはいけないので、私名義で契約しました」
減った給料を補うためにWワークを開始

「スマホ購入後も、最初のうちは宿題や勉強、スマホを使った時間などをチェックしていました。でも、仕事の業務内容が変わって疲れがたまるようになった頃から、Tが口頭で報告したことを全面的に信用するようになっていったのです」
そして、宿題や予習・復習をどこまでやったのか、チェックをしなくなってしまいます。
このとき華子さんは、業務内容が変わって少なくなった給料分を補おうと、休日には友人の飲食店を手伝っていました。そのため、疲れはピークに達していたのです。
「それでもTには、ひもじい思いはさせたくないと無理をしていました。いま思うと、忙しさや“信じる”という言葉を隠れ蓑にして、まだまだチェックや導きが必要なTときちんと向き合えていなかったと思います。
でも当時は、そんなことには気づきもしませんでした」
いつもより3万円も高い携帯料金の請求が

しかもそれは、Tくんが使っているスマホのほうでした。
「もちろん帰ってすぐに、Tを問い詰めました。するとTは一瞬驚いた様子で私を見ると、目を潤ませ、平謝り。ウソか本当か、本人は、それほどスマホゲームに課金していた自覚はなかったようです。
金額が3万円と支払える範囲だったからまだよかったけれど、これは一大事だと強く説教しました」
家計の現実をしっかりと教えると、よりしっかり者に成長
それだけでなく、普段は1円でも安い食材をみつけて購入していることや、1か月にかかる生活費について説明。通帳を見せ、「これだけ働いて節約しても、ほとんどお金が残らないのが現実」だということについてもしっかりと伝えたのです。「いくらしっかりしていて信頼できる息子とはいえ、中学生はまだまだ子ども。その件があって以降、キャリア決済ができないように手続きしました。
そして私のスマホのパスワードも変更。
その後、Tくんが課金することはなくなり、高校生になるとすぐに家計を支えるためにアルバイトを開始。
いまは華子さんを助けてくれる存在に成長したといいますが、これからもお互いにパスワードなどは共有しないと決めていると話してくれました。
<文/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意。