「食べ物をおいしく食べられていて、そして吐けていればそれでOK!!」

この言葉に救いを感じたのは私だけでしょうか。

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『これはゆがんだ食レポです』(双葉社)は実体験に基づくコミックエッセイ。
ちなみに冒頭の言葉ですが、摂食障害専門のカウンセラーさんも似たようなことを言っていたそうです。

摂食障害はすぐそこにある

食べ物を極限まで胃に詰め込んで吐く。手持ちの食べ物がなくなったら買いに走り、食べ、吐く。この無限ループが摂食障害。実は私にも経験があり、私の場合は吐く行為ができずチューイング(噛み吐き行為)でしたが、一種の摂食障害なのは間違いありません。

摂食障害の原因は複雑です。ただ、本書の表紙で描かれているように、涙と鼻水を垂れ流すほどつらいのは確かで、つらさを客観視できているのが、またつらいのです。

おいしい、幸せ、満腹、という感覚がもたらす、身も心もめいっぱい満たされる、というカタルシス。地獄があれば天国もある、だったら天国目線で世界を見たい。

禁断の食レポ、開幕です。

<※注意:本作は摂食障害の著者の、食に関するエッセイ漫画です。本記事への出張掲載回にはありませんが、作品中には、過食嘔吐の描写がある回がありますので、トリガーになりそうな方はご注意ください>

「自分には物を食べる資格が無いのに食べている罪悪感」摂食障害に苦しむ女性が気付いた幸せの味わい方
食レポ1


「自分には物を食べる資格が無いのに食べている罪悪感」摂食障害に苦しむ女性が気付いた幸せの味わい方
食レポ2


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食レポ32


愛しの炭水化物さま

糖質制限ダイエットが横行しつつも、続かないわけ。太古の昔から、糖質=炭水化物が人類のエネルギー源だったから。

むやみに炭水化物を抜くと私の場合は人間らしさが保てなくなります。
行きつく先はドカ食い。人間、生きていくためにはエネルギー、すなわち炭水化物が必要なのです。

白米やパスタをひとりで吸うように食べる。誰もが抱く夢を本書が叶えてくれました。「不本意なのに食べ終えるのが異様に難しい食べ物」として。

永田さんにとって「食べ始めると食べ終えるのが難しい食べ物」は「実家のカレー」と「実家のスパゲティ」。

カレー×白米のコンビは、味変しても裏切らないおいしさがあります。熱くても冷めても、具材が形をとどめていても正体不明でルーと一体化しても、おいしさの計算式が複雑になるだけでおいしいの枠からははずれません。

炭水化物×脂質は、人類をダメにする、いいえ、人類を最高潮の快感へと導く最強タッグなのです。

有限の「実家のカレー」が誘発するのは、無限の実家以外のカレー。「実家のカレー」のジェネリック品を求め、コンビニで市販のカレーやカレーまんやカレーパンをゲット。「カレー~2nd season~」のスタートです。


人間には理性という装置が備わっているので、ダメな快感を排除すべく、嘔吐スイッチがオンされます。食材や時間がもったいない、とあなたは思うでしょうか。思うかもしれませんが、本書に描かれているのは最高潮のおいしさと極限までの幸福感なのです。

昔ながらの、食べ物を無駄に…、とか、食べ物に敬意を…、などの格言がぶっとんでしまうほど、自分の欲に忠実なのではないでしょうか。ある意味とても潔く、爽快なのです。

増えてのびて頼もしいスパゲティ

カップラーメン然(しか)り、うどん然り、麺というのは水分を吸収してかさ増しします。コシや弾力がなくなるからNGとする人もいれば、増量ウエルカムな人もいます。永田さんはもちろん後者。

しかもヘタッと怠惰になったスパゲティって、郷愁というスパイスも加わるのですよ。給食やお弁当で食べたスパゲティを思い出しませんか。

できたてスパゲティ→のびてきたスパゲティ→冷蔵保存して容器の形にひとかたまりのスパゲティ、この三段活用が永田さんのデフォルト。

日本人の私達には、煮込みうどんに通じるクタクタで膨(ふく)らんだ麺が好きという趣向が、DNAに刻まれているのかもしれません。

大切なのはキラキラした日常

「自分には物を食べる資格が無いのに食べている罪悪感」

当時、永田さんの頭を占めていたのは思考です。
満腹天国は一瞬のカタルシス、泣きながら食べ物=罪悪感を詰め込み、吐いて水に流そうとした一連の作業は、長く終わりなき地獄だったかもしれません。

しかしある日気づくのです。「食べ物がおいしい事」=幸せだということに。「おいしい」の数だけ「しあわせ」にカウントしていい。

そうです、「おいしい」と感じる気持ちがあるなら、しあわせを味わってもいいのです。たとえ吐いてしまうとしても、自分をしあわせな人として扱ってもいい。

摂食障害に苦しむ方も、そうでない方も。なんらか悩みがある方が、少しでも楽になってキラキラした日常を見つけられるように。

そんな風に、勇気づけられる一冊です。

<文/森美樹>

【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。
東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx
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